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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1349話:情報戦だぞ?

『ラグランド・ウォルビス中央府に転送いたします。よろしいですか?』

「あれ? 転送先の名前がちょっと変わってる」


 ガータンから帰宅後、ラグランドへ行こうかと思ったら、行先が中央府になってる。

 これだとヴィル呼ばなくていいな。

 ヴィルもお手紙の仲立ちやポーラと遊んであげる仕事があって、なかなか忙しいからね。


「これ中央府のどの辺が転送先になってるのかな?」

『正面玄関横です』

「近くていいやん。転送よろしく」


 フイィィーンシュパパパッ。

 門番に挨拶。


「こんにちはー」

「何やつ! あ、ユーラシア殿でしたか」

「そうそう。ドーラの美少女冒険者ことあたしだよ。ここに直接飛べるようになったんだ。よろしくね」


 ジャブラニ衛士長も来た。


「こんにちはー。昨日帝国施政館行ってきたんだ。帝国側の打つ手も見えてきたから、相談しようかと思って」

「明日の蜂起に対する打つ手ということですな?」

「そーだけど、蜂起って言っちゃっていいのな?」

「皆知ってることなので」


 何これ?

 追い詰められて蜂起だ、ラグランド可哀そうって感じに持っていきたいのに、悲壮感が全くないがな。

 祭みたいにワクワク?


「こちらへ」

「おじゃましまーす」


 中央府内部へ。


「ユーラシア!」

「おお、元気だねえ」


 王女オードリーが飛びついてきた。

 ヴィルやマーシャの行動に似てるな。

 性格はバラバラだけど、皆いい子。

 あとに付き従うセグさんが話しかけてくる。


「ユーラシア殿、進展がありましたかな?」

「進展というほどでもないかな。大まかに施政館の方針が決まったから、伝えに来たんだよ。こっちがどうなってるかも聞きたい」

「すぐ主だった者を集めますぞ」


 この前の部屋、この前のメンバーで話し合いだ。

 八重歯がキュートな魔法連の頭ヒャクダラが言う。

 コイツが先陣切ってくれると喋りやすいな。


「どうなった?」

「ソロモコ遠征の失敗が響いてる。蜂起の規模が小さいならば、軍は送れないだろうって。おそらくは特使がすぐ派遣されてくるよ」

「艦隊が来ねえのはありがたいぜ。間違いないんだな?」

「ドミティウス主席執政官に直接聞いたんだ。ブラフや方針転換の可能性がないわけじゃないから、油断はしちゃいかんよ?」

「おう」


 まあしかし帝国の方針が大きく変わることはない。


「で、使者は皇位継承権一位のセウェルス第三皇子が有力」

「セウェルス? 飲んだくれだという?」

「ラグランドでもそーゆー認識なのな。笑える」


 内政担当のリリウオが眉を顰める。


「正直……交渉しやすい相手とも思えませんが」

「いや、あたしも第三皇子に会ったことないからよくは知らんのだけどさ。あんまり理性の働かない人みたいだから、交渉をかき回されそうで迷惑なんだよね」


 帝国もラグランドもことを大きくしないのが望ましい。

 本当は実務的な人がいいんだけどなあ。


「事情がありますか?」

「和平条約を即結べるくらいの権限を持たせる、重要な植民地であるラグランドに配慮の姿勢を見せるとなると、かなり位の高い人じゃないといけないみたいだね。第三皇子は何たって皇位継承権一位だし、特に仕事してないからすぐ動けるってのが表向きの理由」

「裏は?」

「この前チラッと話した、次期皇帝争いが絡んでるんだ。主席執政官ドミティウス第二皇子にとっては、使者として派遣したライバルが大失敗やらかしたり蜂起に巻き込まれて死んだりしたら万々歳じゃん?」

「これはこれは……」


 全員が引いてるけど。


「うまいこと交渉が成立するんでも主席執政官閣下は嬉しい。何故なら政権支持率に響かないから」

「だから外務大臣でも植民地大臣でもなくて、皇子が使者なのかよ。汚ねえ理由だな」

「まあどこでもいろんな思惑があるんだよ。帝国の方はそんなとこ。ラグランドはどう?」


 侍従のセグさんが説明してくれる。


「各地に畑を守れと通達しました。首都ウォルビスでの蜂起はデモに毛が生えたほどの規模になりそうです」

「オーケー、バッチリ。帝国が武力で鎮圧してこようとしてこないのにいきり立つのは、エネルギーのムダ使いだぞーとでも触れ回って、絶対に蜂起の規模を大きくしないでね」

「「おう」」


 ふむ、実戦部隊はジャブラニさんとヒャクダラが担当か。


「ラグランド総督ホルガー殿に窮状を訴えたところ、大変に御理解をいただいたのです。私が間に立つから、ことを荒立ててくれるなと」

「ふーん?」


 ラグランド総督か。

 本当にラグランドに同情してくれるのか、あるいは帝国現政権の手先で穏便に事態を収束させたいのか。

 単に巻き込まれて死にたくないだけかもしれないな。

 しかしどういうつもりであっても構わん。


「総督から帝国本土へ送られる報告書なり使者なりはすぐに通してあげてね。検閲とか必要ないから」

「いいのか? こっちの情報がだだ漏れになっちまうぞ?」

「機密が重要な戦いじゃないんだってば。総督はどうやら、ラグランド側の舞台に立ってくれるってポーズは少なくとも見せているようじゃん? せいぜい機嫌よく踊ってもらわないと」


 頷く全員。

 細い勝ち筋を消してはいけない。


「帝国本土の協力者を通じて、ラグランドに対する帝国のひどい仕打ちを広めるよう伝えさせました。しかし、効果が出るのは先になりそうですが……」

「大丈夫大丈夫。いざとなったら帝都の新聞記者を呼んで記事にしてもらって、いっぺんにラグランド可哀そうムードに持っていくからね」

「「「「「えっ?」」」」」

「情報戦だぞ? 新聞記者が食いつくような、帝国市民の涙を誘うようなエピソードを多めに用意しといてよ。ラグランドを虐めるなんて卑劣なって空気を作って、政権を揺るがしてくれるわ」

「こ、これがミラクルフィフティーンユーラシア……」

「一六歳だとゆーのに」


 今できることはこれで全部かな。

 一番の不安要素は使者になるであろう第三皇子だが?

 ラグランド総督ホルガーさんと第三皇子には会っておきたいが、考えてみりゃ蜂起が起きる前にあらかじめ顔合わせするっておかしな話だし。


 オードリーが聞いてくる。


「勝てるのか?」

「勝ち負けとゆーか、どこまで要求を認めさせることができるかだけど」


 リリウオがいい顔してる。

 大体考えがまとまってるっぽいな。


「じゃ、また来るよ」


 転移の玉を起動して帰宅する。

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