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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1312話:三度たわわ姫

「……もうし。あの、ユーラシア・ライムさん?」

「んー眠い……」

「眠いのは重々承知しております。ユーラシアさんにこのタイミングで話しかけると大変に機嫌が悪いのもわかっておりますが、どうか一つ……」

「一つと言わず、三つ食べさせて……」

「何の夢を見てらっしゃるのですか!」

「世界の食を征服するのだ……」

「ユーラシアさんったら!」


 うるさいなあ。

 食べることより大事なことなんてこの世にないのに。

 ……ん? フワフワしたような、足元の覚束ない感覚。

 以前にもこんなことがあったような?


 目の前の薄着でたわわですげー美人のお姉さんが、笑顔というにはあまりにも面倒くさそうな表情を浮かべている。


「これは夢だね?」

「夢です。そして私はこの世界を管轄する女神です。夢の中にお邪魔しています」

「前にもあったな。このコントの設定は」

「コントの設定ではないですよ。私のことは覚えておいでとは思いますが……」


 この自称女神は、夢の中の登場人物なのにハッキリとした印象がある。

 現れたのはあたしが『アトラスの冒険者』になる直前と、飛空艇を破壊した直後だ。

 考えてみりゃ両方とも象徴的な日だなあ。


「うん。この前会った時よりも、より重力に負けそうになっているそのおっぱいには見覚えがある」

「えっ! 重力に負けそうなのが進行していますか?」

「オロオロすんな。冗談だよ。あたしの確かな眼力と記憶力によれば、以前会った時と全く変わりはないから」

「そ、そうですか」


 目の前の女神があたしの適当な言葉にホッとしている。

 何ヶ月も前の細かいことを覚えてるわけないじゃん。

 確かなのはトーク力だということに気付いてないようだ。

 ハハッ、面白いニヤニヤ。


「えーと確か、薄着の国のたわわ姫だったような……」

「そんな国はありません! 全然記憶力確かじゃないではないですか!」

「いいからいいから。用件は損害賠償を支払う用意ができたということだね?」

「何という確かな記憶力!」


 愉快なねーちゃんだなあ。

 夢の中でまで掛け合いが楽しめるとは、何とハッピーなことだろう。


「面白かったから、損害賠償は勘弁してやってもいい」

「本当ですか! ありがとうございます!」

「次に夢賃借金請求についてだけど」

「まさかの別枠!」


 実に愉快なねーちゃんだなあ。

 ラルフ君に似たタイプの気がする。


「とっとと本題に入ってもらおうか」

「誰のせいで本題に入れないと思ってるんですか!」

「こんなくだらないやり取りの間に、乙女の貴重な睡眠時間がどんどん削れてしまう」

「睡眠時間は削れないですよ。御心配なく」

「そーなの?」


 どういう仕組みなんだろうな?

 夢だから寝たままってシステム?

 たわわ姫が真面目な顔で話し出す。


「四ヶ月前にお会いした時、運命は川の流れのようなものだと話しましたが、記憶していらっしゃいますか?」

「うん、覚えてる」


 言うなれば水に過ぎない個々の小さき者が、川の流れたる運命に逆らうのは非常に難しいという説明だった。

 たわわ姫が続ける。


「ユーラシアさんの御活躍のおかげで、世界の運命の行く末が良い方向に流れつつあります」

「さすがのウルトラチャーミングビューティーだね。ちなみにだけど、あたしがいなかったらどうなる運命だったの?」

「かいつまんで申しますと、多大な犠牲の末にドーラは独立。威信を回復するためにカル帝国はソロモコに手を出し、泥沼の対魔王戦に突入します。海外植民地が次々に独立し、求心力を失った帝国はリリアルカシアロクサーヌ姫を皇帝に擁立します。が、領主貴族の離反も相次ぎ、帝国は現在の本土地域の三分の一ほどの規模に縮小。小国が世界の覇権を争う、戦乱の世に突入する予定でした」

「マジか。全くあたし好みの未来じゃないんだけど」


 そう聞くとドーラがほぼ無傷で独立したことって、重要なターニングポイントみたいに思えるな。

 あれ、たわわ姫嬉しそう。


「私の好みでもないんです。でもユーラシアさんがソロモコに介入し、カル帝国の対魔王戦争が回避されたことで、運命が人類の衰退へ向かうルートはほぼ消失したのです!」

「おめでとう、ミラクルシックスティーンユーラシアの面目躍如だね。賢いあたしは理解したよ。だから褒美をくれるということになったんでしょ?」

「えっ?」


 目が泳いでいますよ、たわわ姫。

 構わず要求するけれども。


「大きいおっぱいが欲しいです」

「今生ではムリです」

「があん、しょっく!」


 今生ではムリ言われたぞ?

 何を支えに生きていけばいいのやら。


「あの、気を落とさずに……」

「大体あたしが働くとたわわ姫がボーナスもらえるのに、実際に働いているあたしに報酬がないというのはどう考えても不公平だ。フェアな取り引きとは言えない」

「な、何だか悪魔の言い分に瓜二つですけれども」


 よく言われるな、それ。

 悪魔的とか。


「何か寄越せ!」

「し、しかし世界に直接干渉することは禁じられていますので……あっ、固有能力を一つ授けましょう!」

「えっ? いいの?」


 メッチャ意外な報酬キター!


「はい。これはギフトの範疇ですから、私の権限で可能です。目覚めると同時に固有能力が一つ、ランダムに発現いたします」

「ふーん、ありがとう。楽しみだなー」

「最後に『アトラスの冒険者』についてですけれども」

「うん、どうなるかな?」


 『アトラスの冒険者』は他所の世界の事業だから、たわわ姫の管轄にないということだった。

 たわわ姫は『アトラスの冒険者』をあんまりよく思っていないようだったが?


「数ヶ月以内の撤退が決定しました!」

「やっぱなくなっちゃうか」


 異世界の事情でも女神案件としても、『アトラスの冒険者』は廃止される運命のようだ。

 これは撤回できまい。

 ならば……。


「わかってるね? 『アトラスの冒険者』が急になくなると、こっちの世界の波乱要因だぞ? つまりたわわ姫にとってはボーナスカット要因だ」

「えっ? えっ?」


 慌てんな。

 あんた運命を把握してるんじゃないのかよ。

 いや、『アトラスの冒険者』は他所の組織だから、廃止の影響を読み切れないのかな?


「代替組織作るのにも時間かかるから、スムーズに移行することを考えて。たわわ姫の収入を守ることにも繋がるからね」

「わ、わかりました。失礼いたします」


 これでよし。

 ぐーすか。

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