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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1369話:最後のドーラ総督隙ありじっちゃん

「こんにちはー」

「やあ、いらっしゃい。ユーラシア君」


 今日はラグランドに送る使者が誰かを教えてもらうつもりで、新聞記者とともに施政館に来た。

 執政官室の中に入ると、主席執政官閣下の他に四人いた。

 アデラ植民地大臣は当然として、残りの三人は誰なん?

 一〇歳くらいのメッチャ可愛い男の子、お爺さん、あたしくらいの年齢の女の子だぞ?

 使者にしては変な人選だが。


「ちょうどいい。こちらの三人の第一印象をユーラシア君に聞きたいな。記者諸君もそう思うだろう?」

「「「思います! 聞きたいです!」」」

「有名人なん?」

「おっと、ノーヒントだ。真ん中の男に心当たりはないかい?」

「ないなあ」


 見たことないじーさんだ。

 閣下がこう言うってことは、あたしに関わりのある人物なのかな?


「じゃあ左側の子の印象から。男の子だよね? 控えめに言って美少年」

「ありがとうございます」


 ニコッとするその子。

 何じゃこの可愛い生き物は?

 淡い金髪に軽くウェーブがかかり、薄い青の瞳は憂愁を湛えているようにも見えるが、実際にはワクワクしているのがわかる。


 ……外見は非凡だけど、中身は普通だと思う。

 邪悪なところのない優しい子ではある。


「真ん中のじっちゃん。ビックリしたよ。こんな隙だらけの人初めて見た」

「何だと!」


 怒ってんのじっちゃんだけだ。

 周りの皆、笑いを堪えてるじゃねーか。

 白い立派な口ヒゲを具えた見かけはジェントルマン。

 でも何かの罠なんじゃないかと思うほど、あちこち抜けている。

 騙されやすい、言い換えれば扱いやすい人。


「最後の女の子は……なかなかやるね」


 少し微笑む。

 明るめの茶髪に涼やかな切れ長の目元。

 でもあたしにかなり興味を持ってるみたい。

 武道の心得があるんじゃないかな。

 レベルはないけど、おそらく元々のステータスがかなり高めだと思われる。


 閣下が答えを明かしてくれる。


「こちらから順に、兄ガレリウスの長男リキニウス、その母方の祖父グレゴール公爵、予の娘ルーネロッテだ」

「よろしく。ドーラの美少女精霊使いユーラシアだよ」

「ひやあああああ!」


 グレゴール公爵と握手、きゅっと握ってやったら実にいい声で鳴いた。

 隙だらけだなあ。


「な、何をするのだ!」

「だって美少年や女の子に悲鳴を上げさせるのは、ポリシーじゃないんだもん。じっちゃんもあたしみたいな美少女と握手するのは嬉しいでしょ?」

「む? それはそうかもな……」


 大丈夫かこの人?

 遊んでるあたしの方が不安になるわ。

 新聞記者はワクテカしてるけれども。


 隙ありじっちゃんが言う。


「今日は孫のリキニウスちゃんともどもドミティウス殿に呼ばれてな。大方、次期皇帝に関わることだと思うが……」

「えっ?」


 どーしてそーゆー結論になった?

 じっちゃん以外の全員の目が点になってるからな?

 あ、思考停止してる閣下の顔面白い。


「残念ながら皇帝陛下のお命は長くない。カル帝国の長久の安寧を計るためにも、次期皇帝を決定する旨の議論は急務である」

「必ずしも間違ってないかもしれんけど」


 何で今だと思った?

 陛下の意識がハッキリしてる時に意思を聞くなり、さもなくば民意と実力を考慮して会議で決めるなりすりゃいいじゃん。

 あれ、隙ありじっちゃんが首振ってるね?


「残念ながら、今後陛下の意識が明瞭になることはあるまい」

「マジか」

「グレゴール殿が言うのならば正しいのだろう」


 このグレゴールというじっちゃん、情報屋カラザによれば、陛下と最も気安く話せる貴族って話だったな。

 しょっちゅうお見舞いにも行ってるんだろう。

 だから陛下の病状にも詳しいんだな?


「陛下直系の孫であるリキニウスちゃんに次期皇帝を要請するため、使いを寄越したのだろう?」

「おいこら何言ってんだ。そんなわけないだろーが。目開けたまま夢見んな」


 粗忽者とかすっとこどっこいとか言われてる理由がわかったわ。

 チラッと閣下の方見たら、言い聞かせてくれって顔してる。

 帝国の皇帝についてのお話でしょ?

 ドーラ人であるあたしの仕事じゃないじゃん。

 え? 言い争いになって公爵が敵になると都合が悪い?

 まったくしょうがないなあ。


「じっちゃんがリキニウス殿下を推す根拠は何なん?」

「皇位継承権一位だった第一皇子たる婿殿の長男だからだ! 実質皇太孫のようなものではないか!」

「ようなものって。実際に婿殿が皇太子だった事実はある?」

「い、いや、ないが……」


 閣下ホッとしてるじゃねーか。

 第一皇子が皇太子だった証拠が出てくる可能性がなくはないと思ってたんだろうな。


「リキニウス殿下の皇位継承順位は?」

「八位いや、七位だったか……」

「有力者の支持は? じっちゃん以外で」

「特には……」

「子供だもん、当然政治的な実力も実績もないよね? セールスポイントは?」

「あ、愛らしい顔」

「顔で皇帝が務まるなら、あたしは世界政府のトップだわ。皇位継承権の正統性も実際の政治力もない者が皇帝にって、誰が従うんだ。リキニウス殿下を傀儡にしたいやつだけだぞ? 国を混乱させたいのかよ。反逆者の思考だぞ?」

「は、反逆者? い、いや、そんなつもりは……」

「反逆者が気に入らないなら、非国民でも売国奴でもお好きな称号をどうぞ」

「……」


 すげー汗出てるじゃん。

 こんなに高速で泳ぐ目は初めて見たわ。

 おもろいじっちゃんだなあ。


「大体政治の場である施政館から、次期皇帝がどうのこうのなんて話が来るわけないじゃん。皇族の会議に呼ばれたとかゆーならともかく。陛下がすぐ死ぬって言ったことも含めて、迂闊さを謝っときなさい。今なら笑い話にできるよ。リキニウス殿下に累が及んだら困るでしょ?」

「すぐ死ぬなどとは……いや、ごめんなさい」


 大貴族とは思えない頭の軽さ。

 謝り慣れてるんだろうな。

 閣下と目が合う。

 こんなとこでオーケーだね。


「ところで、あたしがこのじっちゃんに心当たりあるかもってのは何で?」


 グレゴール公爵ほど愉快なキャラにどこかで会ってたら、さすがに忘れないと思うわ。

 閣下が言う。


「公爵は最後のドーラ総督だったんだ。最初の在ドーラ大使でもある」

「あっ、なるほど」

「うむ、在任中にそなたほどの輝きに出会えなかったのは痛恨の極みである」

「あたしもじっちゃんほどおもろい人を知らなかったのは残念だよ」


 再び握手。

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