第1353話:ツェーザル中将宅にお邪魔する
「美少女精霊使いユーラシア参上!」
「御主人!」
「よーし、ヴィルいい子!」
ツェーザル中将宅にやって来た。
飛びついてきたヴィルをぎゅっとしてやる。
さすがに高級軍人ともなると広い家だなあ。
「あらあら、はしたないわよ」
「そーゆーなよ。ガルちゃんも可愛いぞ?」
「あ、あらそう?」
ガルちゃん照れてやがる。
『可愛い』が褒め言葉になる子だったか。
ガルちゃんもぎゅっとしたろ。
「ガハハ。よく来た、ユーラシアよ」
「お招きありがとう! これお土産。お肉とワイバーンの卵」
「おお、デカい卵だな?」
「飛竜の一種ワイバーンを倒すとドロップすることがあるんだよ。ドーラでは高級食材で、ファンも多いんだ。でもこれを調理できる器具って、料理屋以外でなかなかないんだよね。中将ん家ならデカい鍋があると踏んだ」
「あるぞ。こちらが妻と息子達だ」
「こんばんはー」
目キラッキラしてるやん。
「ヤマタノオロチ退治のヒロインが遊びに来るということで、楽しみにしていたのだ。冒険譚でも聞かせてやってくれ」
「何だ、お安い御用だよ」
「……二日前、肥溜めに転落しましてと聞いて。ダイレクトに物理的な穢れだと思わなかったわ。深刻に考えてた分、損しちゃった。あたしの純情を返せ」
「「「「「あははははははは!」」」」」
「……五暈の彩光じゃ、レイノスは許された! って言ったら、ぜいれいざまあ! って大泣きしちゃって。今その人ドーラで大使のプリンスルキウス付きの役人やってるけど、その場面思い出すたび笑えてきちゃう」
「「「「「あははははははは!」」」」」
「……おっぱいは揉むと大きくなるんだぜ言いやがるんで、魔境に捨てて来ようとしたんだ。そしたら皆して謝るから、じゃあレッドドラゴンのエサになりたいかアイスドラゴンのエサになりたいか、選ばせてあげるって妥協したつもりだったの。結局勘弁せざるを得なくなったけど」
「「「「「あははははははは!」」」」」
「……落とし穴に仕込んであるの、ウシの糞かな? ウマの糞かな? って聞いたら、ウシの糞とウマの糞とヤギの糞のミックスだって。ほう、なかなかやるね。百発百中の落とし穴職人だけのことはある」
「「「「「あははははははは!」」」」」
「……あたしがどんどん首落とすから、皆は牙を回収して。大儲けだーってね。どん引きしてる暇があったら働け。これヤマタノオロチの時も同じことやろうとしたけど失敗しちゃって。神話級の魔物はなかなかだった」
「「「「「あははははははは!」」」」」
「……最後に阿鼻叫喚を演出した精霊使いにも、ペナルティを食らわせろーってことになって魔法の葉青汁を飲んださ。ぎゃーまずーい! その後急いでお肉を食べに行ったね」
「「「「「あははははははは!」」」」」
「……メインモチーフがドクロの呪術師ばっかりの村でさ。そんな天国みたいなところが存在するんだななんて言うから、地獄みたいの間違いだろって。世の中感覚の理解できない人はいるね」
「「「「「あははははははは!」」」」」
御満足いただけたようで、あたしも嬉しい。
食後の腹ごなしにちょうどいいや。
てか何でガルちゃんまでゲラゲラ笑い転げてんのよ?
食べるのが好きなことといい、普通の悪魔と少し感性が違う子なのかな?
「いやあ、面白かったぞ! 期待してたのと少し傾向は違ったが」
「そお? あたしんとこ回されるクエストは、エンタメ寄りなんだよね」
「しかしお主は、世界を股にかけて活躍しておるではないか」
「事件に関わるネタはまだ話せないことも多くてさ」
中将は察してくれたようだ。
いや、ソロモコのネタはもう解禁してもよさそうだな。
「ユーラシア、ちょっといいか?」
「うん。ヴィル、ガルちゃん、お子さん達と遊んであげてね」
「わかったぬ!」
「任せておきなさい。御馳走になった分は働きますわ」
律儀だな。
案外ガルちゃんは如才ない子だわ。
中将と別室へ。
「聞きたいのは悪魔のこと?」
「まあ、そうだな」
中将が真顔になる。
「ドミティウス閣下が悪魔に魅入られる体質であることを知っているのは、ごくごく一部の政府高官のみのはずだ。何故ドーラ人が知っている? バアルを捕らえたのは偶然なのか?」
あれ? ちょっと考えてたのと違う切り口だったわ。
「多分中将が思ってるよりも多くの人が、閣下の側にバアルがいたことを知ってたと思う」
「何?」
「バアルって結構あちこちで悪さしてるんだよ。あたしが初めて名前を聞いたのは、一〇〇年以上前に海の一族の内戦に干渉して被害を大きくしたっていう歴史でだよ」
「海の一族? バアルはドーラに関係のある悪魔なのか?」
「帝国の人は知らんのかな? バアルは主に帝国本土とドーラで活動してたみたいだよ。ドーラにはバアルを知ってる人が何人もいるし、閣下付きだと知ってた人もいた。帝国でも特に聖火教徒は悪魔の出入りをよくチェックしてたみたいだから、幹部クラスの人はわかってたんじゃないかな」
「聖火教徒か。盲点だったな……」
愕然とする中将。
帝国では聖火教徒とコンタクト取りたがる人がいないんだろう。
「中将はあたしが飛空艇壊したことは知ってるんだっけ?」
「ああ、聞いた」
「バアルがドーラ独立戦争に関わってたことをあたしが知ったのは独立後なんだ。聖火教ルートとメキスさんから聞いた」
「メキス? 情報部のメキス中佐か? 生きていたのか?」
ふむ、艦隊司令官クラスになると作戦の全容を知ってるようだ。
中将は帝国側の全権を委任されてたらしいから当然か。
「潜入工作部隊としてドーラ西域に攻め込んだメキスさん以下二五名は、全員生きてるよ。畑耕したり冒険者やったりしてる」
「そうだったのか」
「でも内緒ね? 本土に残してきた家族には家族の生活があるし、死んだことにして遺族年金出てる方が都合がいいんだって」
「……うむ、理解はできる」
重々しい表情で頷く中将。
「で、情報を総合すると、何年も用意してきたドーラ戦役が閣下やバアルの思い通りに行かなくて不本意な結果に終わったのは、決定力である飛空艇を壊したあたしのせいだってことで、バアルにすげえ恨まれてたみたいなんだ」
「逆恨みではないか」
バアルのことには結構興味があるみたいだな。
身を乗り出し気味になる中将。




