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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1315話:不可能は可能にならない

 オードリーの侍従セグさんが言う。


「ドーラは友好独立を果たしたと聞きましたが」

「帝国にとっても、正確には帝国の政権にとっても、ドーラを独立させたったという建前の方が都合が良かったからでしょ。ドーラが戦って独立を勝ち取った、なんて扱いになったら威信に瑕がつくし、海外植民地の独立運動も活発になっちゃう」

「落としどころが重要、ということですな?」

「うん。双方が納得できる着地点がいい」

「なるほど……」


 パラキアスさんはどういうつもりだったか知らんけど、他のドーラ人で確かなビジョンを持って独立したい人はいなかったと思うぞ?

 だから今になって、人材が足んないおゼゼが足んないって困ってるわけだが。


「ラグランドの皆さんは着地点をどこに設定してるのかな? 話せるところまででいいから教えてよ」

「独立だ!」


 魔法連の頭ヒャクダラが勢い込んで言う。

 八重歯がチャームポイントかな。

 この人魔法使いのトップなんだろうに若いのな?


「独立か。いいんじゃないの? 最終的には独立すべきだろうし」

「おお! あんたも賛成か! 姫様、我らはやれます!」

「うむ、そうじゃな!」

「具体的にはどうやって?」

「戦って勝つ!」

「え? ムリに決まってんだろ」


 バカな夢見てるんじゃないよ。

 愕然とするオードリー、セグさん、ヒャクダラ。

 頷くリリウオ。

 黙して語らぬジャブラニさん。


「し、しかしあんたは不可能を可能にしたんだろう?」

「不可能は可能になんかならないわ。とゆーか指導者層が不可能だと思ってる計画に住民を巻き込むな。人死にが増えちゃうぞ?」

「「「……」」」


 ジャブラニさんが重々しく言う。


「ユーラシア殿は独立はいいという。しかし戦って勝つのはムリだという」

「衛士長の言う通りだ! どういうことだ!」

「あたしの方が聞きたいわ。帝国にどう勝とうと思ったのよ? 実現できると思ってた作戦があるんでしょ?」


 ヒャクダラが皆の顔色を窺いながら話し出す。

 秘密の計画か。

 単なるあたしの好奇心だから話せないなら話せないでいいんだが、教えてくれるらしいぞ?


「……現在帝国艦隊三艦がソロモコという島国に遠征に出ているんだ」

「ふんふん。それで?」

「絶好のチャンスだろ? 戦後処理に時間がかかるはずだから、ラグランドへ派遣できる艦船は最大でも五艦が限度。上陸作戦は限定的にならざるを得ない。おそらくは最大限の戦力で電撃的にここ、中央府を落としに来る」

「なるほど」


 五艦だろうが八艦だろうが、中枢を攻めることは変わんないだろうけどな。

 情報分析はまずまず。


「俺の配下には飛行魔法を使える者が数人いるんだ。ほぼ空になっている軍艦の上から火と油を落として焼き討ちする」


 魔道で探知されそうだが?


「雑だなー。でも帝国軍の上陸作戦で艦隊の守りが薄くなれば、焼き討ちは効果あるかもしれないね。勝てるかも」

「だろう!」

「戦術的には、だけど」

「は?」


 ポカンとするヒャクダラ。


「事実に誤認があるよ。ソロモコに向かった艦隊は、昨日帰途に就いてる」

「「「「えっ?」」」」

「どういうことじゃ!」

「ソロモコもまたあたしの担当のクエストだったんだ」


 魔王と繋がりがある島なので、ソロモコが帝国に征服された場合えらいことになっちゃううんぬん。


「……という説明して、艦隊司令官ツェーザル中将には帰ってもらったの」

「も、猛将と言われるツェーザル提督を口先だけで?」

「まあ帝国にとっても何もしないで帰るのが一番得だから。落としどころってそーゆーことだぞ?」


 ヒャクダラが絞り出すように言う。


「……すぐに艦隊再編はできないはずだ。ラグランドに派遣される艦数も、帝国軍の作戦行動も変わらない」

「減ると思うよ」

「えっ?」

「ソロモコ遠征は無用の戦だったでしょ? 遠征に失敗したとなれば、帝国国内で反戦派の勢いが増すと考えられるじゃん?」

「な、ならば俺達の勝ち味が増えるだろう?」

「増えない。何故なら帝国はまともには来ないから。あたしが帝国なら兵糧攻めだな。ラグランドは食料自給に難があるってネタが割れてるじゃん? 具体的には工作員を密かに上陸させて、畑と食料庫焼いちゃう。当然穀物の輸出は止める」

「ひ、卑怯な!」

「卑怯に決まってるだろ。あんたら憎っくき悪の帝国が、自分らの思い通りに動くと思ってるのかよ。おめでた過ぎるぞ?」

「「「「「……」」」」」


 まともに戦って勝つのがムリという理由がわかりましたか?

 比較にならないほど国力に差があったドーラが戦略的勝利を収め得たのは、魚人の支配領域に囲まれているという、特殊な地理要因があったからに他ならない。

 ラグランドに有利な要因はない。

 セグさんが焦ったように言う。


「ど、どうにかなりませんかな。もう蜂起は決まっておるのです」

「中止にはできないの?」

「住民の怒りも限界なのじゃ。五日後蜂起は変えられぬ!」


 五日後か。

 となれば……。


「蜂起の規模が大きくなったらコントロールできなくなっちゃうな。小さくしよう」

「どうやって?」

「各地に通達出しなよ。帝国は小癪にも兵糧攻めで来るようだ。食料が足りなくなると負けだぞ。畑を焼かれるな、絶対に死守しろーって」


 優秀な情報網があるのなら逆用しよう。

 食料に不安のあることは村長レベルなら皆知ってるだろ。

 畑や食糧庫に張りつけになれば、農村からの蜂起参加者は激減する。


「カル帝国の皇帝陛下がもうじき亡くなりそうで、次期皇帝を巡る争いがあるってのは知ってる?」

「聞いておりますが……」

「ラグランドが蜂起するってことはもう帝国も知ってるの。で、次期皇帝有力候補の誰かが、ラグランドへ使者として派遣されるんじゃないかって説があるんだ。ってことは皇帝即位を後押しするだけの華々しい実績を欲しがるから、バーターでこっちも要求を通すチャンスだぞ?」

「独立できるのか?」

「がっつき過ぎだろ。独立させろと税金安くしろは、向こうの使者の実績にならないからまず通らない。もし通るなら、あとの始末が決まってるケースだよ。つまり貿易止めてラグランドを混乱させる計画だぞ? 内戦が起きてから再占領されたら、ラグランドの扱いは今以上に悪くなる。民は奴隷に落とされるかもしれない。すげえ危険」


 震えあがるオードリーとセグさん。

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