第1351話:偶然じゃなかった
フイィィーンシュパパパッ。
「オニオンさん、こんにちはー」
「こんにちはぬ!」
「いらっしゃいませ、ユーラシアさん」
昼食後、心の安息地・魔境にやって来た。
ニコニコしながらオニオンさんが聞いてくる。
「ドワーフとの修好はいかがでしたか?」
「バッチリ。全然問題ないな」
「ドワーフは気難しいんでしょう?」
「あたしもドワーフ頑固とか偏屈とか聞いてたけど、お肉とお酒があれば仲良くできるよ。いずれ石の加工の仕事出すからよろしくって頼んだら、お肉をおまけにつけろって言われた」
俺達は腕の安売りはしねえぜチラッ、って感じの構ってちゃんだわ、ドワーフは。
面倒っちゃ面倒だけど、付き合いにくいイメージはない。
だってお肉には勝てないんだもん。
「ハハハ、いいですね。黒妖石の入手の方は?」
「黒妖石って帝国本土の山の中だと普通に取れる石なんだって。とゆーか、農具を傷める硬い石って扱いで毛嫌いされてるの」
「ははあ、帝国では利用価値に気付いていない?」
「……でもないな。専門家でもない人が、魔力に対する親和性が高いことが知られているって言ってたし」
フィフィの執事が知っていたことだ。
彼はどう見ても専門家ではないしな。
高度な教養といった程度なんじゃないか。
「加工できないから実用的じゃないって思われてるんじゃないかな」
「だから帝国で集めてくると?」
「帝国本土のほぼド真ん中にガータンってとこがあるんだ。ま、田舎領なんだけどさ。そのガータンを領地にした新男爵と友達になったの」
「ほう? 田舎領の農業を考えますと、黒妖石はかなり厄介ものですか?」
「うん。あたしが出資して黒妖石を穿る道具作ってもらってさ。ガータンの耕地面積を広げる代わりに、あたしは黒妖石もらってくるんだ。石掘りはもう始まってるから、すぐに手に入るよ」
「順調なんですねえ。安心しました」
これおっぱいさんには話してあったんだが。
まーおゼゼの使い道は個人情報だから言わないか。
「本日の魔境探索のテーマは?」
「ワイバーンの卵をゲットしたいね。夜に帝国のツェーザル中将ん家に御飯呼ばれたの。お肉とワイバーンの卵をお土産に持っていこうと思って」
「ツェーザル中将? 軍人にも知り合いが?」
「ドーラやソロモコに派遣された艦隊の司令官だよ」
「えっ!」
知り合いになったこと自体は驚くようなことじゃない。
ソロモコからお帰りいただく時に、絶対交渉しなくちゃいけなかったんだから。
「すげーでっかい人だから、見るとビックリするよ」
「見なくても驚きですけれども。人脈がすごくないですか?」
「んーでも帝国での知り合いの数がそう多いわけじゃないんだよね」
皇宮に飛べるようになって二ヶ月くらい。
事件やイベントのおかげでいろんな人と知り合えたが、まだまだでもある。
「バアルのあとに第二皇子の主席執政官閣下にくっついてる悪魔がいいてさ。その子を紹介してもらった。ガルちゃんっていう狼頭の子」
「えっ? まさかドミティウス皇子から直接紹介されたんですか?」
「うん、昨日ね。その場にツェーザル中将もいたんだけど。閣下もあたしに対して隠し事するのはムダだし、味方にしとく方がいいって考えてるんじゃないかな」
「何とまあ……で、主席執政官付きの高位魔族とは? ユーラシアさんから見てどうです?」
「ごくふつーの悪魔だな。ソロモコが魔王関連の島だと知ってて遠征先に仕向けるくらいの悪さはするけど」
「大顰蹙ものじゃないですか!」
「そお? 悪魔だから戦争を誘導くらいのことはするよ。愛嬌の内」
たまたま帝国が海外遠征を行う流れだった。
元々閣下付きではなかったガルちゃんが、計画の最初から参加してたわけじゃない。
状況に乗ってソロモコ遠征を煽ったか、あるいは遠征先がソロモコに決まったのを放置していただけだと思う。
バアルみたいに、何年もかけてドーラ戦の準備に関わるみたいな根性のある子とは思えん。
「普通悪魔は御飯食べないんだよ。でもガルちゃんはお肉が好きなんだって。せっかくだから、中将のところにガルちゃんも連れていこうと思って」
「餌付けするんですね?」
「そゆこと。第二皇子は『魔魅』っていう悪魔を惹きつけやすい固有能力持ちなんだ。どうせ悪魔からの影響受けるなら、バアルみたいな大悪魔よりガルちゃんみたいな扱いやすい子がいいよ」
悪魔のナワバリ意識はかなり強いらしい。
一人第二皇子の側にいたら、他の悪魔は寄らないだろう。
「ユーラシアさん、以前ラグランドで蜂起が起きるって仰ってたじゃないですか」
「そーなんだよ。ソロモコのクエストが終わったらラグランドのクエスト来ちゃって。あっ?」
オニオンさんにラグランドについての話をしたから、おっぱいさんが気を利かせてくれた。
だからあたしんとこにラグランドクエストが回ってきたのか。
偶然じゃなかった。
「ユーラシアさんが関わりたがっていたようなので」
「関わりたかったんじゃないんだけどなー。でも面白いことになってるの。食にウィークポイントを抱えてるラグランドに初めっから勝ち目はないんだけどさ。結構重要な交易品があるから、事態が長引くと帝国本土で物価が上がっちゃって市民の不満が高まり、政権の支持率が下がっちゃうみたいな」
「ユーラシアさんは両方のトップに会えるんですよね?」
「帝国とラグランドの両方に恩を着せて、謝礼をいただく立場」
アハハと笑い合う。
「ラグランドはある程度の要求通ればよし、帝国は大事にならなきゃオーケーなんだよね。筋書きとしては帝国から全権特使を派遣して、折衝して手打ちにするって感じ」
「間にユーラシアさんが入るなら、さほど問題ないということですね?」
「いや、ラグランドが納得できる条件をどこまで通せるかがシビアだな。綱渡りになるっぽい。それから帝国の特使になりそうな第三皇子が、何やらかすかわからん人。もう一つ、ラグランド総督の周りに強硬解決を望む勢力がいる気配なんだ」
「今わかってる波乱要因ですね?」
「遊ばせてくれるわー」
いろんな経験させてくれる『アトラスの冒険者』は楽しい。
「また何かあったら話すね。行ってくる!」
「行ってくるぬ!」
「行ってらっしゃいませ」
ユーラシア隊及びレベルカンストいい子出撃。




