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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1283話:軽く情報収集

 セレシアさんの店で荷物を受け取る。


「結構量があるんだね」

「デザインと型布と両方なので、どうしても嵩張ってしまうんです」


 店頭でセレシアさんがすまながる。

 いや、この前の今日でよくこんなに揃えられたなってビックリしてるんだけど。

 セレシアさんのファッションに懸ける情熱すごい。


「ごめんなさい。今日はワタシついて行けないのだけれど」

「いいよいいよ。こっちは任せて。でも店を任せられる人材の育成は急務だよ」


 これはマジで。

 もーセレシアさんはデザイナーに専念してろ。


「ええ、わかっているのですけれども……」

「ディオ君に誰か寄越してもらうといいよ」

「えっ?」

「売り子の誰かを昇格させようとしてるのかもしれないけど、ここ忙し過ぎるから、ロクに教育もできないでしょ?」


 すぐに人材が育つはずもなく、流行る店だから人手も足りない。

 売り子は店のことをよく知ってるかもしれんけど、おゼゼに明るいわけではないだろうしな。

 カラーズから店を切り盛りできそうな人を呼んで、この店の現状を覚えてもらった方が早い。

 セレシアさんの負担も軽くなる。


「じゃーねー」

「お願いします!」


 転移の玉を起動し帰宅する。


          ◇


 帝都メルエルに飛び、荷を『ケーニッヒバウム』に預けたあと、ヴィルを肩車しながら通りを散歩する。

 マーク青年との待ち合わせまで時間があるのだ。

 たまにはこういうのもいいだろう。


「ヴィルはあたし達と会う前、帝都にはよく来てたの?」

「来てたぬよ」

「やっぱり人の多いところは負力を得やすいから?」

「そうだぬ」


 時々道行く人に微笑ましい目を向けられる。

 帽子被ってりゃ悪魔なんてわからないからな。


「住んではいなかったんだ?」

「ナワバリがあるからだぬ。メルエルには他の悪魔も多く住んでるんだぬ。顔を合わせるのは不快だぬ」

「なるほどなー」


 ヴィルは悪感情の嫌いないい子だから、マウントの取り合いみたいな悪魔の挨拶は耐え難いのだろう。

 うちの子になって本当に良かったね。


 細い路地を通って裏町へ。

 通り一本で全然雰囲気が違うのが、帝都の面白いところだな。

 活気のある裏町は、柄が悪いかもしれないけどあたしは好きだ。


「あっ、姐さん!」

「こんにちはー」

「こんにちはぬ!」


 イガ頭の取り巻きだ。

 確か初めて人間お手玉した時の片方の人。


「最近あちこちで人間お手玉披露をしてるんだ。あんたはあの技の栄えある第一号の犠牲者だから、自慢していいよ」

「勘弁してもらいてえ!」


 何故に?

 この上ない名誉だぞ?


「本日はどういった御用で?」

「情報屋ってどこに行けば会えるかな?」

「カラザさんでやすね? 案内いたしやすぜ。こちらへ」


 路地から路地へ。

 わかりにくいところだなあ。


「ここがカラザさんのねぐらですよ。もう帰ってるはずです」

「ありがとう」

「いえ、どういたしやして」


 入り口から足を踏み入れ、声をかける。


「こんにちはー」

「こんにちはぬ!」

「何だ、あんたかよ」


 もそもそと疲れた顔をして出てくる情報屋カラザ。

 どうした?


「あんた騎士様になったんだって? めでたいことじゃねえか」

「ありがと。でもくたびれた感全開で祝福されても、あんまり嬉しくない」

「ハハッ、すまねえな。タムポートへ行ってたんだ。今帰ってきて寝てたところなんだぜ」

「そーだったか。ごめんよ、これお土産。食べて元気出してよ」


 コブタ肉を渡す。


「たくさんあるから皆で分けてね」

「こりゃすまねえな」


 途端に機嫌の良くなるカラザ。

 ハハッ、現金だこと。


「港に停泊している軍艦三艦の緊張感が明らかに違う。出航間際だったぜ」

「それソロモコ行きの艦隊なんだ。今日出撃で、司令官はツェーザル中将」

「何だ、知ってたのかよ」


 ガッカリしなくてもいいってば。

 たまたまあたしの担当だから調べてるだけだよ。


「もう一つ教えてあげる。今月の半ば頃に、ラグランドで反帝国蜂起が起きるよ」

「マジか。ラグランド蜂起はいつ起きてもおかしくはねえが……。つまりはソロモコ遠征で本土の艦隊の陣容が薄くなるから決起するんだな?」

「いや、因果関係はわかんないけど」


 あたしもアリスに事実として聞いただけだしな。

 他に事情があるのかも。


「まー血なまぐさいことは置いといてさ。情報屋のあんたに聞きたいことがあるんだよ」

「何だい?」

「グレゴール公爵ってどんな人かな? 世間の評判とか人となりが知りたいの」

「ほう? あんたあちこちの貴族と人脈を築こうとしてるんだろ? グレゴール様には会ったことがねえんだな?」

「ないんだよ」

「あんたがグレゴール様について知りたい理由を教えてくれれば、情報料はタダでいいぜ」


 勘付いたらしい。

 さすが情報屋。

 嗅覚が鋭いな。


「多分カラザの思ってる通りだよ。公爵が自分の孫に当たるリキニウス殿下を、次期皇帝に推してくるかもって話がちょっと出たから」

「ハハッ、いかにもありそうな話だな」

「やっぱありそうなのかー」

「あんた、施政館に出入りしてるらしいじゃねえか。ヘルムート様の男爵叙勲にも影響あったらしいし、ドミティウス様派なのかい?」

「よく知ってるね。あたしはプリンスルキウスが皇帝になってくれるといいなと思ってる」

「ルキウス様派か。その辺はいずれゆっくり聞かせてもらうとして……」


 おかしそうな顔になるカラザ。


「グレゴール様は皇帝陛下と同い年で、双方の母親が姉妹の従兄弟同士なんだ。陛下と最も気安く話せる貴族だな」

「影響力も強い人なんだ?」

「いや、すっとこどっこいだからな。魔物退治にしゃしゃり出て腕を齧られたの、どこぞの婦人に何百通と恋文送って呆れられたのって逸話に事欠かない人さ。愛すべき愚人って評価に落ち着いてる。しかし公爵位を息子に譲らねえのは、リキニウス様をゴリ押す腹だったからかもしれねえな」


 なるほどな?


「何かと目立つ人だから、リキニウス様を皇帝にって話も盛り上がるかもしれねえよ? でもムリ筋だろ」


 ガレリウス第一皇子が立太子されていたという事実がなければ、グレゴール公爵の力だけでリキニウス殿下が擁立されることはないってことだな。

 メキスさんの見解と同じだ。


「うん、ありがとう。すっとこどっこいという評価が実に参考になった」

「ハハッ、またな」

「おやすみなさいぬ」


 カラザのねぐらを後にする。

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