第1395話:リリーを連れて船へ
「美少女精霊使いユーラシア参上!」
「御主人!」
「よーし、ヴィルいい子!」
飛びついてきたヴィルをぎゅっとしてやる。
魔物退治訓練生三人を黒服に預け、あたしはリリーとラグランド行きの船に転移してきた。
驚くリキニウスちゃんとルーネ。
「ユーラシアさんと、リリー叔母様?」
「サプライズゲストだよ。リリーがドーラで冒険者やってるって知ってた?」
「「知りませんでした」」
「知らないなら手を叩こう」
「「パンパン」」
「知らないなら態度で示そうよ。ほら皆でぎゅっとしよう」
「「「「ぎゅー」」」」
リキニウスちゃんとルーネとあたしとヴィルにぎゅーされてうろたえるリリー。
「な、何なのだこれは一体?」
「ただの即興エンターテインメントイベントだよ。でも思ったよりリキニウスちゃんとルーネのノリが良くて、あたしもビックリ」
良質のエンタメでした。
ってのはともかく。
「リキニウスちゃんとルーネは冒険者話に興味があるみたいなんだ。ルーネなんか冒険者になりたい言ってたぞ?」
「なればいいではないか。ドーラに来るがよい」
「おいこら」
「行きます!」
「おいこら」
皇女が簡単に冒険者になれるわけないだろ。
リリーじゃあるまいし。
「しかし、ルーネは冒険者に向いてるであろ?」
「あ、リリーも気付いた?」
ルーネは身体能力に優れているのだ。
賢くて機転も利きそう。
その上風魔法使いだしな。
冒険者の素質って意味ではメッチャ有望。
「経験を積めてレベルが上がってお金が儲かるのだぞ? 悪いことなどないではないか」
「リリーはあんまり帝国の皇女らしくないこと言うなあ。あたしもルーネは冒険者に向いてると思うけど、お父ちゃん閣下が許さないでしょ」
「ドミティウス兄上が? 危険だと思われているからか? 塔のダンジョンで死亡者はまだ一人も出ていないという話だぞ?」
「まー初心者向けではあるよねえ」
死亡者が一人も出ていないから危険ではないとゆー、リリーの論には言い過ぎじゃないかって気はするけれども。
リキニウスちゃんとルーネの目がキラキラしとるわ。
「冒険者には様々な依頼があるが、やはり魔物退治とレベル上げは欠かせぬのだ」
「レベル上げるとやれること増えるから面白いよ。となると魔物は倒さないと」
「ドロップアイテムも楽しみだしな」
「おいしい魔物もいるしね」
「今日の昼食は、ユーラシアが持ってきてくれたワイバーンの卵だったのだ。絶品だぞ。我も大好物なのだ!」
リキニウスちゃんとルーネの目のキラキラが増してるんだが。
もっとおいしいものが食べたかったかな?
明日はコブタ肉持ってこよ。
「ルーネロッテとリキニウスに冒険者話でも聞かせてやってくれ」
「あたしが? リリーがするかなと思って連れてきたんだけど」
「面白い冒険話と言えばユーラシアであろ?」
「すっかり面白話コレクターになってる気がするなあ。あたしんとこ変なクエストが多いんだよね。冒険者の参考にはならないんじゃないかと思うよ?」
「普通のクエスト話など誰にでもできるではないか。ぬしにしかできない話をしてくれ」
「そお?」
じゃあ僭越ながら。
先日ツェーザル中将ん家で披露したやつだけど。
「……二日前、肥溜めに転落しましてと聞いて。ダイレクトに物理的な穢れだと思わなかったわ。深刻に考えてた分、損しちゃった。あたしの純情を返せ」
「「「あははははははは!」」」
「……五暈の彩光じゃ、レイノスは許された! って言ったら、ぜいれいざまあ! って大泣きしちゃって。今その人ドーラで大使のプリンスルキウス付きの役人やってるけど、その場面思い出すたび笑えてきちゃう」
「「「あははははははは!」」」
「……おっぱいは揉むと大きくなるんだぜ言いやがるんで、魔境に捨てて来ようとしたんだ。そしたら皆して謝るから、じゃあレッドドラゴンのエサになりたいかアイスドラゴンのエサになりたいか、選ばせてあげるって妥協したつもりだったの。結局勘弁せざるを得なくなったけど」
「「「あははははははは!」」」
「……落とし穴に仕込んであるの、ウシの糞かな? ウマの糞かな? って聞いたら、ウシの糞とウマの糞とヤギの糞のミックスだって。ほう、なかなかやるね。百発百中の落とし穴職人だけのことはある」
「「「あははははははは!」」」
「……あたしがどんどん首落とすから、皆は牙を回収して。大儲けだーってね。どん引きしてる暇があったら働け。これヤマタノオロチの時も同じことやろうとしたけど失敗しちゃって。神話級の魔物はなかなかだった」
「「「あははははははは!」」」
「……最後に阿鼻叫喚を演出した精霊使いにも、ペナルティを食らわせろーってことになって魔法の葉青汁を飲んださ。ぎゃーまずーい! その後急いでお肉を食べに行ったね」
「「「あははははははは!」」」
「……メインモチーフがドクロの呪術師ばっかりの村でさ。そんな天国みたいなところが存在するんだななんて言うから、地獄みたいの間違いだろって。世の中感覚の理解できない人はいるね」
「「「あははははははは!」」」
気持ちいくらいのバカウケだ。
あたしにこの手の話は事欠かない。
あれ、リキニウスちゃんとヴィルがくっついてるがな。
メッチャ可愛いな。
これが天使と悪魔か。
ルーネが泣いてるんだか笑ってるんだかわからんくしゃくしゃの顔で聞いてくる。
「ゆ、ユーラシアさんはいつもこんなに楽しい体験をされているんですか?」
「何故かあたしんとこにはおかしなクエストが回されるんだよね」
「笑いの神に愛されておるのだ」
「やっぱなー。笑いの神に求婚されたらどうしよう?」
「小兄様が悲しむぞ。そんな話は破棄するのだ」
驚くルーネ。
「えっ? ええと、ウルピウス叔父様とユーラシアさんが結婚されるのですか?」
「兄上がユーラシアにぞっこんなのだ」
「つってもあたしはドーラの山ザルだし」
「お似合いだと思います!」
今年に入ってから縁談が多いんだよな。
年頃の魅力的で蠱惑的な少女であれば当然だが。
「平民のあたしよりリリーやルーネの方が先だろーが。皇族だから話はいくらでもあるんでしょ? 早よしないとリキニウスちゃんに先越されるぞ?」
リリーんとこにラブ話がたくさん来てたことは知ってるが、ルーネはどうなんだろうな?




