第1381話:閣下とパラキアスさんに報告
『ユーラシア君だね?』
「そうそう。あたしことウルトラチャーミングビューティーだよ」
ゼムリヤから戻り、リリーと黒服を塔の村に送ったあと、施政館のドミティウス主席執政官閣下に連絡を取っている。
「ラグランドの件について報告ね。プリンスルキウスに使者の補佐については話したよ。普通に送れると思うけど、大体のスケジュール教えてくれない?」
『使者は明日午前中、タムポートを出港だ』
「あ、早いね。主な人員は誰かな? リキニウス殿下とルーネの他は」
『それだけだよ。後は最低限の武官文官だけだ』
ふむ、どうやらラグランド側を警戒させない配慮だな。
「よかった。うっかり公爵がついて来るとかだったら、どうしようかと思った」
『ハハハ、グレゴール公爵も同行させろとかなりごねていたぞ? 大仰な陣容にしない、リキニウスの成長のためと言い聞かせたが』
「閣下グッジョブ」
『やはりグレゴール公爵は邪魔か?』
「そりゃそーだよ。いらん口挟まれたら、まとまるものもまとまんない」
帝国もラグランドもあたしも揉めずにとっとと終わりたい交渉なのだ。
波乱要素は必要ない。
「ラグランドに使者一行が到着するのはいつになるのかな?」
『四日後の予定だよ』
「とゆーことは、ラグランドとの交渉は五日後以降だね。りょーかーい。プリンスルキウスに伝えておきまーす」
『すまないね』
「もう、お父つぁんったら。それは言わない約束でしょう?」
アハハと笑い合う。
『いや、ユーラシア君は本当によく働いてくれている』
「今回のクエストは、帝国とラグランドの間をうまく立ち回って、両方から御褒美をいただけってミッションみたいだからいいんだぞ?」
『御褒美はよくよく考えておくよ』
「やたっ! 閣下ありがとう!」
伝えるべきことは伝えたな。
「あたしも明日タムポート行こうかな。参考までに帝国のでっかい港がどんなもんか、見ておきたい気がする」
『ああ、助かるよ』
「えっ?」
助かるって何ぞ?
嫌な予感がするんだが。
『もし公爵グレゴール殿が使者の船に同乗するなんて我が儘言い出したら、止めてくれないか』
「そんな可能性があるの?」
言い聞かせたんじゃなかったのかよ?
『一応納得はしてたんだが、明日になるとどうなるかわからない』
「なるほど?」
あり得る。
すっとこどっこい公爵だもんな。
「リキニウス殿下の出発だからうっかり公爵は絶対来るよなー。カゼでも引けばいいのに」
『ハハッ。施政館からはアデラ植民地大臣をタムポートへ遣わすが、グレゴール公爵が平民であるアデラの言うことを聞くとはとても思えないんだ』
「あたしだって平民なんだけど」
『君は皇族だろうが貴族だろうがお構いなしじゃないか』
「まードーラ人だから」
しかしうっかり公爵はあたしにとっても不必要な札だ。
来ると困るしな。
「わかった。もし公爵が勝手なこと言い出すようなら止める」
『頼むね』
「じゃ、閣下またね。ヴィル、ありがとう。今度行政府に飛んでくれる? できればパラキアスさん。いなかったらプリンスルキウスで」
『わかったぬ!』
よしよし、ヴィルはいい子。
明日リキニウス殿下達にヴィルを紹介しとかないといけないな。
でないと船に遊びに行けないわ。
『御主人! パラキアスだぬ!』
『ユーラシアか?』
「ミラクルシックスティーンことあたしだよ。今帝国施政館と連絡取ってたんだ。特使の船は明日出発、四日後にはラグランドに到着予定だって」
『となると、大使殿下の出番はそれ以降だな。伝えておこう』
「よろしくお願いしまーす」
『君は明日、使者を見送りに行くのか?』
「行くつもり。うっかり公爵がついて行くって言い出すかもしれないんだって。植民地大臣じゃ止まらないかもしれないから言い聞かせろって、主席執政官閣下に頼まれた」
『植民地大臣……アデラとかいう平民の女性だったな』
「そうそう、アデラちゃん。多分まだ二〇代の、ハキハキした優等生タイプの人だよ」
『相当優秀と聞いているが、公爵一人を抑えられないものか?』
「身分制度が染みついてると仕方ないんじゃないの? アデラちゃん自身に確固としたバックがいるわけじゃないみたいだし。大貴族に睨まれると仕事しづらくなっちゃうじゃん」
『君はズケズケものを言うじゃないか』
主席執政官閣下と似たようなことを言うなあ。
「あたしはドーラ人だから、身分とか関係ないもん。あたしの言うこと聞かないと、大体損するように世の中できてるし」
『要するにまたアクロバチックな理屈で公爵を説得するんだな?』
「え? まあ状況によっては」
何期待してるんだよ。
パラキアスさん関係ないじゃん。
必要なのは言うことを聞かせることであって、アクロバチックかどうかはどうでもいいんだわ。
『オリオンがラグランドに興味あるみたいでな。タムポートから使者の船を追いかけるようなことを言っていた。大体の航路を知りたいらしい』
「父ちゃんが?」
対帝国貿易のおいしいところは帝国の貿易商に持ってかれちゃってるから、対ラグランド貿易が解禁されたら食い込もうと思ってるんだな?
将来ドーラに大きな利益を生むかもしれない。
父ちゃんに協力してやらねば。
『タムポートでオリオンに会うことはないと思うが、使者の船に不審船と思われても厄介だ。もし面倒な事態が起きるなら、うまくとりなしてくれ』
「わかった」
完全にあたしが使者の船に遊びに行くことを読まれていた。
恐るべし。
「輸出品についてだけど、盾の魔法のスキルスクロール、一〇〇〇本納品できそうだって言ってたよ」
『ほう? これは完全なドーラ内製なんだろう?』
水魔法『アクアクリエイト』が異世界への外注なのに対してという意味だろう。
「うん。ドーラ内製」
『大したものじゃないか。いずれ水魔法も内製にできるのかい?』
「月三〇〇〇本くらいは作れそうだね。でもケイオスワードを理解してスクロールをチェックできるのが、デス爺の孫一人しかいないんだ。パラキアスさん、魔道に詳しい人材に心当たりない?」
『ないこともない。誘ってみよう』
あれっ? 聞いてみるもんだな。
全然期待してなかったのに。
「お願いしまーす。じゃ、またね」
『ああ、またな』
「ヴィル、ありがとう。今度ラグランドの総督府行ってくれる?」
『わかったぬ!』




