第1382話:もっとぎゅーしたいでつ
フイィィーンシュパパパッ。
「やあ、いらっしゃい。チャーミングなユーラシアさん」
「こんにちはー、ポロックさん」
各所に報告のあと、ギルドにやって来た。
報告はメッチャ大事。
大事なことを疎かにしないあたし偉い。
「今日は皆さんでおいでですか。このくらいの時間だと、夕食かな?」
「そーなんだけど、ポロックさんに紹介したい子がいるんだ」
「ハハッ、面白い人かな?」
「面白いっちゃ面白いな」
人ではないけど。
あ、来た。
「御主人! 連れてきたぬ!」
「よーし、ヴィルいい子!」
飛びついてきたヴィルをぎゅっとしてやる。
ハグは愛情と信頼の証。
「で、こっちがガルちゃん」
「ガルムと申します。お見知りおきを」
「あ、ああ。ドリフターズギルド総合受付のポロックだ。よろしくね」
また悪魔かいって顔してるけど。
主席執政官閣下付きのガルちゃんは、あたしの面白半分で連れてきたのではない。
ギルドでチヤホヤされて御飯で満足させとくと、悪いこと考えなくなるんじゃないかって可能性があるのだ。
主席執政官の第二皇子が皇帝になるケースに備えて、試してみる価値が十分にあるから。
「ガルちゃんは悪魔にしては珍しく食べる子なんだ。でも悪魔に食べさせてくれる食堂なんてないじゃん? ギルドを紹介してやろうかと思って」
「ハハッ、まあギルドにはヴィルちゃんもしょっちゅう顔を出してるからね。高位魔族だからって排斥するわけではない」
「ポロックさんに約束しときなさい」
「はい。人間に大きな迷惑をかけないことを、悪魔ガルムの名と存在にかけて誓います」
「これは御丁寧に。いいでしょう、ギルドへようこそ!」
「やたっ! ガルちゃんよかったねえ」
「ありがとう存じます!」
ポロックさんに認めてもらったぞ。
第一関門突破だ。
ギルドの中へ。
「こんにちはー。あれ? おっちゃんどしたの?」
依頼受付所に杖職人ナバルのおっちゃんがいるのだ。
相変わらずの片眼鏡。
そして相変わらずおっぱいさんに絡みにいくなあ。
おっぱいさんに迷惑かけるんじゃないよ?
「この前の宮廷魔道士の杖が完成したのだ」
マーク青年の杖か。
届けなくちゃならんな。
魔道研究所も行ったことないから楽しみだ。
「ところでそちらの可愛らしい子はどなたです?」
「知り合いの高位魔族ガルムだよ。これから時々ギルドに来るからよろしくね」
ガルちゃん、おっぱいさんのおっぱいに視線固定されとるやん。
「す、すごいのです!」
「うむ、まさしく!」
何で片眼鏡が得意げなのか?
ヴィルもおっぱいさんのことを『すごいお姉さん』って呼んでた。
悪魔は皆ちっちゃい子で美巨乳はいないから、興味津々なんだろうな。
今気付いたよ。
「サクラさん、ガルちゃんにもお仕事回してあげてよ」
「はい。もちろん構いませんが……」
「どういうことだよ」
「あ、ダン」
面白いところには必ず首突っ込んでくるなあ、このツンツン銀髪男は。
エンタメに関する嗅覚は超一流だ。
「ガルちゃんは食べる子なんだ。でも食堂を利用するにはおゼゼがいるでしょ? 稼ぐ手段も教えてやらないと」
「ははあ?」
おっぱいさんの眼鏡が光る。
冒険者活動をさせて依頼を片付けろということを理解してくれたらしい。
悪魔は契約に関しては真面目だから、仕事はキッチリこなすはずだよ。
一方でダンが訳ありの悪魔だなって視線を送ってくる。
合ってるけれども、今言えないからまた今度ね。
ダンとおっぱいさんには、第二皇子主席執政官閣下が『魔魅』持ちであることを以前話してある。
ガルちゃんが現在の閣下付きの悪魔であることも伝えておきたいが。
「ガルちゃん。こっちの依頼の貼りつけられたボードがあるでしょ?」
「ええ、『魔法の葉八枚』とか『『逆鱗』一枚』というのがそうね?」
「うん。あれ? でも『逆鱗』持ってこいの依頼が出てるのか」
これちょっと難しいから、あたしが請けてやってもいいな。
ま、いいか。
困ればおっぱいさんが何か言うだろ。
「ガルちゃんなら、有用な素材やアイテムを手に入れられる場所も知ってるでしょ? そういうのを売ればおゼゼが手に入る。イコールいつでも御飯が食べられるってことだよ」
「素晴らしいわ!」
「あっちに買い取り屋さんがいるけど、同じ魔法の葉八枚だったら買い取り屋よりも依頼こなした方が高く引き取ってくれるんだ。ただし、依頼には期限ありのやつが多いよ。期限を守れないと、ペナルティで一ヶ月依頼請けられなくなっちゃうから注意ね」
「わかったわ」
「じゃ、次はお店ゾーンの説明をしようか……あれ? おっちゃん。杖の依頼って、ギルド関係なくない?」
大杖作ってくれってのは、マーク君から直接請けたんだぞ?
「超絶美少女精霊使いに伝言を頼もうと思ったのだ」
「ああ、なるほど。明日ちょうど帝国行く予定があるんだ。おっちゃんも一緒に行く?」
「おお、久しぶりに里帰りもいいな」
「おっちゃんは帝国の出身だったんだ?」
問題書籍『輝かしき勇者の冒険』のファンって言ってたもんな。
帝国出身者なら当たり前のことだったか。
「うむ。帝都で魔道杖作りの基礎を学んでな。ドーラの方が材料が豊富であることを知って、海を渡ったのだ。ドーラには希望とロマンがあった」
「おお? おっさんには似合わないドラマじゃねえか」
「『杖職人海を渡る』って本、誰か書いてくれないかなあ」
「ファイアードラゴンに食われるオチのやつか?」
「ノンフィクションにしてくれ!」
「食われてしまうぬ!」
アハハと笑い合う。
「明日の朝、おっちゃん家に迎えに行くよ」
「うむ、待っているぞ。超絶美少女精霊使いよ」
片眼鏡は他人の褒め方をよく理解してるなあ。
おっぱいさんが言う。
「五時になりましたので、私は失礼させていただきますね」
「サクラさん、さよーならー」
「ポーラ!」
ポロックさんの声だ。
あ、ポーラってばヴィルとガルちゃんと三人でぎゅーしてるじゃん。
ガルちゃんもぎゅー好きな子みたいだ。
「ポーラ、お父さんが呼んでるよ。ヴィルもガルちゃんもまた来るからよろしくね」
「もっとぎゅーしたいでつ」
「言われてみるとあたしもしたいな。ぎゅー」
ぎゅーしながら三人を運ぶ、力持ちのあたし。
ごまんとある長所の一つなのだ。
「ポーラ、またね」
「さようならでつ!」
「バイバイぬ!」




