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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1311話:えらいことになったとゆー報告

「サイナスさん、こんばんはー」

『ああ、こんばんは』


 夕食後に毎晩恒例のヴィル通信だ。


「えらいことになった」

『えっ、ソロモコがかい?』

「いや、ソロモコはどうってことなかったけど」

『待った。混乱のないよう、順番に聞かせてくれ』

「ははあ。サイナスさんは好物を一番最後に食べるタイプかな?」

『合ってるけれども! ……ちなみにユーラシアは?』

「あたしは何でもおいしくいただくタイプだよ。でも珍しい食べ物があると先に食べたくなるかな」


 食べ方の嗜好の話の方が面白い気はするけど、今日は盛りだくさんだったから。

 エンタメ話してると眠くなっちゃいそうだしな。


『朝からソロモコだったんだろう?』

「ばばーん! 朝から予想もしないトラブルが美少女精霊使いを襲ったのでした!」

『ムリヤリ盛り上げようとしなくてもいいよ。何があったんだい?』

「ヴィルと連絡取れなくなってたの」

『えっ? 大変じゃないか。帝国艦隊の到着は、ソロモコの悪魔からヴィルを通して連絡が来ることになってたんだろう?』


 まあサイナスさんの言う通りなんだけどさ。


「どうってことないんだ。どうせドーラの時と一緒で、朝から艦隊で脅しにくるってわかってたから」

『かもしれないが、通信手段としてのヴィルの信頼性が低下するじゃないか』

「原因は判明してるの」

『原因がえらいことなのかい?』

「いや、そっちはめでたいこと。あとで話すよ」


 ヴィル通信を通じて疑問符が飛んでくるわ。

 でも順番に聞かせろって言ったのサイナスさんだからな?


『で、ソロモコは?』

「予定通りだったよ。ダンテが究極魔法を空に向かって撃って、旗振って乗り込んで、交渉して納得してもらった」

『ふむ、ソロモコと魔王の繋がりについても話したんだな?』

「もちろん。というかフクちゃん連れていったんだ」

『え? 大丈夫だったのか?』

「フクちゃんは大丈夫だぞ? 悪魔の中でも常識ある子だから」

『常識のない子が何か言ってる』


 おいこら、失礼だろ。

 ヴィルとフクちゃん以外の悪魔は、いきなり失礼なこと言いだすかもくらいのことはわかってるわ。


「艦隊司令官はツェーザル中将っていう、なかなかできるやつ。あんまり物わかりよく引いてくれたから、高級魔宝玉五点セットをプレゼントしちゃった」

『君、大損じゃないか』

「損って言えば損なんだけどさ。どうせ売れるもんじゃないじゃん?」

『希少価値が下がりそうではあるな』

「高級魔宝玉は売ることを考えないで、贈答品や交渉の手札として使った方がいい気がしてるんだ」


 売るのは黄金皇珠までだな。

 『ケーニッヒバウム』の魔宝玉コーナー基準でもそんなもんだったし。


「ちなみに青の民ディオ君に注文出して作ってもらった白旗は、フクちゃんにあげたんだ。フクちゃんはエピソード付きのアイテムを集めてるんだって」

『ハハハ、良かったな。自分が参加した重要場面に使ったアイテムなんて、いい記念になるだろう』


 フクちゃん喜んでたしな。

 あたしも嬉しい。


「次にヴィル通信が使えなかった原因だけど」

『どうせ予想できないような原因なんだろう?』

「プリンスルキウスとフリードリヒ公爵の娘パウリーネさんの婚約が、本決まりになったからでした!」

『ええ? めでたいことだが、関連性がわからない』


 ヴィルがいい子だからだよ。


「最近、プリンスとパウリーネさんの手紙のやり取りは、ヴィルが仲介してたんだ」

『ああ、なるほど。ヴィルが直接受け渡しするのは合理的だな』

「でしょ? で、ヴィルがプリンスとパウリーネさんのラブい感情に当てられて寝ちゃってた」

『……ということは、ヴィルはどこで寝てたんだ?』

「行政府の大使室。急に倒れたから何事かと思ったって言ってた」


 結果論だが大事にはならなかった。

 めでたいことだったならいいのだ。


「プリンスとウルピウス殿下と帝都の新聞記者連れて、領地に帰ってる公爵のとこ挨拶に行ってさ」

『新聞記者を同行させるところがユーラシアだなあ』

「プリンスを皇帝にするために、帝国市民には定期的に話題を提供しなきゃいけないんだよね。忘れられちゃうと困るじゃん?」

『ふうん? もっともなことだね。ルキウス皇子を皇帝にすることを諦めてないんだな』

「プリンス情報を帝都で広めてもらうためにもドーラの物産を宣伝するためにも、新聞記者を構ってやることが重要なの」

『……ユーラシアは時々頭のいいことを言うなあ』

「あたしは常に頭いいとゆーのに」


 そんなのはごまんとある長所の一つに過ぎないとゆーのに。


『今、サイレントでいつものフレーズが聞こえた気がする』

「気のせいだよ。最後にえらいことだけど」

『うむ、心して聞こう』

「ソロモコが片付いて次のクエストが出たんだ。何とラグランドだった」

『ふむ?』


 あ、サイナスさんわかってないぞ?

 理解されない苦しみなんちゃって。


「ラグランドの人、驚くことに皆あたしのことを知ってるの。ドーラを独立に導いたミラクルフィフティーンだって。帝国にしこたまスパイを送り込んでるみたいで、あたしが飛空艇落としたことまで知ってるんだよ。飛空艇って帝国では機密らしいのにだよ?」

『……つまりラグランドの蜂起というのは一時的な暴発じゃなくて、本格的な独立運動ということか?』

「やっぱサイナスさんの見解でも独立運動か。で、あたしが何らかの働きを期待されちゃってるわけよ。あたしは帝国といざこざなんて起こしたくないのに、実に困るでしょ?」

『困りはしないだろ。今後ラグランドに関与しなきゃいいんだから』

「ええ? そんなのつまんない」


 聖女ユーラシアにとっては、ラグランドの人死にを少なくするチャンスなのだ。

 ただ帝国といざこざを起こすことを、商売人ユーラシアの理性が許さない。

 おまけに冒険者ユーラシアは、『アトラスの冒険者』のクエストを楽しみたいって考えている。


「明日もラグランド行ってくるよ。都で蜂起の中心人物に会えそーな気配なんだ。もう少し詳しい状況がわかると思う」

『ムリするんじゃないぞ? 遊び過ぎないように』


 後半は何なのよ?

 遊んでる場合じゃないとゆーのに。


「サイナスさん、おやすみなさい」

『ああ、おやすみ』

「ヴィル、ありがとう。通常任務に戻ってね」

『はいだぬ!』


 そしてあたしは眠りに落ちた……。

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