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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1300話:商人さんにも情報のおすそ分け

「ごちそーさまっ! おいしかった!」


 行政府で昼御飯をいただいた。

 『ダヤン食堂』のお弁当に違いない。

 フライの仕上げがまよねえずでなくて柑橘果汁になっていた。

 確かにまよねえずと柑橘果汁のどっちがいいかと問われると、評価が割れそう。


「これ『ダヤン食堂』のフライだよね? 行政府が贔屓にしてるの?」


 アドルフが答える。


「うまいし出前を受けてくれるからな。しかし『ダヤン食堂』とわかるのか?」

「この前味がくどいって言う客がいるって、相談されたんだよ。お客にまよねえずと柑橘果汁を選ばせた方がいいって教えてあげたんだ。『ダヤン食堂』は揚げ方が特徴的だからわかりやすいね」

「あんたは食堂のメニューにまで関わっているのか?」

「食は大切だぞ? むしろあたしの本業だわ」


 うちの子達がコクコクしてるわ。

 あ、ヴィルがケスにくっついてる。

 ケスは偉い人と知り合いになれたしおいしいお昼も食べられたし、気分がいいんだろうな。

 ベンノさんが言う。


「まよねえずというのは、以前御馳走になった白いタレですな? あれはドーラに独特なもののようですが」

「まよねえずはおいしいし、応用が利くから広まって欲しいなあ。作り方は難しくないよ。今帝都の料理人さんがドーラに来てるから、近々帝国にも普及すると思うわ」


 イシュトバーンさんのところのスイーツ料理人のことだ。

 まよねえずも帝国に広まればいいんじゃないの?

 まよねえずの作り方の絵入りの本出してもいいかも。

 ポテトサラダと余る卵白の使い方のレシピをセットにして。


 ん? パラキアスさんがこっち見てる。

 ケスがいるけど突っ込んだ話をしてもいいかって?

 いいよ、そーゆー経験させるために連れてきてるんだから。


「リキニウス皇子についてだが」


 亡くなった第一王子の息子であるリキニウス殿下の件か。

 ベンノさんの船で諜報員が戻ってきたか、あるいは父ちゃんからの情報か。

 新たにわかったことがあったかな?


「次期皇帝として擁立という話は確かにあるらしい。しかしどうやらグレゴール公爵の独走だな。主席執政官ドミティウス皇子を摂政にという構想で、しかもそれを隠しもしないため、ドミティウス皇子も迷惑がっているということだ」


 なるほど、第二皇子にとっては迷惑なのか。

 摂政をもちかけられるのは現実的で、第二皇子としては自身が皇帝になれないなら乗っていい策と思える。

 しかし皇帝陛下が亡くなってもいない内から、大声で何を言ってるんだ。

 不謹慎なことに巻き込むなということなのだろう。

 第一皇子が立太子されていたわけじゃないから、その子リキニウス皇子を皇位継承順位的に擁立する根拠もない。

 第二皇子がまんま皇帝になる可能性の方がよっぽど高いんだし。


「放っといてよさそうだね」

「ユーラシアは何か聞いたか?」

「帝都裏町の情報屋に、グレゴール公爵はすっとこどっこいだって聞いた。何かと目立つ人だから、リキニウス皇子を皇帝にって話も盛り上がるかもしれないけど、ムリ筋だって」

「世論もムリと見ているか。しかしユーラシアはこの話、最初にフリードリヒ公爵から聞いたのだろう?」

「うん」

「高位貴族が満遍なく誘われていると思ったほうがいいな」


 幼帝だと都合の良い、欲深な高位貴族が支持する可能性があるということか。

 国を不安定にするようなことはやめとくれ。

 ドーラにもとばっちりが来るかもしれないじゃないか。


「面倒だなあ。あたしに都合のいい世の中にしたいのに、邪魔しないで欲しい」


 皆が苦笑する。

 本心だぞ?

 プリンスが言う。


「ソロモコ遠征についてはどうなってるかな?」

「明日艦隊が到着予定だよ。腕が鳴るねえ」

「住民がパニック起こさないだろうか?」

「デカい船が三隻来るけど、あたしとフクちゃんに任せとけって言ってあるから大丈夫。明日中に報告に来られると思う」

「ん? すぐ幕引きなのかい?」

「司令官のツェーザル中将も、ラグランドで蜂起があること知ってるんだよ。ソロモコで釘付けになることは本意じゃないんじゃないかな」

「ラグランドで蜂起?」


 ベンノさんは知らなかったか。

 商売に影響があるかな?

 せっかくドーラに来てくれる貴重な商人さんだから、情報は流しておこう。


「正確な日付はわかんないけど、今月の半ばに蜂起とだけ。『アトラスの冒険者』のクエスト関係の情報網に引っかかってきてるんだ。あたしラグランドには直接関わってないから、それ以上のことはわかんない」

「ユーラシアの情報源は正確です。御注意を」

「貴重な情報をありがとうございます」


 ベンノさんの表情が強張る。

 ラグランド方面でも商売してるんだろうか?

 考えてみりゃ貿易商ってリスクの大きい仕事だな。

 ベンノさんはプリンスの推しでもあるし、損して欲しくないが。

 不意にパラキアスさんが聞いてくる。


「ユーラシアは主席執政官とどんな話をしてるんだ?」

「世間話くらいだよ。どういうわけか次期皇帝談義になったことがあってさ。主席執政官殿下が転げ落ちるとプリンスルキウスが皇帝だよって言ったった」


 場に緊張が走る。


「……主席執政官は何と?」

「予は転げ落ちなどしないって」


 プリンスもオルムスさんもベンノさんも唖然としてるやん。

 一方でパラキアスさんは楽しげ。

 だってヴィルが寄ってったもん。


 あっ、第二皇子とあたしが何を話してるかの内容は、エンターテインメントに違いないと踏んだんだな?

 そしてある程度ベンノさんにも聞かせておけとゆーことか。

 悪いやつだから。


「面白い。主席執政官とはいつもそういった話をしてるのかい?」

「どういうわけか際どい話に誘導されちゃうんだよね。厄介事に巻き込まれるの嫌だから新聞記者連れてくんだけど、第二皇子は構わずグイグイ来るの」

「ドミティウス兄上は強引なところがあるから」

「あとで新聞記者に口止めしなきゃいけないから、却って面倒なんだよ」


 まー遠回しな言い方されるよりは楽か。


「うまく付き合ってるんだな?」

「そのつもり」

「ソロモコ後はどうする?」

「何とかする予定だけど、まだあたしにも見えてない部分が多いの」


 特にラグランドについてはサッパリ。

 帝国に嫌われちゃうとよろしくないから、フォローはしとかないと。


「今日は帰るね」

「バイバイぬ!」


 転移の玉を起動し帰宅する。

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