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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1328話:ヒョウタン酒

「まーいーや。ショータイムはここまでだ。で、どういう話になってるの?」


 ベンジャミンさんとパスカル君がポカンとしてるけど。

 いや、山賊達も信じられんものを見たって顔してるな?

 人間お手玉ならいつでもやったげるから、玉になりたかったら言いなさい。


 ヘルムート君が説明してくれる。


「概ね、この前スイープ殿に話した内容と同じだな」

「どーしてこんなにしらけた雰囲気になってるのよ? いい話だと思うけど?」


 そりゃ不備なところはあるかもしれない。

 今後改めていけばいいだけのことだぞ?

 煽り男が不満げに言う。


「……信用できねえ」

「どこもやってない初めての試みだもんな。でも空の民が領民になれば、領主サイドはメッチャ得になるって理屈はわかるでしょ?」

「それはまあ……」


 ハハッ、人間お手玉が効いたかな?

 頷いてる人もいるじゃん。


「お頭どうかな? 石掘りバールの使い勝手は」

「上々だ」

「耕地は広げられそう?」

「かなりな。二年あれば、認可をもらった分は耕地化が完了するだろう」

「収量はかなり上がるね?」

「ああ、間違いないぜ」


 ヘルムート君が満足げだ。

 お頭の言葉なら信用するだろ。

 山賊達も興味持ってるじゃん。


「今許可した分が限度というわけではない。実績があり、より広い面積が必要ということであれば、追加で承認しても構わぬからな」

「本当かい!」

「ヘルムート様。集落の人口で、承認できる土地面積の限度を決める措置がいずれ必要かと愚考いたしますが……」


 ベンジャミンさんの言うことももっともだ。

 でも今は耕作地面積が大きくなる方がガータンのメリットだな。

 けしかけたろ。


「皆聞いた? 上限ルールができるまでに耕地広げちゃうのが、合法的なサクセスロードってもんだぞ? 成り上がりのチャンスだ!」

「そ、それもそうだな」

「領主様! オレんとこにも『ガータン仮住民登録証』を! 二二名だ!」

「うちもだ。石掘り具貸し出しを申請する!」


 盛り上がってきたが、煽り男はまだ不貞腐れている。


「おい、お前ら目を覚ませ」

「まだ何か問題ある? 信用できるかってことについては証拠出せないけど、逆らうのはドラゴンを喜ばすだけだぞ?」

「ドラゴンのエサって話も本当なのかよ!」

「本当に決まってるだろ。冗談なんか言わないわ」


 言うけど。

 ベンジャミンさんが煽り男に問う。


「不満があるのかね?」

「……ある」

「何だろうか?」

「土地だ」


 耕作に向いた土地と向いてない土地で格差があるだろってことらしい。


「スイープんところは石さえなけりゃ農地を広げられるだろうさ。だがそんな土地ばかりじゃねえ」

「んー? 言ってることは正しいかもしれんけど」


 しかし賛同者がいないぞ?

 煽り男の集落だけの特殊な事情のようだが。


「幸い土地はいくらでもある。より耕作に適した土地、便利な土地に移住してもらっても、一向に構わんが」

「愛着だってある。簡単に移住なんかできねえよ」

「働き手の必要な農地が多くなる予定なのだ。小作として手を貸してくれれば謝礼を出しますぞ」

「待った。あんたは何で今住んでるところに拘るの?」

「……いい水が出るんだ」

「水?」


 確かに重要ではあるけど、農地を広げられないんじゃしょうがないんじゃないの?


「いい酒を造れるんだ。昨日土産に持ってきたやつだが」

「うむ、大変結構だった」

「公爵家の御子息様が満足しちゃうくらいの品質か。すごいじゃん」


 得意げな煽り男。


「だろう? 今までは空の民に融通してたんだが、皆がガータン仮住民になっちまうと売れなくなっちまう」

「あんたらも仮住民になればいいじゃん」

「酒は増産できねえんだ。俺達は今以上に潤うわけじゃねえ」


 仮住民になったとしても収入は変わらないから、いつまで経っても正式な領民になれる見込みがない。

 他の元空の民と生活に差ができちゃうと、集落民が離れてっちゃうだろうな。

 懸念はわかるが……。


「何でお酒の増産ができないの?」

「だから農地を広げられねえんだよ! 材料の穀物がねえ」

「材料は買えばいいじゃん。『ガータン仮住民登録証』もらえば、買う方だってかなり自由になるはずだぞ」

「え?」


 すっとぼけたような顔すんな。

 今まで山賊達に余分な穀物なんてほとんどなかったろうから、他から大量に買うって発想も出なかったんだろうが。


「話聞いてた? ガータンの耕地面積はこの先どんどん広がるんだぞ? お酒造るのに必要な穀物の値段だって多分下がる」

「あ、ああ」

「絶対に今までより酒造りの環境も販売のルートも整うじゃん」


 騙してるんじゃねーかって目で見るな。

 自分の頭でよく考えろ。


「ねえ、ヘルムート君。おいしいお酒なら、他所に売ることもできるんじゃないの?」

「可能だろうな。しかし酒はどこにでもあるものだ。特徴が欲しい」


 交易品としてのウリか。

 考えてみりゃ海藻酒は珍しいから、帝国の商人さんも仕入れてくれたんだろう。

 今回のケースはお酒自体は変えられないから……。


「あっ、閃いた! これ!」


 ナップザックからヒョウタンを取り出す。


「何だ、これは? ユーモラスな形だが」

「ゼムリヤのヒョウタンですな。実を水筒に加工したもの?」

「そうそう。これ一杯作ってお酒とセットにすれば、珍しいから売れる!」

「「おお!」」

「あるだけ種を置いていくから、増やしてよ」


 いやあ良かった。

 まさかガータンでヒョウタンが使えるとは。


「ヒョウタンの水筒か。ウルシとの相性も良さそうだが」

「ナイス! 職人に奨励して」


 宣伝次第でガータンの名産品になる。

 漆器職人の技術向上も期待できる。

 いいこと尽くめだ。

 ん? 煽り男がオロオロしてんぞ?


「お、おい。どうなったんだ?」

「あんたんとこのお酒を、帝国全土の人が飲むかもしれないってことだよ」

「て、帝国全土に?」

「おいこら、目を泳がせてる場合じゃないわ。かなり儲かるに違いないから、ベンジャミンさんと相談しながら増産するんだよ?」

「わ、わかった」


 めでたし、これにて一件落着!


「ユーラシア殿、助かったぞ」

「いいんだよ。あたし今からパッフェル行くんだ。パスカル君も連れていくね」

「兄上、ガータンでの一〇日間はいい経験になったよ。オレはパッフェルに戻る」

「うむ。父上に報告を頼むぞ」

「ヴィル、パッフェルの宮殿に行ってくれる?」

「わかったぬ!」

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