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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1317話:ツェーザル中将にヴィルを紹介する

『御主人! 艦隊を見つけたぬ!』


 ヴィルにソロモコ遠征からの帰途にある帝国艦隊を探してもらっていたのだ。

 ラグランドの方で思わぬ進展があったので、ツェーザル中将にも情報のおすそ分けをしておきたい。


「よーし、ヴィル偉い! 今どの辺を航行中かな?」

『まだソロモコの方が近いぬよ。このままのスピードなら、タムポートに着くのは二日後の午後以降だぬ』


 ふつーの、おそらく行きと同じスピードで帰国してるんだろうな。

 ヴィルの地理感覚はかなり正確だ。

 これも一つの才能なのかなあ?

 大変ありがたいけれども。


「ツェーザル中将はわかるかな? すげえでっかい人だよ」

『わかるぬよ? 話しかけてみるぬか?』

「うん、忙しそうじゃなかったらお願い」


 昨日ヴィルが中将と顔合わせできなかったのは残念だった。

 でもヴィルはいい子だし、人当たりがいいから問題ないだろ。

 中将にもチラッと話してあるし。


『御主人! ツェーザル中将だぬ!』

「ヴィルありがとう。中将に代わってくれる?」

『はいだぬ!』

『こちらツェーザル中将だ。美少女冒険者ユーラシアで間違いないか?』

「あたしことユーラシアだよ。美少女なのは間違いない」

『ガハハ。連絡係の悪魔とはどういうことかと思ったら、こういうことか』

「うちのヴィルはワープが上手なんだ。ところでラグランドで新しいことがわかったの。そっち行っていいかな」

『構わんが、こっちへ来るとは?』

「ヴィル、ビーコン置いてくれる?」

『わかったぬ!』


 新しい転移の玉を起動し、洋上の艦隊へ。


「御主人!」

「よーし、ヴィルいい子!」


 飛びついて来たヴィルをぎゅっとしてやる。

 中将が不思議そう。


「……ほう、直接飛んでこられるのか。これはどういう仕組みなんだ?」

「あたしは魔道士じゃないから仕組みはわかんない。わかるのは使い方だけだよ。こっちが転移の玉で、ヴィルに持たせてあるのが行く先のビーコンね。転移の玉で魔力を集めて起動すると。ビーコンまで即座に移動できるの」

「つまりお主は、悪魔ヴィルの行けるところへはどこでも移動できる?」

「そゆこと」

「そうぬよ?」

「大変な技術だな。これが『アトラスの冒険者』か」


 うーん、まあ言っておくか。


「これは違うんだ。ドーラに転移術の研究者がいて、作ってもらったものだよ」

「ほう、ドーラも侮れぬではないか」

「転移術はメッチャ難しいんだって。ちょっと間違っただけでどこ飛ばされるかわかんないから、すげえ危険で。メジャーな技術にならないみたい」

「軍事には応用できぬか」


 帝国軍の将校ともなると、軍事にどうかって考えになるんだろうけど。


「ムリだろうなー。例えば大隊ごと転移中に魔道干渉されると、亜空間におさらばなんてことになりそう」

「なるほど、危ないな」

「でも商売にはいいかもね。輸送に時間もコストも必要なくなるじゃん?」

「ふむ、平和な民間利用として生かすべき技術か」

「あ、でも大量には運べないのかな? その辺はあたしじゃよくわかんない」


 今んとこパーティーの移動と、せいぜい狩ったお肉の運搬くらいだ。

 転移事故が怖いから、お肉も一定以上は持って帰らないしな。

 デス爺以外にも研究者が欲しいわ。

 中将が言う。


「しかし可愛い悪魔だな」

「可愛いぬよ?」

「昨日紹介してくれればよかったではないか」

「そうすべきだったよねえ。実は昨日トラブルがあって、朝ヴィルと通信が繋がらなかったんだよ」

「トラブル?」

「何があったと思う? おめでたいことだよ」

「おめでたいこと? 何だ、一体」


 まーこれはわかるまい。


「プリンスルキウスと、アーベントロート公爵家のパウリーネさんが付き合ってるって知ってた?」

「いや、初耳だ」

「パウリーネさんは前からプリンスのこと好きだったみたいでさ。第一皇子のお葬式でプリンスが帝都に戻った時に、恋心が再燃しちゃったみたいなんだ」

「……確かルキウス殿下は、ババドーン元男爵の令嬢と婚約していて、男爵の失脚で破棄されたのだったか?」

「うん。まあフィフィも可哀そうっちゃ可哀そう」


 ドーラで頑張ってるけどね。

 プリンスは婚約破棄からすぐにドーラ行きが決まって、パウリーネさんもコンタクト取る隙もなかった。


「あたしがリリーの縁談ぶっ壊しイベントで帝都にいた時に、プリンスとの間を取り持ってくれって言われたの」

「公爵フリードリヒ殿にか?」

「いや、パウリーネさん本人に」

「ふむう、社交界で話題になりそうなロマンスだな」


 おおう、中将わかってる。


「プリンスは在ドーラ大使だし、パウリーネさんはパッフェルにいるじゃん? 二人の間をヴィルが行き来して、手紙のやり取りしてたんだよ」

「ほう?」


 ってな話を聞くと次期皇帝を巡る思惑みたいなものが頭をよぎるだろう。

 けどプリンスとパウリーネさんの気持ちの方が重要ニヤニヤ。


「あたしもラブい話が大好きだからさあ。応援してたんだ」

「ふむ、昨日通信できなかったこととどう関係があるのだ?」

「ヴィルはねえ。ラブい感情吸い過ぎると、酔っぱらって寝ちゃうんだよ」

「昨日はそういう状態にあったと?」

「プリンスとパウリーネさんの婚約が決まったんだって」

「何と! めでたいことではないか!」

「でしょ? だけどヴィルがラブい感情に当てられて、ドーラ行政府のプリンスルキウスのところで寝ちゃってたの」

「とてもいい気分だったぬ」


 通信障害のせいでソロモコがえらいことになっちゃう可能性がなくはなかった。

 まあでもこれは怒れないわ。


「政略結婚というわけではないんだな?」

「皇族と大貴族の婚約だから、政略結婚っていう側面はもちろんあるんだろうけど。今二人がラブラブなのは間違いないよ」

「間違いないぬよ?」

「ヴィル、行政府とパッフェルを何往復くらいしてたの?」

「三〇往復くらいだと思うぬ」

「キュンキュンするわー」

「キュンキュンするぬ!」


 ちょっと待てよ?

 ヴィルに手紙のやり取り任せてから、一〇日も経ってないんじゃないかな?

 じゃあ一日三往復以上?

 どんだけラブラブなんだ。


「お幸せなことで何よりだ」

「そうだねえ。今日新聞報道も出てるはずなんだ」

「ガハハ、ホットな話題に遅れず、知ることができてよかったぞ。ユーラシアよ、感謝する」

「どーいたしまして」


 中将の眼差しが真剣になる。

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