第1365話:いつものレベル上げ
フイィィーンシュパパパッ。
「オニオンさん、こんにちはー」
「こんにちはぬ!」
「ユーラシアさん、いらっしゃい。そちらは?」
レベル上げの聖地にしてドーラ一のレジャー施設、約束の地魔境にやって来た。
ここはいつ来ても気分がいいなあ。
特に四の月ともなると暖かくなってきて、来るたびに植物が生えてきたと感じる。
もうちょっとしたらクララに有用植物のチェックをしてもらわないとな。
楽しみだ。
「ウィリー君だよ。元『アトラスの冒険者』で、残念ながら冒険者としては大成できなかったけど、『マップ』の固有能力持ち」
「了解です。いつものやつですね?」
「そうそう、いつものやつ。ウィリー君、彼は魔境ガイドのオニオンさん」
ウィリー君不安そうですね?
「僕は全然了解できてないんだけど……魔境って?」
「南部の人は魔境知らなかったかな? ドラゴンとかがいて、ドーラで最高の体験型アトラクションを満喫できる場所だよ」
「や、やっぱりドラゴンがいる魔境?」
「説明いたします。全てユーラシアさんに任せて防御姿勢だけ取っていてください。余計なことすると危ないですからね」
「おーさすがオニオンさん。簡潔にして完璧だ!」
「えっ?」
「行ってくる!」
「行ってくるぬ!」
「行ってらっしゃいませ」
「えっ? えっ?」
ユーラシア隊及びふよふよいい子、戸惑う『マップ』持ち出撃。
◇
「……とゆーわけなんだ」
「なるほど、魔境は獲得経験値が高いから」
真っ直ぐ中央部へ向かう途中で、軽くうちのメンバーについての紹介と、今日の目的についてウィリー君と話す。
北辺は謎経験値君の爆発が危ないからな。
少々効率が悪くなるけど仕方ない。
「最初に説明してくれればいいのに」
「レベル上げするって言わなかったかな?」
「聞いたけど魔境だとは思わないよ!」
「似たようなこと言う人多いな。でもうちのパーティーからすると、ドラゴンだろうがスライムだろうがワンターンキルすることに変わりないじゃん? じゃあ経験値高い方がよくない? って理屈なんだよね」
ため息を吐くウイリー君。
今日あんまり時間ないから急がないと。
「僕は結局一体のオオゴミムシすら倒せなかったんだよ」
「『アトラスの冒険者』は最初が不親切だよね。初心者が何の手助けもなく魔物倒せってのは間違ってると思うわ。あ、ケルベロス出た」
背中の光ってない普通のやつだ。
いつものように倒す。
「本当だ、レベル上がった! あっ、地形の起伏がよくわかる?」
「『マップ』の固有能力は、レベル五くらいになると俯瞰で見えてくるって聞いたな。発現度合いの強弱にもよるんだろうけど。今日はレベル三〇くらいまでのレベル上げを予定してるよ」
「レベル三〇? 上級冒険者がそれくらいじゃなかったっけ?」
「まあね。マッドオーロックスくらいは、一人でやっつけられるようになってて欲しいんだ」
「マッドオーロックスって……」
「あの辺で普通に出る魔物では一番強いんでしょ? おいしいし」
こら、呆れんな。
あたしは美味い魔物は倒せた方がいいという、一般論にして常識を話しているのだ。
魔力濃度の濃い方へ向かう。
◇
「南部は他所とあんまり交流がないんでしょ?」
「外とは単価の比較的高いコショウの売買だけで繋がってるようなものだね。自給自足できるからいいと、皆が考えてるんじゃないかな」
「なるほど」
楽園みたいなところだもんな。
南部だけで十分暮らしていけるから。
「でもよろしくないなー。ドーラは独立してから連携して発展していこうって機運なんだよね。ウィリー君も『アトラスの冒険者』やってみようと思ったのは、南部が閉鎖的じゃ先がないと考えたからなんじゃないの?」
無言で頷くウィリー君。
ピンクマンやボニーが顕著だが、『アトラスの冒険者』は多かれ少なかれ自分のホームとドーラの関係について思うところあるようだ。
あえて進歩的な考えの持ち主を選抜してるわけじゃないんだろうけど。
「でもどうしたらいいのか……」
「魔物だ。ちょっと待っててね」
ぺしぺしと、ガーゴイル倒す作業かな。
「リフレッシュ! どう?」
「周りの地形が、上からの視点でも見える!」
「おお、使えるようになってきたね」
「これ、レベルが上がってくるとどうなるんだい?」
「広い範囲が把握できるようになるんじゃないかな? よく知らんけど」
ウィリー君が興奮気味だ。
能力が育つのを理解するとテンション上がるよなあ。
「まだまだだよ」
「おう!」
さらに中へ。
◇
「やっぱ南部は外と隔絶されてるのがネックだよなー」
「僕も承知してる。でも魔物が強くてどうしようもない」
魔力濃度が濃くなってくる。
そろそろドラゴン帯か?
しかし今日まだザコ二体しか倒してないじゃん。
「あれは?」
「サイクロプスだね。クリティカル持ちだから、今のウィリー君にとってはドラゴン以上に危険だよ」
真経験値君がベストだけど……あ、いるいる。
「出た出た。デカダンスだ。しかもラッキーなことに二体。あれは安全に倒せる割に、経験値がすごく高いという特徴があるんだ」
「そうなのかい?」
「あの手の人形系魔物は、総じて経験値が高くて魔宝玉を絶対落とすっていうメリットがあるんだよ。あいつらは冒険者に幸運をもたらすために存在しているんだ」
間違った知識を植えつけちゃダメですよって顔をクララがしているが、間違ってはいないんじゃないの?
少なくともうちのパーティーにとっては、真実以外の何物でもないんだけど。
……少々サイクロプスの位置が近いのが気になるな。
連戦になるか?
レッツファイッ!
ダンテの実りある経験からのあたしの薙ぎ払い! 勝った!
「リフレッシュ! やっぱサイクロプス来ちゃったか」
「す、すごくレベル上がった気がする」
「もうサイクロプスのクリティカルに耐えられるから、しっかりガードしててね」
「ああ、わかった!」
レッツファイッ!
「雑魚は往ねっ!」
「すごい!」
結局サイクロプスの攻撃はアトムが受けて、あたしのキメ技が炸裂。
高級巨人が一撃で倒れる様子なんて、そうそう見る機会がないからな。
「ラッキー。デカダンスが黄金皇珠もドロップしてる」
これでウィリー君の装備揃えても収支プラスだな。
若干レベル三〇に届いてないかもしれないがいいだろ。
「よーし、目的達成! 撤収!」




