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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1299話:ベンノパンチ!

「美少女精霊使い参上!」

「御主人!」

「よーし、ヴィルいい子!」


 ケスとうちの子達を連れて行政府にやって来た。

 ヴィルをぎゅっとしてやる、が?


「あれ、ヴィル熱くない? カゼでも引いた?」

「大丈夫だぬよ?」


 実体を持たない悪魔はカゼ引かないか。

 どうした? 何かの状態異常かな?

 でも元気みたいだしな?


 クリークさんが笑う。


「ハハハ、働き過ぎかもしれない。かなり皇子とパウリーネ嬢の間を往復してるようだから」

「そーなん?」


 イタズラ見つかったみたいな顔をするプリンス。

 まーヴィルもラブい感情を適度に吸えて気持ちいいんだろう。

 プリンスが言う。


「そちらが?」

「カラーズ白の民ケスだよ。ケス、こっちから時計回りにアドルフ、マックスさん、クリークさん、大使のプリンスルキウス、貿易商ベンノさん、オルムス知事、パラキアスさんね」

「よろしくお願いします」


 頭を下げるケス。

 パラキアスさんも帰ってきてたか。


「ケスはこれから大したやつになる予定なんだ。よろしくね」


 ケスがちょっと面食らってるけど、あたしは本気だぞ?

 皆さんが頷いてくれる、優しい世界。

 ベンノさんが言う。


「『ケーニッヒバウム』のフーゴー殿に呼ばれましてな。鳳凰双眸珠の分け前だと一〇〇万ゴールドいただきまして」

「あっ、ごめんね。なるべくベンノさんを通して商売したかったんだけど、フーゴーさんがどうしてもすぐ鳳凰双眸珠欲しかったみたいで。ベンノさんとドーラ行政府分の儲けありなら売るよって話にしたんだ」

「いや、『ケーニッヒバウム』とのパイプが太くなるのはありがたいことです。フーゴー殿は魔宝玉の目玉というか、看板が欲しかったようですな。国宝級の魔宝玉が展示されているということで、連日大盛況のようですぞ」


 ……しまった。

 ドーラで魔宝玉博物館作って帝国からお客さん呼ぶのが、ちょっと難しくなっちゃったぞ?

 まあいい、魔宝玉なんてのはドーラのウリの一つに過ぎない。

 他にやりようはいくらでもある。

 ないのはお金、悲しいなあ。


「『ウォームプレート』『クールプレート』を一五〇枚ずつ計三〇〇枚、完成してまーす」

「はい、いただきます。確かに」


 代金を受け取る。


「施政館へ遊びに行った時お土産としてあげたら、封爵大臣さんがすげー喜んでくれたの。周りでも手に入れることのできた者は少ないって」

「『ウォームプレート』は富裕層で大評判ですぞ。正直もう少し数を生産してくれると助かるのですが」

「ごめん。本当に職人がいないの。これ以上はムリ」


 正確にはエルフに外注出せばもう少し数は揃う。

 でも支払いが魔宝玉になるから、大量に『ウォームプレート』買うと、向こうでものと魔宝玉の価値バランスが崩れそう。

 迷惑かけるようなことはできないのだ。


「残念ですなあ。来月以降も夏までは『ウォームプレート』『クールプレート』を一五〇枚ずつ計三〇〇枚でお願いします」

「ラジャーでーす」

「移民から職人になる人はいないのかい?」

「どーだろ? 今ドーラに来てる人は農民が多いじゃん? パワーカード製作は最低でも器用で本を読めないといけないから」

「難しいか」

「うん。今後はわからんけど」


 元辺境開拓民の移民連中、『スナイパー』の固有能力持ちチャーリー達がパワーカードに興味持ってるって話だった。

 販売が始まって人の目に触れる機会が増えてくると、職人になりたい人も増えてくるかもな。

 パラキアスさんが言う。


「新しい輸出用魔法の生産ラインが立ち上がるとのことだが」


 パラキアスさんは水魔法が異世界へ外注出してるの知ってるもんな。

 新たに外注出すわけじゃないよ。

 他に人のいるところでぶっちゃけらんないんで、言外から汲み取ってね。


「盾の魔法をドーラで新しく作ってもらうことにしたんだよ。今までの水魔法と場所違うところなんで、あたしかケスかに注文入れてもらいたいの」


 これで完全なドーラ内製ってことはパラキアスさんに伝わるだろ。

 注文はヨハンさんか輸送隊でもいいですよ。


「おいくらになりますかな?」

「三〇〇〇と言いたいところだけど、一本二七〇〇ゴールドでどうだろ?」


 ドーラで売る時の小売値が三〇〇〇ゴールドだから。


「ドーラ政府の輸出手数料含めて四〇〇〇ゴールドというところですか?」

「三七〇〇ゴールドでどうです?」

「いいですね。一〇〇本は製造可能と聞いております。早速一〇〇本注文しますよ」

「ありがたいけど、効果見てからの方がよくない?」


 アドルフが言う。


「港で『ファイアーボール』に撃たれたところを見せたのだ」

「へー。誰の『ファイアーボール』?」

「私だ」

「パラキアスさん? レベルカンスト者の『ファイアーボール』か。どうなった?」

「無傷だが、吹き飛んで海に落ちた」


 だろーね。

 面白イベントはあたしも見たかった。

 ベンノさんが興奮気味に語る。


「あれほどの威力の魔法に耐えるというのが信じがたいです。物理ダメージも無効なのでしょう?」

「うん。あたしが蹴り飛ばすと壁が壊れるから、ベンノさんが殴ってみるといいよ」


 レッツファイッ!


「ファストシールド!」

「ベンノパンチ!」


 おお、ベンノさんノリノリだ。

 しかし柔らかな何かに阻まれて、ベンノパンチはアドルフまで届かない。


「実に素晴らしい! 軍にも騎士にも一般にも、かなりの需要を見込めますよ」

「そお? さっきの一〇〇本っていうの、新しい生産ラインだから安全率見てるんだ。一〇〇〇本を上限に、可能な限り製造してくれって頼んでみようか?」

「おお、お願いしますぞ!」


 チラッとケスを見たら喜んでる。

 単価が高いからペペさんはもちろん、緑の民もアレクケスハヤテも輸送隊もかなり儲かるな。

 いいことだ。


「逆にこういう魔法作ってくれみたいな要望はないのかな? あたし達もラインナップ増やしたいんだけど、需要がわかんないんだよね」

「ふうむ、考えたことがなかったですな。アイデアを募っておきますぞ」

「お願いしまーす。制作が可能か可能じゃないかは、スキル作る人じゃないとわかんないけど」


 でもペペさんは常識で思いつくくらいのスキルは作ってくれる気がする。

 おかしい人だから。

 今日の用件は以上だな。

 オルムスさんと目が合う。


「昼食にいたしましょうか」

「やたっ! いただきまーす!」

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