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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1294話:チェック用の人員が欲しい

 ペペさんがアレクを褒める。


「アレク君ってまだ若いんでしょう?」

「ペペさんの三分の一くらいしか人生を歩んでないな」

「なのにもう、ケイオスワードを理解しているの? すごいのねえ」

「理解しているだけです。ボクじゃこんなに美しくスキルを組み立てることはできませんから」


 へー、スキルの組み立て方が芸術的なのか。

 あたしじゃ全くわからんことだった。

 アートでロマンでドリームってのは伊達じゃないんだな。

 そしてアレクがペペさんのアートを理解しているらしいことにはビックリ。

 さすがあたしの弟分。


「えーと、つまりこのケイオスワード文様さえあれば、金属版や刷り上がったもののチェックはアレクにもできるってことかな?」

「できるよ」

「だったらやはりチェックはアレクにやってもらって、ペペさんはアーティスティックな活動に専念したもらった方がいいな。ちなみにペペさんとアレク、デス爺、マルーさん以外でケイオスワード理解してる人って、ドーラでは誰がいる?」


 顔を見合わせるペペさんとアレク。


「いないんじゃないかしら? 私は心当たりがないけど」

「クララはある程度わかると思う」


 あたしもエルフの族長アビー以外に心当たりがない。

 いや、ひょっとすると呪術師グロちゃんには心得があるかもしれないな。

 でも量産に必須なことなのに、変人どもにしか理解できないって困るんだけど。

 変人か変人でないかはともかく、ペペさんデス爺マルーさんなんて、皆重要な仕事を持ってる人だ。

 ノーマル人が作業してるところにクララを貸せるわけないし、チェック用の人員が実質アレクしかいない。

 アレクだって暇じゃないしな?


「実に不安な状況だな。ケイオスワードを理解していて暇で即戦力になる人が今すぐ欲しい」

「姐さん、そんな人いるわけないぜ」

「帝国にだって、宮廷魔道士くらいしかケイオスワードを学ぶ機会はないと思うよ」

「うーん、と考えるとドーラは優秀なのかな? ちなみにペペさんやアレクは、どうやってケイオスワードを覚えたの?」

「たまたま子供の頃に魔道の本をもらって」

「お爺様と本からかな」

「本大事だなー。『サルでもわかるケイオスワード』って本書いてくれない?」

「ムリ」

「私はいいわよ」

「「「「「えっ?」」」」」


 あれ、クララが嬉しそうだ。

 読みたいのかな?


「本はね。アートだと思うの」

「ペペさんの本はアートだよねえ」

「ユーラシアちゃん、知ってるの?」

「ペペさん著の『世界樹とともに』持ってるんだ。紙屋のヘリオスさんにもらったの」

「ユー姉が読んだの?」

「あたしでも読めるくらい面白い本だったんだよ」


 ペペさんくらい常軌を逸した人になると、日常をただ書いてあるだけで面白い。

 ドラゴンを吹き飛ばす条など、実にアーティスティックだ。

 アートじゃなくてエンターテインメントだろうって?

 かもしれんけど、区別なんて些細な問題なんだわ。


「姐さん、続き進めようぜ」

「オーケー。じゃあアレク、スクロール紙に盾の魔法のケイオスワード文様を書き込んでくれる? 過不足なく効果が現れるなら、丁寧じゃなくてもいいから」

「わかった」


 さらさらと書き込むアレク。

 へー、随分とアバウトだな。

 何かペペさんの持ってきた文様とは随分違う気がするけど?


「できたよ」

「完璧よ」


 うむ、ペペさんの合格が出たからには問題ないのだろう。

 どの辺が完璧なのかサッパリだが。

 ケイオスワードって謎だな?


「で、これをさっきの作業台に持っていきまーす」

「もう作業台にも魔力が溜まっているでしょうからね」

「何でもないことのように見えるけど、この過程が大事だからね」


 紙に魔力を染み込ませないといけないんだよ。

 職人さん達が頷く。


「この台にちょっと置くだけでいいのかい?」

「広げて全体が台にくっついた状態になれば間違いないですよ。で、このままクルクルッと巻いて、より魔力緩衝量の大きい紙はあるかしら? 四辺一ツカくらいの小さな紙でいいのですけど」

「あります」


 アレクが紙の小片を渡す。

 世界樹の含有量が多いやつかな?

 ペペさんがちょちょいと何かを書く。


「封じるためのケイオスワード?」

「そお」

「アレクわかる?」

「わかる」

「アレクは優秀だなー。いい子いい子してやりたい」

「やめてよ。恐れ多すぎる」

「恐れ多いときたかー。否定できない」


 ペペさんが封じの紙で糊付けする。

 これで完成か。


「思ったより呆気ないな」

「スクロールに適した紙を用意するのがとにかく大変なのよ」

「テストしまーす! 盾の魔法『ファストシールド』を覚えたい人!」

「「「「「「「「はい!」」」」」」」」


 おお?

 職人さんも全員手挙げてるじゃねーか。

 盾の魔法まさかの大人気。


「そりゃあ魔法使いになれるとなればなあ」

「おう。憧れるわな」


 憧れるらしい。

 希望者皆でジャンケンだ。


「か、勝った!」

「おめでとう! あんたが一〇秒後の魔法使いだ。さあ、スクロールを開いてくれたまえ!」

「「「「「「「「パチパチパチパチ!」」」」」」」」


 勝者となったのは職人の一人だった。

 よかったね。

 スクロールの封を切ると魔力が立ち上る。

 うん、スクロールに書かれた文様も消えている。

 いいんじゃないかな。


「さて、じゃあ効果を確認してみようか。外行こう」


 ぞろぞろぞろ。

 うん、道は広いし、人も来てないから、テストするのにちょうどいいな。


「じゃ、魔法唱えてくれる?」

「おう! ファストシールド!」


 ドカッと蹴りを入れる。

 おー一〇ヒロくらいすっ飛んでった。

 ラルフ君が心配そうに話しかけてくる。


「し、師匠。やり過ぎじゃないですか?」

「え? これくらい全然大丈夫だぞ? 本来の盾の魔法の効果が発揮されてるなら」

「でもテストじゃないですか。本来の効果が出ないこともあり得るでしょう?」

「なくはないだろうけど、何のためにクララ連れてきてると思ってるのよ。世界一のヒーラーだぞ? 安心と信頼の蘇生魔法」

「話が通じない!」


 通じているというのに。

 おいこらアレクケスハヤテ頷くな。

 アレクとペペさんのダブルチェックを信用してるから大丈夫だとゆーのに。

 すっ飛んだ職人が起き上がる。


「何ともねえ!」

「よし、おめでとう! 大成功だ!」


 めでたしめでたし!

 当面の運営はアレクにお任せだ。

 しかしドーラの人材不足は深刻だなー。

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