第1372話:ラグランドについて、行政府に報告
「美少女精霊使いユーラシア参上!」
「御主人!」
「よーし、ヴィルいい子!」
飛びついてきたヴィルをぎゅっとしてやる。
新聞記者トリオを帝都に送り届けてから、行政府にやって来た。
パラキアスさんが聞いてくる。
「今日はどうしたんだ?」
「もちろん昼御飯を食べに来たんだけど、その前に重要な報告があるよ」
「何だ? ソロモコで異変があったか?」
「ソロモコはもう忘れちゃっていいよ。帝国艦隊もとっくにタムポートに帰って、あたしもツェーザル中将ん家で御飯ごちそーになった」
「どこでも御飯なんだなあ」
「節操がないんだぬ!」
大笑い。
御飯はともかく。
「最初から説明するね。あたしソロモコのあと、ラグランドクエストが出たんだ。必然的にラグランドの蜂起に関わることになっちゃった」
「うむ」
「帝国はソロモコ遠征に失敗したから、軍を出すことに反対が強いみたいなんだ」
「理屈はわかるが、ソロモコ遠征が不発に終わったとなれば、ドミティウス兄上はラグランドの武断的処置に拘るんじゃないか?」
プリンスルキウスもそーゆー見解か。
ラグランド総督ホルガーさんもらしくないって言ってたな。
バアルが主席執政官付きだった時、相当武力解決を煽ってた説浮上。
「拘んないんだな。全権特使を派遣して話し合いで解決する方針に決まった」
「ほう? ドミティウス兄上らしくない方針だな」
プリンスが意外そうだ。
閣下が好戦的な傾向にあるのはその通りなんだろうけど、バアルがいなきゃ理性の働く人なんじゃないの?
閣下と話してて話通じないと思ったことないし。
「ラグランド行き全権特使にはリキニウス殿下が任命されて、補佐にプリンスがつくことになったの」
「「「「「「えっ?」」」」」」
「あたしがプリンスを転移で連れていけば可能だろうって言われて」
「待った。そもそもリキニウスが特使なのは何故だ? 使者の候補は他にいくらでもいるだろう?」
皇族の身分が看板として必要だったってこともあるだろうけど。
パラキアスさんが言う。
「……リキニウス皇子殿下に次期皇帝を諦めさせる。代わりに適当な役を宛てがって、祖父グレゴール公爵を満足させる、という必要があったんでしょうな」
「あたしもそう思う。とゆーかうっかり公爵ってドーラ総督だったんじゃん。あたし知らんかったわ」
「うっかり公爵」
皆さん苦笑しとるがな。
よし、うっかり公爵で通じる。
「帝都ではリキニウス殿下を次期皇帝にという話はどうなんだ?」
「世間では全然言われてないよ。さっき施政館でリ殿下とうっかり公爵に会ったんだ」
「つまりリキニウスを使者にという要請だな?」
「うん。そしたらうっかり公爵が、リキニウスちゃんを次期皇帝にって話をし出したんだよ。皇位継承権でも政治的実力でも納得されないぞ、反逆者の思考だって決めつけたったら謝ってた」
「ドミティウス主席執政官はグレゴール公爵と対立できない。だからユーラシアが言わされたという解釈でいいか?」
「いいよ。リ殿下の父ちゃんの第一皇子が皇太子だった証拠はないって、うっかり公爵本人が言ってたから、もうこの話は消えるんじゃないかな」
次期皇帝争いにおいて、セウェルス第三皇子とリキニウス殿下のセンは消えた。
フロリアヌス殿下は本人にその気がないようだ。
どうやら次期皇帝候補はドミティウス第二皇子とプリンスルキウスに絞られた?
でも彼我の影響力の差があり過ぎるんだけど。
「ラグランド交渉の日が決まったらまた知らせに来るよ」
「よろしくね」
「それとプリンスを帝都に戻して、次席執政官に復帰させるって」
「「「「「「えっ?」」」」」」
「プリンスがパウリーネさんと婚約したから、帝都の方が都合がいいだろうって説明だったけど」
パラキアスさんが言う。
「大使殿下をドーラに置いておく方が不気味と見たか」
「かもねえ」
メキスさんとバアルの両翼をもがれ情報面での優位性を失った第二皇子が、政権運営のためにプリンスを必要としているというのも事実だと思う。
しかし……。
「勝手だな」
「えらく陰険なことを思いついたものだ」
「マジでそう」
ドーラの指導者層とプリンスと信頼関係が生まれて。
プリンスとツーカーの貿易商を中に入れてドーラの発展を思い描いていたのだ。
それが御破算とは言わないまでも、次の在ドーラ大使の下で再構築しなければならないのは二度手間になる。
プリンスにとってもドーラは気の置けない地だ。
帝都に戻れば影響力は増すだろうが、反対派閥は多く、身の危険も考えなければならない。
でも次期皇帝を目指すためと考えりゃ、プリンスは帝都にいた方がいいだろ。
この際プラスに考えよう。
「次の在ドーラ大使は誰になる?」
「現ラグランド総督のホルガーさん」
「ホルガー殿か。植民地経営のプロと言っていい。手腕は確かだよ」
「情のある人でさ。ホルガーさんだったから、今までラグランドが無事治まってたんだろうなーと思った」
「有能な人物をドーラに回してくれるのかい?」
オルムスさん喜んでるわ。
プリンスが随員なしで来た時よりも、大分ドーラの扱いが良くなったと感じるだろうから。
「ホルガーさん、ラグランド総督としての任期が来ちゃうんだって」
「和平が成立したら、ホルガー殿が留任ではラグランド人の心証がよくないということか」
「ルキウス大使殿下を取り上げるんだ。それなりの人物を補償として寄越さないと、ユーラシアの機嫌を損ねると考えたんだろう」
パラキアスさんがあたしの方に視線を向ける。
「君が間に入ってないと、対ラグランド交渉がまとまらないんだろう?」
「そりゃプリンスを転移で送ることさえできないし」
現実問題として、主席執政官閣下の意を酌んで即興で動けて、しかもラグランドの指導者層と隔意なく話せるのはあたしだけだから。
「しかし主席執政官は相当な策謀家じゃないか」
「全て向こうの掌の上だと面白くないから、少しイタズラしてやった」
「何をした?」
「閣下には溺愛してるルーネロッテっていう娘がいるんだよ。冒険者に憧れてるけど、閣下は野蛮なことは考えるなって思ってるっぽい。でも知らんぷりしてルーネの冒険者熱を煽ってやった」
アハハ、余興です。
「お昼の用意ができたようだ。食べようじゃないか」
「いただきまーす!」




