第1374話:ガルちゃんにかれえを食べさせたった
フイィィーンシュパパパッ。
「ユーちゃん、いらっしゃい」
「こんばんはー。お肉、一応追加だよ」
「やったあ! ありがとう!」
クネクネと小躍りの連続技を披露するバエちゃん。
キレがいいなあ。
「今日は新しい悪魔の子が来るんじゃなかったかしら?」
「ヴィルが連れてくるよ」
「ヴィルちゃんと仲良しなの?」
「とゆーわけではないな。むしろ本来は仲悪い方だと思う」
「え? 大丈夫なの?」
バエちゃんは心配するけど、どうってことないのだ。
「ヴィルみたいないい子は例外だけど、基本的に悪魔はエネルギー源として悪感情を欲しがるの。だから悪魔同士の関係はマウントの取り合い貶し合いになっちゃう」
「好感情を欲しがるヴィルちゃんには何のメリットもないわね」
「そうそう。だけど悪魔は損得にはメッチャ敏感だから、御飯を食べさせてもらえるっていう明らかなメリットをふいにしようとは考えないんだよ。相手がいい気分になってりゃヴィルも嬉しいし」
「ふうん、難しいのね」
難しいっていうか、面倒だなとは感じる。
あ、来た。
ヴィルとガルちゃんが同時に現われる。
「御主人!」
「よーし、ヴィルいい子!」
「か……」
「か?」
「可愛いいいい!」
ガルちゃんに抱き着くバエちゃん。
「ヴィルちゃんも可愛いけど、あなたもすごく可愛いわ!」
「あ、ありがとう存じます」
ガルちゃん引き気味やんけ。
でも喜んでる。
「名前はガルムだよ。あたしはガルちゃんって呼んでる」
「もう煮えてるのよ。席に着いてくれる?」
◇
「ほしいも~のなんてな~い~たべたらも~おにくはな~い」
「今日もバエちゃん絶好調だなー」
「バエの姉貴! おかわりいただきやす」
「他におかわり欲しい人は?」
「私も少しいただいていいかしら?」
「お肉も焼けましたよ」
「あたしお肉もらお」
「ミーもね!」
賑やかだなあ。
ガルちゃんお肉よりかれえが気に入ったみたい。
「食べたことない味でしょ?」
「素晴らしいですわ! 怒涛の香り攻勢ですわ! おいしさの洪水ですわ!」
ハハッ、大絶賛だ。
かれえは美味いもんな。
ガルちゃんが首をかしげる。
「でも私、このかれえに似た料理を知らなかったですわ」
「かれえは異世界の料理なんだ」
「異世界? そういえばこの場所は……」
ガルちゃんもワープできる子だから、チュートリアルルームが亜空間中の小さな実空間であることに気付いたろう。
「ここは『アトラスの冒険者』の出張所みたいなところだよ」
「えっ? ……『アトラスの冒険者』はドーラの組織ではないのかしら?」
「違うよ。閣下も誤解してるみたいだけど」
「閣下? ガルちゃんは偉い人の関係者なの?」
「ガルちゃんは帝国の政権担当者の側にいる高位魔族なんだ」
「あまり他人に話して欲しくないことなのだけれど」
ガルちゃんが心配そうな顔をする。
「バエちゃんは異世界の人なんだよ。こっちの世界の帝国やドーラとは無関係、というかあんまり関わっちゃいけないの」
「では、『アトラスの冒険者』とは何ですの?」
「異世界がこっちの世界に追放した人を監視するための機関だよ」
「ああ、要するに異世界は私達の世界を流刑地として使用していて、『アトラスの冒険者』メンバーという看守を使役しているということですのね?」
「あれ、ガルちゃん賢いな」
『アトラスの冒険者』の根本は当たり前の組織みたいな気がしてきた。
「とゆーわけで、ここへはガルちゃんを招待できるんだ」
「どういうことですの?」
「色々漏れちゃいけない話ってあるじゃん? 国際関係はややこしいから。でも帝国と『アトラスの冒険者』は無関係なんで、片方の話がもう片方に伝わったって影響ないんだよね」
「……よくわかりませんわ」
「例えばあたしはドーラ行政府を食事処として利用してるんだけど、ドーラの政治の中心にガルちゃんを呼ぶと、閣下が警戒するでしょ?」
ガルちゃんは聞かれたらウソ吐かないだろうしな。
まーあたしがどっちとも通じているから、実はそんな警戒は無意味なのだが。
「私の行動は、ドミティウスの都合などに左右されないのですわ」
「悪女っぽいセリフは好きだけれども、ガルちゃんだって閣下に追い出されるのは嫌でしょ?」
「それは……」
あたしだって面倒な悪魔が閣下付きになったら困るわ。
すかさず食いついてくるバエちゃん。
「何なの? ラブい理由なの?」
「友達以上恋人未満の関係かな。閣下は悪魔を引き寄せる固有能力持ちなんだ」
「悪魔を引き寄せる固有能力……というと『魔魅』?」
「そうそう」
バエちゃんって固有能力に詳しいんだな。
当然っちゃ当然か。
「ガルちゃんを御飯に呼べる場所は限られちゃうってことだよ。でも呼べる時は呼ぶからね」
「わかったわ。ありがとう」
「ちなみに今日のかれえは、今年中にドーラでも再現する予定なんだ。ドーラの名物料理にしようかと思って」
「大ヒット間違いないですわ!」
「ハッハッハッ、ガルちゃんはわかってるなあ」
帝国から観光客を呼べる料理に発展させたいな。
バエちゃんが言う。
「ガルちゃんは、いつもはどこで御飯を食べているの?」
「食べられないの。人前に簡単に姿を晒すことはできないのですわ」
悲しそうなガルちゃん。
姿を見せることで得られる恐怖や混乱の感情は好きかもしれないけど、悪魔を滅する力を持つ者だっていなくはない。
悪魔だって危険なことは好きじゃないだろう。
とゆーか、得にならない争いなんてバカバカしいと考えてるんじゃないの?
「可哀そう。ユーちゃん、どうにかならないの?」
「ガルちゃん、おゼゼは持ってるんだっけ?」
「多少はありますわ」
「じゃあガルちゃんが出入りしてもいい食堂を今度教えてあげるよ。ヴィルが出入りしてるところだから、皆悪魔に慣れてるんだ」
「そうなの? 嬉しいわ」
「ただし人間に大きな迷惑をかけないことを、受付で誓いなさい。それからあんたを滅ぼすだけの力を持ってる人が何人かいるから、バカにしてもダメだぞ?」
「何なの? 怖い!」
「大丈夫だぬ。皆優しいぬよ?」
「ガルちゃんは見た目可愛いし、礼儀正しいから、クソ生意気なこと言わなきゃ平気だぞ?」
今度ギルドに連れてってやろ。
「ごちそうさま、おいしかったよ。今日は帰るね」
「ユーちゃん、またね」
「バイバイぬ!」
転移の玉を起動し帰宅する。




