第1394話:ゼムリヤから訓練候補生三人を連れてくる
「美少女精霊使いユーラシア参上!」
「御主人!」
「よーし、ヴィルいい子!」
飛びついてきたヴィルをぎゅっとしてやる。
午前中に軽く魔境拝金を……ハイキングを楽しんでから、リリー黒服も連れてゼムリヤにやって来たのだ。
あ、メルヒオール辺境侯爵とリリーがぎゅーしてら。
「じゃーん! お土産にワイバーンの卵を持ってきました!」
「おお、食べようではないか! 爺様、これは大層美味なのだ!」
有無を言わさず昼食になだれ込む。
いやもうお腹減ったわ。
◇
「何じゃこれ、美味い」
予想もつかない卵料理が出てきた。
ツルツルでぷるんとした、寒天スイーツにちょっと似た食感の、半固まりのスープみたいなものだ。
「干し魚のスープと溶き卵を合わせ、蒸して固めたものだ」
「へー。干し魚のスープってあっさりしてて美味いんだな。骨のスープとは全然違った良さがあるわ。覚えとこ」
「おかわりだ! おかわりを所望する!」
「ハハハ、大きな卵だからな。まだまだあるぞ」
リリーもうちの子達もガツガツ食べてんじゃん。
あたしもおかわりもらお。
卵に混ぜ物して、比較的低温で柔らかめに固めるのはアイデアだな。
普通の鶏卵でもおいしいだろうけど、ワイバーンの卵のよさが表に出やすい料理だわ。
干し魚のスープの代わりに蜜水や果汁と混ぜたら、スイーツにも応用効きそう。
「この料理は以前にも爺様に食べさせてもらったことがあるのだ」
「ゼムリヤの郷土料理なの?」
「いや、当家の料理人がどこかで習い覚えてきたものだ」
「面白いものをありがとう。あたしも研究してみよ」
蒸し料理は今まであんまり視野に入ってなかったな。
こんなにおいしいものを知ってしまうと、研究せねばならんという気にはなる。
あ、思い出した。
でっかい蒸し器がサフランのところにあったな。
しょっちゅう使ってるものでもなさそうだから、働かせてやりたいもんだ。
サフランも忙しいだろうけど。
けどどー考えてもうちのパーティーは、役に立ちそうなものを発掘したり紹介したりの方が向いている。
だってあたしほど機動力があって、あちこち行ける人なんていないもん。
リリーが言う。
「ワイバーンはどれほどで倒せるのかの?」
「リリーんとこのパーティーは二人だけど、火力高いからレベル四五もあれば比較的楽に倒せると思うよ。あ、でも射程の長いスキルは必須だぞ」
「ふむ、もうしばらくだの。しかし射程の長いスキルか」
「デス爺が連続衝系のバトルスキルのスクロールを売ってるよ。ワイバーン相手なら『氷の連続衝』か『風の連続衝』がいいと思う」
連続衝系のスキルは物理アタッカーなら武器を選ばないところがいい。
若干消費マジックポイントは大きいけれども。
「連続衝系は基本ですね」
「ユーラシアのパーティーも連続衝系のスキルを使っておるのか?」
「アトムが『風の連続衝』を使えるよ。でもうちはあたしの『ハヤブサ斬り』系スキルと一掃スキル『雑魚は往ね』がメイン火力だから、活躍の場がないな」
『ハヤブサ斬り』系は射程の長いスキルじゃないけど、パワーカード『スナイプ』の長射程化が乗るから。
メルヒオールさんが言う。
「『雑魚は往ね』は超レアスキルなのだろう?」
「じっちゃんは『雑魚は往ね』を知ってたか。あたし以外の使える人に会ったことないな。レベルが上がるとドラゴンだろうが人形系魔物だろうが、一発で倒せるから便利だよ」
運のパラメーターが高い『発気術』の固有能力持ちが覚えることがある、とは聞いた。
実際はどうか知らんけど。
「ドーラはスキルを買えるというのがいいな」
「うむ、爺様も欲しいスキルがあれば、お土産で買ってくるぞ」
「ハハハ。地方領主がスキルを買うというのも問題があるのだ」
なるほど。
帝国はスキル習得に届出義務があるし、物騒なスキルだったりすると疑いの目で見られちゃうからな。
不自由なことだ。
いや、ドーラがアナーキーなのか。
「ごちそーさま。大変おいしゅうございました」
「では訓練候補生三人を見てもらおうか。これへ」
あたしやリリーとそう年齢の変わらない男の子三人が現れた。
リリーがいるからか、ガチガチに緊張してるやん。
「「「よ、よろしくおれがいします!」」」
「三人揃って同じところで噛むのは芸なん?」
「よろしくの。ふむ、兵士っぽくはないの」
おそらく全員レベル一。
新兵かな?
しかし皆固有能力持ちだ。
「民から未経験者歓迎で希望者を募ってな。そこから選んだ」
「あ、素人さんなんだ。全員固有能力持ちなのは偶然じゃないよね?」
「うむ。鑑定士に選抜させた。それぞれ『サーチャー』『発気術』『白魔法』を持つ」
『サーチャー』で危険度を測り、『発気術』がメイン火力、『白魔法』が回復治癒担当か。
バランス良さそう。
メルヒオールさんも考えてるなあ。
「一〇万ゴールドある。一ヶ月の生活費雑費装備代に足りるか?」
「十分なのだ!」
「装備はパワーカードで頼む」
「「「えっ?」」」
意外だな?
メルヒオールさんの衛兵を兼ねるなら、示威的印象のこともあって通常装備の方がいいかと思ったけど。
メルヒオールさんが言う。
「応用力にメリットがあるからな」
「なるほど」
組み合わせによる応用範囲の広さは、パワーカードの大きな強みだ。
また『遊歩』を使えれば、かなりの危険を回避できる。
とゆーかメルヒオールさんがパワーカードに興味があるから、身近な衛兵に装備させときたいって意図があるのかもな。
リリーが言う。
「我はパワーカードをよく知らんのだが。エルやレイカに聞いた方がいいか?」
「冒険者の立ち回りなんて、装備が何であっても基本一緒だって。エルやレイカはゼムリヤのフィールドや魔物の事情を知らないから、黒服さんの言うこと聞いた方がいいよ」
エルやレイカはダンジョンの戦い方が染みついてるだろうし、あたしも自分の戦い方がおかしいくらいのことは知ってるしな?
あくまで訓練なのだ。
変なクセついちゃうくらいなら、正統派の黒服の意見に従うべし。
「では、者ども行くぞ!」
「「「はい!」」」
「我の修行は厳しいぞ!」
「多分甘々だぞ?」
「そういうのはいらぬ! たまには格好よく締めたいのだ!」
アハハと笑い、雰囲気が柔らかくなる。
転移の玉と新しい転移の玉を起動し、一旦ホームへ。




