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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1295話:目処は立った

「お魚は焼いてもおいしいのねえ!」

「でしょ? 獲れたてだからねえ。新鮮な魚は焼きがおいしいよ」


 緑の民の村から帰ってきた。

 アトムとダンテが大量に獲って来た魚を、クララが片っ端から三枚におろして順に焼いている。

 魚フライが普及してきたといっても、やはりまだ生や頭つきは抵抗があるだろうからな。

 おーおー、ケスなんかガツガツ食ってるじゃねーか。

 よほど気に入ったか。

 お肉とは違った美味さがあるよね。


「ユー姉、この辛いのは何?」

「これはワサビだよ。正確にはヤマワサビ。醤油とペアで使ってちょこっとつけるとメッチャイケるでしょ?」

「独特のピリッとした感じがいいね」

「これ生魚だとピッタリなんだよ。初めて食べた時、たっくさん塗りつけちゃってさ。鼻が取れるかとビックリした」


 ケスが言う。


「姐さん、ワサビもドーラで増やすのか?」

「気に入った? これも増やしたいね。いろんな味を楽しめるってのは、生活が豊かになった感じがするじゃん?」

「おいしいものは正義よね」

「そーだ、おいしいものは正義だ! でも後回しになるかな」

「何故?」


 不思議ですか?

 あたしも残念ではあるけど、優先順位ってもんがあるから。


「移民がどんどん来る今は、腹が膨れるもの作んなくちゃってのが一番大きい理由かな。醤油とセット以外のワサビの使い道が今んとこないから、醤油普及させるのが先ってこともある。またヤマワサビがちょっと育てる場所選ぶみたいなんだよね」


 涼しめで水の多いところがいいみたい。

 ただカカシやクララはさほど気にしてないようだから、育てるのが難しいってことはないんじゃないかな。

 ペペさんが残念そうだ。


「惜しいわねえ。醤油とワサビは焼いたお肉でもおいしいと思うの」

「……本当だ。うまそーな気がしてきた」


 今度試してみよ。

 ヤマワサビは醤油が普及した時に備えて、早めに広めておいた方がいいか?

 いや、大量移民に食べさせるノウハウのない初年度だもんな。

 今腹の膨れない作物を広げようとするのは、どう考えても勇み足だわ。

 カカシの手が遠くまで届くようになったから、うちで多めに育てておくことにするか。

 醤油作ってるサフランとピンクマンには話通しとこ。


「さて、あたしはごちそーさまだな」

「私も御馳走様。ねえ、ユーラシアちゃん、お魚はどうやって獲ったの?」

「雷魔法を海に撃ち込むと、感電して浮いてくるんだよ……デカい雷魔法なら大漁だとか考えちゃダメだぞ? 海の王国に怒られるから」


 決まり悪げな顔をするペペさん。

 まったく油断も隙もない。


「今後、空のスキルスクロールはユーラシアちゃんに注文すれば手に入るかしら?」

「そーだね。一般の商業ルートに乗せるような品じゃないからな。あたしが捕まんなければ、ギルドの依頼受付所に言っといてくれればいいからね」

「わかったあ。おいしかったわ。さようなら、またね」


 ペペさんが転移の玉を起動して去る。

 スキルスクロール量産化の目処は立った。

 これで紙作りなどとゆー職人に任せておけばいいものに、ペペさんの芸術的才能が消費されることはない。

 まずはめでたし。


「アレク、盾の魔法の注文は一ヶ月後納期で受けてもいいかな?」

「うん。初めの月はトラブルあるかもしれないから、一〇〇本までにしといてよ」

「オーケー。明日ケス借りるね」

「「「えっ?」」」


 意味がわかってないようなアレクケスハヤテ。

 あたしが先走り過ぎたか?


「今後あんた達三人が、ドーラのスキルスクロール生産を仕切ることになるじゃん?」

「そうなりそうだね」

「アレクが生産担当、これは動かせない。アレクしかケイオスワードことはわかんないんだから」

「うん」

「で、ハヤテは人間と交渉なんてムリだから、二人の補佐と連絡係って役どころになるでしょ?」


 頷く三人。


「となると自然にケスが営業担当になる」

「営業? 何すればいいんだ?」


 ケスが戸惑うのも当然っちゃ当然だが。


「スキルをひょいひょい作ってスクロールを大量生産して輸出するなんて、本来すげー難しいことなんだよ。何でもないような顔して新しいスキルを作るペペさんのあり得ない才能はひとまず置いとくとするよ? それ以外にも魔力緩衝量の大きい紙を簡単に作れて、かつ紙を魔力に浸せて作業できるような環境がないといけない」


 真剣そのものの三人。

 ペペさんがいたら、必死な男の子の顔はいいわーって思うんじゃないかな。


「ドーラだってどこでもスキルスクロール売ってるわけじゃないけど、帝国ではもっと厳格なんだよ。スキル使える人は国に登録しなきゃいけなくて、攻撃魔法のスクロールなんて御禁制品」

「そうなんだ?」

「とゆー帝国でスキルスクロールの大量生産なんて発想が出るわけない。ドーラの独壇場。ここまでいいかな?」


 頷く三人。


「これから言うことは内緒だぞ? 今ドーラからは月二〇〇〇本の水魔法スクロールを帝国に輸出してるんだ。これは同時に、ドーラのスキルスクロール生産量は月二〇〇〇本が限度だと帝国に思わせてる」

「……なるほど、スキルは軍事にも応用できるから、という配慮か」

「難しいだ」

「ユー姉、おかしいじゃないか。今までのドーラで月二〇〇〇本もスキルスクロールを作れるはずがない。どんなカラクリがあるの?」

「異世界に外注してるの」

「「「異世界?」」」


 アレクが何かに気付いたようだ。


「あっ! エルさんの世界へ?」

「うん。『アトラスの冒険者』運営元の世界へ。まーでもやれることはドーラでやりたいじゃん? 完全にドーラ内製にできた方が儲かるし」

「そのセリフはユーラシアさんらしいだ」


 アハハと笑い合い、ケスが言う。


「おいらの役割はどうなるんだ? 何をすればいい?」

「輸出が前提になる扱いの難しい戦略商品となると、ドーラ政府のお偉いさんと話ができなきゃどうにもなんないんだよね。明日行政府連れていくよ」

「……緊張するな」

「いや、明日は単なる顔合わせだよ」


 成人もしてないケスに最初から任せたりはしないって。

 今カラーズと行政府を商売上で結んでいるのは、あたしを除くとヨハンさんだけという現実がある。

 将来何があるかわからんから、行政府のお偉いさんとの顔馴染みは多い方がいいというだけのこと。


「ありがとう。ボク達は帰るよ」

「じゃーねー」

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