第1307話:婚約成立!
「ヴィル、聞こえる?」
ソロモコの件は片付いたので、帰宅後赤プレートに話しかける。
今朝ヴィルと連絡が取れなかったのだ。
何があったんだろ?
今までこんなこと一度もなかったから心配なのだ。
無事だといいが。
『聞こえるぬ! 感度良好だぬ!』
「よかった。今朝どうしたの? 通信繋がらなかったけど」
『ごめんなさいぬ。寝てたんだぬ。今起きたところだぬ』
「寝てた? あっ!」
さては!
「今、行政府にいるのかな?」
『そうだぬ。大使室だぬ』
「ビーコン置いてくれる? すぐそっち行くから」
『わかったぬ!』
◇
「ウルトラチャーミングビューティーユーラシア参上!」
「御主人!」
「よーし、ヴィルいい子!」
飛びついて来たヴィルをぎゅっとしてやる。
複雑な表情のプリンスルキウスクリークさんマックスさんアドルフの四人。
「今朝早く、ヴィルが倒れたんだよ。いきなりだった。何事かと心配したんだが」
「ヴィルはラブい感情とかお酒に酔ったいい気分とかを吸うと、酔っぱらって寝ちゃうんだよ。プリンスの側にいたからだと思うけど」
要するにプリンスのラブい感情が高まっているということだニヤニヤ。
昨日ヴィルの体温が上がってたことにもっと注意を払うべきだったな。
まあいい、ヴィルに何事もなくてよかった。
トラブルではあったが、ソロモコの情勢の撹乱要因にはなり得なかったし。
どんなラブがあったのか聞きたいところだが……。
「今日、ソロモコに帝国艦隊が来たんだ。本来ならフクちゃんからヴィルを通して連絡があるはずだったのに、なかったから変だなと思ってた」
ソロモコの報告が先だな。
メインディッシュは後にしたい気分ニヤニヤ。
「すまない。戦況に影響が出てしまったか?」
「いや、どうせ朝にデカい船並べるいつもの作戦だろってわかってたから」
恐縮するプリンスに代わってクリークさんが言う。
「ソロモコはどうなった?」
「ん? ツェーザル中将と話して、艦隊にはお帰りいただいたよ。特にどうってことはなかったな。予定通り過ぎてつまらんくらい」
「どうってことないのか。君は大物だな」
大物なんだよ。
いや、ここまでは予定外の展開になっちゃ困る場面なので、あたしも細心の注意を払ったわ。
ソロモコが征服され人魔大戦が引き起こされる、最大の危機は去った。
あたし偉い。
「そんなことより、ヴィルが倒れるほどプリンスのラブ度が上がってるのは何で? 世界の安定を崩しかねなかった重要情報を寄越せ!」
「君、ソロモコの戦況に影響なかったと言ってたじゃないか」
「失敗した。ラブい話題を先にすべきだったかー」
まあ行政府の皆さんはソロモコの方を先に聞きたかったろうから。
「正式にパウリーネと婚約の運びになったんだよ」
「プリンスおめでとう! これは新聞発表しちゃっていいのかな?」
「予は構わんが……」
「ヴィル、フリードリヒ公爵と連絡取ってくれる?」
「わかったぬ!」
ヴィルの姿が掻き消える。
「ヴィルが頻繁に手紙を仲立ちしてくれたおかげなんだ」
「うん、いい子だからね」
結果ラブい感情を吸い過ぎちゃったわけだが、まあいいだろ。
御祝儀みたいなもんだ。
『御主人、公爵だぬ!』
「ありがとう。代わってくれる?」
『はいだぬ!』
『やあ、ユーラシア君かい?』
「そうそう。今プリンスに婚約の話聞いたから。おめでとうございまーす」
『ハハッ、ありがとう。それよりソロモコの件はどうなってるかな? ボチボチだろう?』
『それより』言ってるけど、婚約の方が重要だろ。
「帝国艦隊がソロモコに来たの今朝だったんだ。でももう帰ったから大丈夫だよ」
『今日だったのか。影響はなさそうかい?』
「景気や商売にはないだろうけど、偉い人同士の角突き合いはわかんない」
『オーケー、十分だ』
「ところでプリンスルキウスとパウリーネさんの婚約に関しては、新聞発表しちゃっていいのかな?」
『もちろん構わないが』
プリンスからもフリードリヒさんからも許可が出た。
第一皇子の喪が明けたということもあるので、表向き婚約発表するのに悪くはないはず。
しかしこの婚約発表によって、フリードリヒさんが完全にプリンス派と見られることになるんじゃないかな。
それは構わんのかな?
「プリンスに代わるね」
「公爵、お久しゅう」
『ルキウス様。この度はありがとうございます。パウリーネも嫁き遅れるかと心配で』
「いやいや、何の何の。予にはもったいない御令嬢で、大変感謝しております」
「建前はどうでもいいけど」
「『どうでもいいって』」
そこは揃うのな。
気の合うことで。
「これ結婚式とか、あとの生活とかどうすんの? プリンスの在ドーラ大使の任期はかなり残ってるんでしょ?」
『その辺りの打ち合わせのために、ルキウス様一度こちらへいらしていただけませんか?』
チラッとこっちを見るプリンス。
あたしが送るのは別に構わないぞ?
「伺いましょう」
「じゃ、一時間後くらいに帝都の新聞記者とプリンス連れてパッフェルに行くね」
『ハハッ、了解だ。ではルキウス様、後ほど』
「ああ。楽しみにしているよ」
「ヴィル、ありがとう。今度帝都の新聞社行ってくれる? いつもの記者トリオの誰かを捕まえて欲しいの」
『わかったぬ!』
マックスさんが呆れたように言う。
「……つくづく重宝だな?」
「いい子でしょ。あたしのだからあげないぞ?」
皆苦笑してやがる。
『御主人! 新聞記者だぬ!』
「ありがとう。代わってくれる?」
『はいだぬ!』
『ゆ、ユーラシアさんですか? 驚きました……』
「これがヴィル通信だよ。記者さん達に連絡取りたい時、ヴィルを飛ばすからよろしくね。街中だと騒ぎになっちゃうから、社にいる時だけになると思うけど」
『わかりました。お待ちしています』
「スクープだよ。プリンスルキウスとアーベントロート公爵家のパウリーネ嬢が婚約!」
『えっ?』
「プリンスを連れてパッフェルの宮殿へ行くけど、記者さん達もついて来る?」
『もちろん行きます!』
「じゃ、一時間後に皇宮の近衛兵詰め所で待ち合わせね」
『わかりました!』
「ヴィル、ありがとう。こっちへ戻っておいで」
『わかったぬ!』
よーし、準備完了!
あ、パラキアスさんとオルムスさん来た。
お昼御飯の時間だからちょうどいいわ、とゆーレストランドーラ行政府の一コマ。




