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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1393話:朝の報・連・相

 ――――――――――二二八日目。


『御主人、パラキアスだぬ!』

『ユーラシアだな?』

「そう、美麗にして可憐なあたし。朝からごめんね」


 ヴィルに行政府に行ってもらい、昨日の報告だ。

 パラキアスさんって、出かける用がない時は行政府で寝泊まりしてるのかな?

 今まで考えたことなかったけど。


「帝国からラグランドへの使者リキニウス殿下を乗せた船は、予定通り昨日の午前中にタムポートを出航したよ」

『要人はリキニウス殿下のみか?』

「もう一人主席執政官閣下の娘ルーネロッテ皇女が同行してる」

『ルーネロッテ皇女殿下? ああ、人質か』


 パラキアスさんはすぐ把握するなあ。

 思考方向が悪いやつ寄りだから。


「閣下は自分で言っておきながら、ルーネを同行させるの明らかに乗り気じゃなかったな。けどリキニウスちゃんとプリンスルキウスの安全保障を担保するつもりみたい。ルーネ自身はラグランド行き大喜び」

『ハハッ、知らんぷりして冒険者熱を煽ったというのは、ここに関係するのか』

「まあ」


 ルーネは結構な箱入り娘のようだ。

 閣下の溺愛ぶりが見て取れる。

 誰も何も言わないけど、ルーネのラグランド行きはキャンセルされる可能性が高かったんじゃないかな?

 ところが『風魔法』の固有能力発現で気が高ぶり、絶対について行くということになったんだろう。

 閣下も娘のおねだりに苦しめ。


『特にトラブルはないということだな?』

「昨日あたしが使者の船にお邪魔した段階ではなかったね。あ、父ちゃんが使者の船を追いかけてるよ」

『オリオンと連絡取れたんだな?』

「取れた。使者の船の船長さんも了承してる」

『ふむ、そちらも揉める要素なし、か』

「ラグランド到着までは問題なさそう」


 ラグランド到着後はあたしの仕事じゃないしな。

 交渉はプリンスとホルガーさん、ラグランド首脳にお任せ。


『面白いことはなかったか?』

「えっ?」


 イシュトバーンさんみたいな言い方だな。

 パラキアスさんもエンターテインメントに飢えているんだろうか?


「特にはなかったな……うっかり公爵がリキニウスちゃんと別れたくなくて泣き喚いたくらい。予想通りタムポートで植民地大臣に食い下がってんの。船に乗せろって」

『どうやって言い聞かせた?』

「えーと意訳すると、あんたはトラブルメーカーだからいるだけでリキニウスちゃんに危険が及ぶ、諦めろって」

『ハハッ、ひどいな』

「まずかったかなあ?」

『パーフェクトだ。ドーラ総督時代は、公爵が聞きわけのない人だというイメージはなかったが』


 多分帝国に帰ってリキニウスちゃんラブが爆発しちゃったんだろうな。

 しかしパラキアスさんにも、グレゴールうっかり公爵が悩みの種という認識はあったらしい。

 交渉を速やかに終え、プリンスに功を立てさせなきゃいけない場面だ。

 うっかり公爵は不要。


『連絡はそれだけか。明後日ラグランド到着予定なのは変わらないな?』

「うん、変わらない。プリンスルキウスにも報告よろしく」

『了解だ』

「パラキアスさん、じゃーねー。ヴィル、ありがとう。今度ラグランドのホルガー総督のとこ行ってくれる?」

『わかったぬ!』


 ヴィルの有能には感謝だ。

 可愛くていい子だから、一度紹介してやれば警戒されないしな。

 夏用の帽子も作ってやりたい。


『御主人、ホルガーだぬ!』

『ユーラシア君ですね?』

「そうそう、重要人物にして容姿端麗なあたし。ホルガーさん、おっはよー」

『使者はタムポートを出ましたか?』

「予定通り、昨日の午前中に出航したよ。正使としてリキニウスちゃん。随員で主席執政官閣下の娘のルーネロッテがついて来るよ」

『ルーネロッテ様が?』

「ルーネも行くってことは、実は使者決定の時に既に言われてたの。でも直前にやっぱなしってことになる可能性も高いなーと思って言わなかったんだ。ごめんね」

『ハハハ。いや、わかります』


 ホルガーさんも次期皇帝をめぐるきな臭い事情の結果、ルーネが同行することに気付いたんだろう。

 苦笑気味の声だ。


『ルーネロッテ様は不承不承といった感じですか?』

「いやいや、大喜びなんだよ。見聞を広めたいって。どっちかというと、お父ちゃん閣下の方がラグランドなんかに娘を行かせたくない雰囲気ありありだった」

『ドミティウス様がルーネロッテ様を大事にすること、掌中の珠のごとしですからな』

「やっぱなー」

『政府高官の間では有名ですよ。正直ルーネロッテ様がおいでになるのは、リキニウス様が特使であること以上に意外です』


 遊び甲斐があるな。


『その他の随員は?』

「侍女が二名と文武官が合わせて五名だよ」

『随分と少ないですな?』

「ラグランド側を刺激したくないっていう建前なんだろうね。けど使者一行の規模を大きくすると、グレゴールうっかり公爵がついて来るのを止められなかったからだと思う」

『なるほど、やりやすい……ユーラシア君が相当信頼されてるんですな』


 そーなんかな?

 あたしも仕事だから精一杯やるけれども。


「現在の蜂起の情勢はどうかな?」

『変わりませんな。都のウォルビスは静かなものです。ただ魔法使いが二名蜂起側に与したと、魔法連の頭ヒャクダラ殿から報告がありました』

「ヒャクダラがわざわざ言うくらいなら、結構な魔法使いなんだろうな。まー二人くらいはしょうがないか。あらかじめ知ることができたなら警備のしようもあるよ。どんな魔法使いか聞けた?」

『二人とも風魔法使いで飛行魔法が使えるそうです。レベルは二五~三〇の間とのこと』


 そのレベルで『フライ』が使えるなら、発現度合いの強い風魔法使いだ。

 艦隊が派遣されてきた時の焼き討ち要員か。

 一番やる気になってただろうから、蜂起の規模が小さくなり、活躍の場を奪われて無念なんだろう。


「空中からの攻撃や落下物に注意ね。飛行魔法って言ってもレベル三〇弱じゃ俊敏には動けないよ。ビックリすることない。延焼が怖いから焼き討ちはないと思いたいけど、総督府が火事になった時の避難路は確認しといてね」

『わかりました』


 ヒャクダラに会って話を聞きたいが?

 いや、難しいか。

 現場を宥めるのに忙しいかもしれない。


「じゃ、ホルガーさんまたね。ヴィル、ありがとう。こっち戻ってきてくれる?」

『はいだぬ!』


 さーて、魔境行くかっ!

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