第1368話:新聞を利用してやる
――――――――――二二五日目。
フイィィーンシュパパパッ。
新しい朝だね。
希望の朝だ。
皇宮にやって来た。
「おっはよー」
「やあ、精霊使い君。今日も登場かい? いらっしゃい」
いつもの土魔法使い近衛兵だ。
いつものようにサボってるなあ。
「今日も施政館に来てくれって言われてるんだ」
「そうか。だからかな? 新聞記者達が詰め所に来てるんだ」
「え? 敏感だな」
ラグランドの蜂起は昨日であることを、新聞記者は知っている。
だから今日何らかのアクションがあることを見越したか。
政府からの正式発表があるまで報道は控えて欲しいけど、蜂起自体は内緒事ってわけじゃないだろうし。
「今日は記者さん達を施政館に連れていっても、不都合なさそうだな」
「そうかい? じゃあ同行させてやってよ」
「何であんたが勧めてくるの?」
「精霊使い君が絡んだ日の記事は面白いからね」
新聞の評価が上がっていることを実感するわ。
新聞の影響力が強まると、ドーラの産物の売込みにも都合がいいしな。
また協力してやろう。
「サボってる時に新聞読むのは都合がいいんだと見た」
アハハと笑いながら近衛兵詰め所へ。
◇
「……とゆーわけ」
新聞記者トリオと施政館への道を急ぐ。
ラグランドの件を話しながらだ。
「ははあ。ラグランドの指導者層が、蜂起を大きくしないようにしているわけですか」
「意外ですね?」
「ツェーザル中将にアドバイスもらったんだ。民衆が自発的に蜂起したけど指導者層が止めようとしたという構図にすれば、処分者を出さずにすむぞって。これは内緒だぞ?」
「ツェーザル中将から?」
驚く記者トリオ。
「……中将とユーラシアさんはソロモコの件もあって、対立しているものと思っていました」
「そーゆー解釈だったのか。違うんだよ。中将は軍人で政治的なことに関わろうとしないけど、視点は鋭い人なんだ。どうすることが帝国の未来にとってベターか理解できるから、あたしのやってることが幸せに近いってわかってくれるの」
「なるほどですね」
「一昨日の夜は中将の家にお邪魔して、御飯ごちそーになったくらい」
頷く記者トリオ。
ツェーザル中将とあたしが、懇意に話をできる間柄であることはわかったろ。
中将はできるやつなので、今後も仲良くしたいし、昇進して欲しいとも思う。
「やはりラグランドへ軍は送らない情勢ですか?」
「送らないね。蜂起の規模が大きくならなければだけど。口先で解決すりゃ、一番傷口が広がらないよ」
「速やかに全権特使を派遣する流れですね? 特使はセウェルス様で決定ですか?」
「第三皇子を使者にするって話はなくなったんだ」
「「「えっ?」」」
意外だろうな。
『強奪』の使い合いになったことを省いて、昨日の件を説明っと。
「ユーラシアさんにセクハラですか?」
「命知らずですね」
「まーでも第三皇子はあたしを随分と褒めてくれたんだよ。だからあんまりセクハラとは思ってないとゆーか」
「でもセウェルス様はいきなり怒り出したと?」
「あたしのおっぱいのボリュームじゃ視覚的に満足できなかったんじゃないかと、密かに危惧しているんだ。あとからそんなの理由にされても困っちゃう」
大笑い。
「第三皇子に使者はムリだって、ガイド役だった騎士のフロリアヌス殿下とアインハルト君が主席執政官閣下に報告してたよ」
「どなたが使者になるんでしょうか?」
「それを今日教えてくれるから、ラグランドに知らせろってことみたいなんだよね。ちなみにフロリアヌス殿下とアデラ植民地大臣のセンはなさそう。とすると記者さん達は誰だと思う?」
思案顔になる記者トリオ。
閣下の思惑なんかわかりゃしないが、誰を使者にするのが帝国人の一般的な感覚かってのは知っときたい。
「……最有力のアデラ植民地大臣がないならば、現役の大臣を送らない方針かもしれませんね。では前植民地大臣ジェロン伯爵が有力ですか。現在無役ですし」
「皇族でしたらマルクス様、ガイウス様あたりでしょうか?」
「第一皇女ヴィクトリア様もあり得ますね。ダークホースだと思います」
「ふーん。帝国は人材が多くていいなあ」
無難に役をこなすだけならいくらでも候補がいるらしい。
でもピンとこないな?
アデラちゃんの申し出を断った閣下の昨日の様子からすると、確かな当てがあるっぽかった。
またその人物を起用することは、閣下の思惑とも合致すると思われるが?
「で、ユーラシアさん。少しおかしなことがあるんです」
「最近世の中おかしなことばっかりだな。何だろ?」
天変地異の前触れか何かだったら嫌だな。
こんなこと考えるとフラグ回収しそうだから、今のはなし!
「窮状と言いますか悲惨さと言いますか、ラグランドの実体についての話を、ここ二、三日よく聞くようになった気がします」
「ラグランドが重税に喘いでいる植民地だってことは、よく知られてるんでしょ?」
「もちろんです」
「ユーラシアさんにラグランドのことを聞いていたからかもしれませんが……」
「まだラグランド蜂起のことは、一般の人は知らないはずだよね?」
「「「はい」」」
じゃあラグランドのスパイ網が仕事してるんだろうな。
やるじゃないか。
「蜂起が起きたってことと合わせて、大衆の関心がラグランドに向くかもしれないねえ」
「大いにあり得るんですよ」
「ラグランドには重要な交易品も多いですから、物価への影響も心配です」
「あたしはあとでラグランド行くつもりだから、記者さん達もどお? 一緒に行く?」
「よろしいんですか?」
喜ぶ記者トリオ。
「蜂起とだけ聞くと、けしからんラグランドのやつめって思う人も多いだろうからさ。正確なところを帝都の人に知らせるために、いつかは記者さん達に取材してもらおうと思ってたんだ。ラグランド人サイドに資料用意しといてって言ってあるから、記事にしやすいと思うよ」
「「「助かります!」」」
実際に用意してもらってるのはお涙頂戴のエピソードだけどな。
ハハッ、ラグランド可哀そうの感情よ、帝都に共有されてしまえ。
「まずラグランド蜂起について記事にしていいか、施政館の許可を取るのが先だねえ。先走って怒られたらかなわん」
「よろしくお願いいたします」
あれ? あたしが許可を取る流れなのかな?
まーいーや、施政館にとうちゃーく。




