第1284話:帝国艦隊について、ソロモコに伝える
フイィィーンシュパパパッ。
マーク青年を連れてソロモコにやって来た。
「ここがソロモコだよ」
「やあ。いいところですねえ」
「マジでいいところ。潮風に吹かれて頬張るお肉最高」
アハハと笑い合う。
青い空と風が心地いいんだよなー。
たまに来たい。
しょっちゅう来ればいいだろって?
いや、ソロモコは平和過ぎるとゆーか退屈とゆーか。
おいしいお肉が住んでるわけでもなし、あたしに合ってる場所ではないな。
「じゃ、お面被って」
あたしとうちの子達はこの前の木のお面だが、マーク青年は布製の頭からすぽっと被るやつを用意してきた。
昨晩連絡した時、心当たりあるって言ってたけどこーゆーことか。
表にはフクロウの絵が描いてあって、愛嬌がないと言えないこともない。
「キュートな図柄でしょう?」
「どこでこんなフクロウマスクを手に入れたんだと、小一時間問い詰めたいところではあるけれども」
「アハハ、住民は認めてくれるでしょうか?」
「顔が露出してると失礼らしいんだ。たとえこのあたしのキュートなフェイスであっても。顔隠れてるしフクロウの絵だから大丈夫でしょ」
むしろ住民の反応が楽しみ、まである。
「さて、行こうか」
丘を降って集落へ向かう途中で、向こうからやって来たのは……。
「フクちゃん、こんにちはー」
「お久しぶりですホー」
「彼は宮廷魔道士のマーク君だよ。悪魔の研究をしていて、フクちゃんにも会いたいってことだったから連れてきた」
「そうでしたか。よろしくですホー」
「こちらこそ」
フクちゃんは誰に対しても腰が低いんだろうか?
『ボクを崇めるんだホー』とは言うけど、威張ってるところは見たことないな?
もっとも悪魔らしいフクちゃんは似合わないけれども。
「今日はどうされるので?」
「注意喚起かな。三日後に帝国艦隊がソロモコに到着なんだ」
「三日後……決定ですか?」
「今日帝国艦隊はタムポートを出航してるよ。途中でトラブルがなければ来る」
「……」
「心配そうだね? 救世主たるあたしに任せなさい」
「お願いしますですホー」
フクちゃんは気がかりなのかもしれないけど、艦隊を追い払うことに関しては心配いらないんだぞ?
魔王がしゃしゃり出てくる可能性も消したから、あたしのペースで艦隊司令官ツェーザル中将と交渉できる。
後々のこと考えてどうすりゃ一番都合がいいのかなーってだけで。
「もう一つの用件はお肉パーティーだな。フクちゃんは食べる子なんだっけ?」
「食べないですホー」
「そーだったかー」
以前も食べてなかったしな。
モリモリ食べる悪魔にも会ってみたいもんだが。
あ、住民がいる。
「こんにちはー」
「「「うんばー」」」
「お肉持ってきたぞお!」
「「「おにくびみらー!」」」
◇
「あーお腹一杯だ。満足満足!」
「ハッハッハッ、ボクを崇めるんだホー!」
フクちゃん絶好調だなー。
よっぽどいい感情を吸えるんだろう。
フクちゃんを眺めながらマーク青年が聞いてくる。
「ちなみにこれは何の肉なんです?」
「興味はそっちかー。コブタマンっていう魔物の肉だよ。今朝狩ってきたんだ」
「へえ。おいしいものですね」
マーク青年は魔物肉でもビビんない人だったか。
そーいや元辺境開拓民って話だったな。
「ヴィルは呼ばないんですか?」
「ヴィル用のお面は作ってないんだよね。ヴィルとフクちゃんは仲がいいから、お面があれば呼べないことはないんだけど」
「ははあ、なるほど。悪魔同士の関係もいろいろあるんですね」
「性格の問題が大きいんじゃないかな。ヴィルは会うなり見下してくることがないから付き合いやすいって、フクちゃんは言ってた」
フクちゃんも話しやすい子だ。
悪魔と喋ってる気がしない。
「帝国艦隊が現れた時は、フクちゃんからヴィルを通してあたしに連絡が入ることになってるの」
「来る日がわかってて、かつ連絡が入るなら間違いないですね」
今回は三日後に来るってことがわかってる。
おそらくはレイノスを囲んだ時と同じように、艦隊は朝方にいきなり姿を現して威圧する戦法を取るだろうから、特に連絡なくても構わないけれども。
「どうでもいいんだけどさ。マーク君の被り物、案外好評みたい?」
住民達にチラチラ観察されている。
厭われてる雰囲気じゃないな。
「いや、これ暑いんですよ。ソロモコの気候には向いてなかったです。お面タイプの方がいいと思います」
「おおう、気がつかないことだったわ」
この暑いのにあんなの被ってっていう視線だったか。
「さてと。皆、お肉美味かったかーっ!」
「「「「「「「「おにくびみらー!」」」」」」」」
「皆さんに連絡があります。よく聞いててね」
「「「「「「「「ちぇけらー!」」」」」」」」
「三日後、カル帝国という国が大きな船三隻で攻めてきます」
「「「「「「「「!」」」」」」」」
動揺する人々。
「す、すごらしぷら?」
「そうそう、でっかい船。以前偵察に来てたでしょ? あれと同じタイプの軍艦ね」
「ど、どぐらまぐら?」
「すごらばとら?」
「いや、船には帰ってもらいます。そっちは救世主たるあたしと、神の使いたるフクちゃんが担当するよ。戦争には多分なりません。あなた達は特にすることないけど、念のため高いところ、丘の上なんかに避難しててね。わかったかな?」
「「「「「「「「うんばー!」」」」」」」」
よーし、これでいい。
ん? マーク青年どうした?
「丸っきりコモンズじゃないですか。通じてるんですか?」
「通じてるってばよ。皆明らかに安心してるでしょ?」
「そうですね……ソロモコの住民は、コモンズの素養が少しある?」
「どうだろ? ないと思うけど。片言でも共通語喋ってるの聞いたことないよ」
「どうして意思の疎通ができるんです?」
「人間だもの。気合でこっちの言いたいこと伝えて根性で向こうの言ってること理解すれば、コミュニケーションなんてものは何とかなる」
「ええ? おかしいですよ」
おかしくないとゆーのに。
フクちゃんやうちの子達までコクコクしてるけど。
「フクちゃん、助かったよ。やっぱ神の使いがいると説得力が違うわ」
「ボクは何もしてなかったと思いますけどホー」
でっかいフクロウが首かしげるとこ可愛いな。
「じゃ、三日後会おう」
「わかりましたですホー」
新しい転移の玉を起動し帰宅する。




