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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1308話:必ずやるセレモニー

「やあ、ユーラシア君。いらっしゃい」

「こんにちはー」


 あ、ヴィルも行政府に帰ってきた。


「ヴィル再び参上ぬ!」

「よーし、ヴィルいい子!」


 ぎゅっとしてやる。

 プリンスルキウス何か言いたそうだね?


「そのセレモニーは必ずやるんだね」

「必ずやるんだぬ!」

「ヴィルにとっての報酬だからね」

「報酬だからだぬ!」


 ヴィルにとっていい感情を得ることは何より重要なこと。

 加えて『いい子』の固有能力は、ぎゅっとしてやるとパワーアップするからな。

 自己肯定感もあって最高の気分だろ。

 あたしもハグしたいからウィンウィンだ。


 オルムスさんが言う。


「昼食の用意ができましたからどうぞ」

「やたっ、いただきまーす!」


          ◇


「ごちそーさまっ! おいしかった!」


 昨日のお昼と同じものが出てくるかと心配してたけど杞憂だった。


「これ出前はアドルフが手配してるのかな?」

「ああ」

「やるなー。昨日と同じ料理だったら、アドルフの評価落とすところだった。ちゃんと考慮して違うお店から取り寄せてるのはポイント高い」

「そんなことで……」


 今日は小麦粉麺の上に何かのフライが乗っているものだった。

 サラダがセットになってる。

 このフライ、魚じゃないな。

 何だろ?


「……今までに食べたことのあるものだと、ザリガニに似てる」

「新メニューだ。海産のエビだそうだぞ」

「エビかー」


 エビって細長くて脚が多くてヒゲがひゅっと伸びてるやつだな。

 独特のぷりっとした食感と仄かに感じる甘みがイケる。

 待てよ? 脚の多いものって美味いのかしらん?


「パラキアスさん、ひょっとしてクモやムカデっておいしい?」

「毒がなければ美味いかもな」

「あー毒持ちがいるか」


 毒があるかもって言われるとさすがに食べる気になんないわ。

 あたしはゲテモノ食いのチャレンジャーじゃないわ。

 パラキアスさんが笑いながら言う。


「ソロモコの件が片付いたそうだな。経過を話してくれないか?」

「脅しのタネはペペさんから買った極大魔法だよ。飛空艇にぶつけて混乱させたやつ」

「魔道結界が張ってあると、魔法自体で破壊することはできないんだろう?」

「帝国の軍艦に魔道結界はなかったのかい?」

「結界はあったし、魔道士も乗船してたよ。でもあの魔法、海に落とすと津波が起きるんだ。魔道結界とか関係なしに艦隊が海の藻屑になっちゃう」

「津波……」


 皆が唖然とする。

 さもありなん。


「切り札があったのか。だから説得する自信があったんだな?」

「まあ」


 説得する自信は、ツェーザル中将が損得をわかってくれる人だと知っていたから、という理由の方が大きいが。


「津波なんてよく気付いたね?」

「あたしん家海が近いんだ。試し撃ちした時に津波で死にかけてさ」

「応用力がある」

「そお?」

「やられたらやり返せの精神は実にユーラシアらしい」


 ケガの功名だぞ?

 敵にやられたわけじゃないわ。

 変な褒められ方するとくすぐったいんだが。


「ドルゴス宮廷魔道士長がドーラに来た時、あの魔法を見せて津波のことも教えてあったの。もし艦隊に魔道士が乗ることあったら、その旨伝えてくれって。案の定魔道士も同乗してたから、津波の怖さもすぐ理解してくれたな」

「手回しがいいなあ」

「いいんだぬよ?」

「で、念のため住民を高いところに避難させて艦隊にも極大魔法を見せてから、使者として乗り込んで交渉」

「ハハッ。ツェーザル中将もピクニック気分の遠征だったろうに……」

「美少女精霊使いの接待でエンタメ気分が爆上がりだったねえ」


 本心だぞ?

 苦笑するところじゃない。

 パラキアスさんが聞いてくる。


「提督とは何を話してきた?」

「全部だよ。あたしが『アトラスの冒険者』のクエストでソロモコに関わってることから、ソロモコと魔王が繋がってるところまで」

「よく信じさせたな?」

「ソロモコ担当の悪魔フクちゃんも連れてったんだよ。いい働きしてくれた」

「まあひどい魔法を見せられれば、納得せざるを得なかったんだろうが」


 かもしれないけど、あくまであたしの中で『デトネートストライク』はエンタメ要素に過ぎないのだ。

 ソロモコから尊敬の感情を吸い上げることによって平和が保たれているという現実がある以上、帝国艦隊は何もせず引いてもらわないといけなかった。

 ツェーザル中将もそーゆー呼吸はすぐ飲み込んでくれた。

 葛藤もあったろうになあ。

 できる男はああでなくてはいけない。


 クリークさんが言う。


「誰が司令官であっても叩き返したんだろう?」

「魔王を怒らせないためには、ソロモコで戦争にならないことが重要だからね。トータルでどうかをわかってくれる司令官なら引いてくれたと思う」

「ツェーザル中将が気の毒だな」

「いや、高級魔宝玉を五つ渡してきたんだ。占領は不可能と判断したが、交渉で魔宝玉を獲得することに成功したってことにすれば、丸っきりムダ足ってこともないじゃん?」

「パーフェクトだ!」

「パーフェクトだぬ!」

「パーフェクトだったかー」


 中将みたいな人と誼を通じておけば、今後もいいことあるかもしれないしな。

 話のしやすい中将みたいな人が降格されたら、あたしが迷惑だし。

 オルムスさんが心配そうだ。


「高級魔宝玉を五つか」

「別に必要経費として請求するつもりはないから大丈夫だぞ?」


 そもそもソロモコはあたしのクエストだから。


「請求されても払えないよ! しかしよかったのかい?」

「五つもあげるつもりはなかったんだけど、中将の引き際が男らしかったからサービスしちゃった」

「ふむ……ソロモコについてはこれで全て終わりなのか? 後を引くことはない?」

「ないと思う」


 中将からソロモコは手出し無用の国である報告書が提出されるはずだ。

 理由を信じれば主席執政官の第二皇子も何もできないだろう。

 遠征反対の声も強くなるだろうし、よっぽどバカじゃなきゃソロモコに拘ることはない。

 転移の玉で帰還した時、クエスト完了のアナウンスがあったのも根拠の一つではある。


「さてと、あたし帰る。プリンス行くよー」

「ん? 何かあるのかい?」


 あ、パラキアスさんとオルムスさんはプリンス連れていくこと知らなかったか。


「フリードリヒ公爵のとこお邪魔するの。『娘を予に寄越すのだ』って言いに」

「言わないよ」

「言わないぬ!」


 笑い。

 転移の玉を起動し一旦帰宅する。

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