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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1335話:内緒にしとく

「明日、山場は山場なんだよね」

「まあな。随分とのんびり構えてるじゃねえか」

「あたしのやったことはベストだったと思うし」


 明日ソロモコ遠征についての報告を司令官ツェーザル中将が行うので、あたしも施政館に寄る予定だ。

 帝国サイドが知らなかったとはいえ、事実上魔王の支配下にあるソロモコを侵略対象にしたのは間違いだった。

 その辺はおそらくツェーザル中将でさえも認めてくれているだろう。


「あんたのやってることが正しいか否かなんてのは、主席執政官には関係ないんだろ? 敵か味方かだけなんじゃねえのか?」

「イシュトバーンさんはよくわかってるなー。第二皇子に会えればどうにでもなるけど、締め出し食うと面倒なんだよね」

「ほお? 会えればどうにでもなるのか?」

「美少女が言い訳すると男は許さなきゃいけないとゆー不文律があるじゃん」


 半分本気だ。

 イシュトバーンさんの目がえっちになった。

 ま、主席執政官に会えさえすれば説得する材料はある。


「勝算はあるのか。しかし難しいだろ」

「簡単とは言えないね。ツェーザル中将の帰還に合わせて行くのも、クッションとして期待してるからなんだよ」

「あんた、中将を相当気に入ってるじゃねえか」

「やっぱ帝国で司令官任されるくらいの人はやるね」


 ドーラに欲しいくらいだ。


「大将以上の階級になると、軍の中枢を担当することになる。実戦部隊では中将クラスがトップだろ。兵士の尊敬を最も集めてるはずだ」

「なるほど?」


 となると軍における地位自体が、軍以外でも影響力を持っちゃいそう。

 そーゆー些事が煩わしいから、ツェーザル中将は政治と距離を置いてるんだろうか?


「明日の話は期待してるぜ」

「エンタメ方向に面白くはならないと思うよ」

「エンタメ方向じゃなくても、あんたの持ってくる話は刺激的なんだ」

「ふーん」


 イシュトバーンさんは割と何でも面白がってくれるけどな?


「で、驚いたことにソロモコの決着がついたあと、ラグランドのクエストが出ちゃったの」

「ラグランドもあんたの担当になるのかよ? トラブルが寄ってくるなあ」


 だからそのえっちな目で見るなとゆーのに。


「ラグランドはソロモコの件と違って、放っといてもドーラに悪影響なさそうじゃん? 最初あんまりやる気なかったんだけど」

「考え方が変わったのか?」

「うん。サイナスさんに、調整者として都合のいいように立ち回ればいいって言われたんだ。ドーラへの影響がどうこうとか直接の損得とか考えないようにして、貸しを押しつけとく方向で動こうかなと思って」


「灰の民の族長はなかなか知恵者じゃねえか」

「頼りになるんだよ。毎晩寝る前にヴィルを飛ばして、報告・連絡・相談してるの」


 サイナスさんはヘタレ気味だが賢い人なのだ。


「ラグランドは三日後蜂起、これは決定」

「帝国軍としては鎮圧か放置の二択じゃねえのか?」

「いや、ラグランド人側の首脳に会えてさ。知恵をつけてきたんだ。本格的な反乱になっちゃうと兵糧攻めされて絶対勝てないぞー、農民は畑を守れーって。だから蜂起の規模はごく小さくなるはず」

「鎮圧の軍を出すほどじゃねえってことか?」

「ソロモコ遠征の失敗もあって、帝国からも軍は出しにくいんじゃないの? 一方でことが長引くとラグランドとの貿易が止まるから、市民の不満が高まっちゃう。帝国の現政権にとって避けたい事態だね」

「ほお? 帝国も対応が難しいんじゃねえか」


 追い詰められてるのは帝国じゃなくて、政権を担う第二皇子だけどね。


「つまりそこで施政館に美少女精霊使い登場。ラグランド人首脳とも話ができますよって売り込むわけか。確かに門前払いはしにくいな」

「明日は楽しみだね。ラグランドはすげえ帝国の情報集めてるんだよ。あたしが飛空艇を墜落させたことも知ってて、ミラクルフィフティーンって呼ばれてるの」

「出稼ぎや移民で帝国へ行ってる連中を組織してるんだろうな」

「あたしもう一六歳だから、ミラクルフィフティーンは恥ずかしい」

「そこかよ! 可愛いな!」

「可愛いぬよ?」


 アハハ、まあまあ。

 ラグランド関係は、あたしの手の届かないところでどう転がるか、まだわからんのだ。

 双方の主張の落としどころを見つけて早期に決着できれば、あたしの存在感も増しそう。

 イコールドーラの売込みがしやすくなる。


 イシュトバーンさんが真面目な顔になる。


「さて、メインディッシュだ」

「えっ? もう食べられないんだけど」

「オレにしか相談できそうにないことってのは何だ?」


 おおう、真っ直ぐ切り込んできたなあ。


「あたし、新しい固有能力が発現したんだ」

「結構なことじゃねえか。オレにしか相談できないってのは何故だ?」

「『強奪』ってやつなんだよね」


 イシュトバーンさんの愛嬌があると言えなくもない目が大きく見開かれる。

 やはりイシュトバーンさんは、『強奪』とそれにまつわるエピソードを知ってるようだ。


「……よりによって『強奪』かよ。あんたはつくづく面白い星の下に生まれてるな」

「マルーのばっちゃんにどういう能力か詳しく教えてもらってさ。『強奪』持ちであることは人に話さない方がいいって言われた」

「他人の固有能力を奪うってのは因果だよな。オレとマルーの他、このこと知ってるのは誰だ?」

「マルーさんとこのニルエとうちの子達だけ」

「オレの『道具屋の目』をやろうか?」

「えっ? いらない」


 安心したようなガッカリしたような顔になるイシュトバーンさん。


「あんたほど存分に複数の固有能力を使い倒してるやつはいないだろうに、意外なほど淡白だよな。欲しい能力はねえのか?」

「『巨乳』か『ギャグセンス』が欲しい」

「おお? あんたの『巨乳』は新鮮だな」

「だよねえ。無敵だよ」

「無敵だぬ!」


 アハハと笑い合う。


「あんたが『強奪』を得たってことは、今後かなりのエンターテインメントが待ってるんだろ。『強奪』持ちであることを隠しとけってのは、オレも賛成だ」


「わかった。内緒にしとく」


 イシュトバーンさんから見ると、エンタメ方向の固有能力らしい。

 エピソードを聞く限り、結構深刻な効果だと思うのだが?

 どこかで『強奪』を使うことになるのは決定のようだ。


「今日は帰るね」

「ああ。またな」

「バイバイぬ!」


 転移の玉を起動し帰宅する。

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