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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1318話:合理的博愛思想

「ラグランドで進展があったんだな?」


 おおう、単なるラグランド情報をあたしが持ってきたんじゃなくて、進展があると見たか。

 ツェーザル中将はなかなか鋭いな。


「うん。『アトラスの冒険者』は、クエストが終わると次のクエストがもらえるっていうシステムなんだ。あたしも昨日ソロモコのクエストが終わったと思ったら、今度はラグランド行きが出ちゃった」


 中将が目を丸くしてら。

 愛嬌があって可愛いな。


「都合が良過ぎないか?」

「いやー、どんなクエストが配られるかはあたしの采配じゃないんで何とも」


 しかしおっぱいさんは最近、海外のクエストをあたしに回してくれようとする。

 内容もある程度わかってて、ラグランドのクエストをくれた可能性はあるな。


「早速ラグランドの様子を見てきたということか?」

「そゆこと。人口は多いけど、ドーラより貧しいところかなあと思った」

「ユーラシアはまた敵になるのか?」

「敵ではないとゆーのに。でも事態を丸く収めろってことみたい」


 ラグランドについては部外者かと思ってたら、一転関係者だ。

 まったく面白いことに関わらせてくれるんだから。


「現在のラグランドの状況ね? 帝国すげえ恨まれてるんだよ。その辺歩いてる人が『憎っくき帝国』って言うくらい」

「宗主国が植民地に恨まれるのは宿命ではあろうが」


 ドーラは特に帝国を恨んだりしてなかったがな?

 あれか。

 植民地ごとに支配体制が違うから。


「やっぱラグランドに対して税金が高いから?」

「税率もだが、換金作物を強制的に作らせて、かなり安く買い取っていると聞いたことがある」


 ははあ、帝国本土にしか売るところがないから、買い叩かれちゃうってことか。

 不満が高まる理由はわかるな。


「ラグランドの情報収集力はかなりしっかりしてるよ。帝国艦隊がソロモコに行ったこともちゃんと把握してるの」

「つまり艦隊がソロモコに出撃したから蜂起すると言うことか」

「どうせ戦後処理に時間かかるだろうから、五日後に蜂起するって言ってた」

「五日後か」


 顔を顰める中将。


「そこまで聞いてきたということは、ラグランド植民地人の首脳に会えたんだな?」

「会えた。どうしてかあたしのこともよく知ってて、VIP扱いだったよ」

「蜂起を回避させることはできんか?」

「ムリって言ってたな。でも規模は最初予定してたものよりかなり小さくなると思う」

「何? どうして?」


 意外そうだな。


「ラグランド人の偉い連中は、ソロモコに手を取られて艦隊の規模が小さくなれば、帝国軍の攻撃目標を中央府に限定できるから、奇策で勝てると考えてたみたいなんだ」

「愚かな!」

「マジでそう。あたしが帝国軍なら兵糧攻めだ、畑と食料庫焼くぞ輸出止めんぞって脅してきたの。農民は畑を守るために張りつけになるし、ラグランドの指導者層も戦線広げないはず。対話を求めてくると思うよ」

「おお、すまんな。楽になったぞ」

「いいのいいの。『アトラスの冒険者』のクエストはあたしのお仕事だからね。でもボーナス出してくれるなら喜んでもらうけど」

「ガハハ。十分な働きはしているがな」


 中将の笑いは豪快だなあ。

 見てて楽しくなってくるわ。

 あたしは脅すのが趣味なわけではないから、勘違いしないでね。


「帝国もラグランドがとっとと落ち着いた方がメリット大きいんでしょ?」

「政治的にも経済的にもな。軍人の考える領分ではないが」

「ソロモコの件でも同じなんだけどさ。あたしはドーラを発展させたいから、商売相手の帝国が荒れてくれるとひっじょーに困るんだよ」

「敵のように見えて敵ではないと?」

「だから敵ではないとゆーのに」


 巨視的に見てみろ。

 中将もわかってるだろ。

 あたしのやってることは、帝国に最大限のメリットをもたらしているとゆーのに。


「対話で手打ちにできれば一番都合がいいじゃん? もし軍部から強硬な武断的意見が出るようだったら、中将が抑えてくれないかな?」

「ガハハ、人使いが荒いな。任せておけ!」


 よし、こっちは大丈夫。

 中将が興味深そうにあたしを見る。

 いやん。


「ユーラシアは平和が好みなのか?」

「御主人は事態が混乱するのも好きぬよ?」

「おいこら、本音をゆーな」


 大笑い。

 ヴィルも気分が良さそう。


「平和が好きというのではないかもしれないな。あたしは自分が儲けるために皆をお金持ちにしたいし、いいものが簡単に手に入る世の中にしたいの。人死にと戦争は理想の敵だと思ってるんだよ」


 特に人口を減らすためにおゼゼを大量に消費してビンボーになりたがる戦争は、何が嬉しいのかサッパリわからん。

 消えてなくなればいいと思う。

 中将も大いに頷く。


「人がたくさんいて皆が余裕のある生活をしていると、技術や文化が進歩する余地が生まれると思うんだよね」

「まことにそうだ。いい世界だな。幸福の具現かもしれぬ」

「でしょ? 中将も仲間になってよ」

「ガハハ。給料分の義理があるので難しいのだ」


 まあわかってたことだ。

 中将が言う。


「サービスだ。軍人の視点から一つアドバイスをやろう」

「何だろ?」

「ラグランド蜂起の決着についてだ。今予想される推移だと、首脳部から処分者を出さざるを得ん」

「まあねえ」


 スケープゴートが必要なのだ。

 誰かが責任取らないといけないから。

 犠牲者は少ない方がいいが。


「民衆が自発的に蜂起を起こした。特に首謀者はいない。首脳部は止めようとしたという構図にすれば処分者を出さずにすむぞ。交渉もしやすいだろう」

「あっ、そーする! 中将ありがとう!」

「ガハハ、いいのだ。ユーラシアの合理的博愛思想は美しいではないか。俺も一口乗ってみたくなるというものだ」


 身も心も顔も美しいことは知ってたけど、あたしは合理的博愛思想も美しいらしい。

 中将にはいいことを教えてもらった。

 ラグランドの犠牲をより小さくできる可能性があるぞー。


「この艦隊は二日後くらいに帝国本土に到着すると思ってるけど、合ってる?」

「ああ。巡航速度で明後日午後にタムポート帰着予定だ」

「中将は施政館に報告に行くの?」

「うむ、順調ならば、三日後の午前に施政館だな」

「三日後の午前ね。あたしも行くよ。説明が楽でしょ」


 予定決まり。


「じゃ、中将さいならー」

「バイバイぬ!」


 転移の玉を起動し帰宅する。

 お腹ペコペコだ。

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