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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1280話:ナレーション風味

「サイナスさん、こんばんはー」

『ああ、こんばんは』


 夕食後に毎晩恒例のヴィル通信だ。


「昨日皇宮へ行った時に、一人の宮廷魔道士の青年と出会ったのでした」

『えっ? いつもとパターンが違うな』


 常に新しい芸風を模索しているからね。

 ドキドキしながら聞くといいよ。


「彼の名はマーク。冴えない男ですが、魔道士長さんにも期待されている有望株のようです」

『ふむ?』

「マークは美少女精霊使いと出会い、何という美しさだ、ボクもドーラに行ってみたいと望んだのでした」

『その辺から創作が入るわけだな?』

「何でわかっちゃうの?」

『初見の君の印象って、迫力があるとか生きがいいとかだろう。存在感が前に出過ぎていて、容姿の方に目が行かない』

「そーだったのかー。道理で最近初見で『化け物』って言われることが多くなったわけだ」


 一々訂正を要求するのが面倒なんだよな。

 おいこら、笑い過ぎだろ。


「宮廷魔道士マーク君が冴えない有望株ってのは文字通りなんだ。宮廷魔道士長さんにも見どころあるからどうぞよろしくって言われててさ」

『ふうん、まあ魔道士に見てくれは関係ないだろう。見かけによらない傑物ということだな?』

「傑物ってのは見るからにすごいやつのことだと思ってたわ。マーク君が傑物って言われると違和感があるなあ。ま、あたしもよろしく言われたから魔境連れてってレべリングしてきた」

『……それはよくわからないんだが』


 あたしもよくわからないところなんだが。


「宮廷魔道士長さんが、言外にレベリングしてくれって含みだったんだもん。レベルが上がってある魔法が実際に使えるのとまだ使えないのとでは、研究の進み具合が違うみたいなんだよね」

『魔道の研究にもレベルがあるといいってことか』

「宮廷魔道士長さんもレベルが高いことの利を実感したからじゃないかな。実際レベルがあって損することは特に思いつかない」


 食費がかかるくらいか。

 まー普通宮廷魔道士のレベリングの機会なんて、従軍して訓練か実戦の時くらいしかないだろう。

 実際にマーク青年のレベルも五くらいだった。


「サイナスさんもレベル上げしたくなったら、美少女精霊使いに申しつけるといいよ」

『全力で遠慮する』

「ここにも頭の固い人が。レベル上がると人生変わるよ」

『どうせまた飛行魔法を使おうとするんだろう?』

「えっ?」


 そこが拒否ポイントなのか。

 意外過ぎて次の言葉が咄嗟に出てこないわ。

 あたしとしたことが。


『君の美しさに魅せられたんじゃないとすると、マーク氏は何故ドーラに来たがったんだ?』

「話題変えられちゃったな。マーク君は悪魔の研究家でもあるんだよ。昨日もヴィルとバアルに会って大喜びしてたんだ。ウシ子に会わせてあげようかって言ったら来るって」

『ははあ、喜んでたか?』

「うん。塔の村行ったらパワーカードに興味持っちゃって、一通り欲しいって言ってたな。でも帝国は一般人の武器所持が禁止されてるじゃん?」

『ふむ?』

「宮廷魔道士は軍と作戦行動取ることもあるから、申請すれば武器を持てるんだそーな。今はまだ申請出してないってことだったけど、いずれお買い上げになると思う」

『魔道の研究家にとっては、面白い対象なのかもな』


 透明マントを開発したくらいだ。

 マーク君はかなり自由な発想を持ってるに違いない。

 奇抜なパワーカード作ってくれるとありがたいけど、職人っぽいことに興味はないかなあ?

 いや、マーク君は宮廷魔導士のお仕事やってくれる方が、あたしにとってありがたいか。


「明日はソロモコに連れていく予定なんだ」

『フクちゃんか?』

「そうそう。ソロモコの人達にも帝国艦隊が来るぞーって注意しとかないといけないし」

『仮面はどうするんだ?』

「仮面? あっ!」


 マーク青年の分のお面か。

 どーすべ?

 明日はお肉パーティーだから、うちの子達も連れていく。

 仮面を貸すことはできないな?


「ま、いーや。あとで考えよ」

『緩いなあ』

「そんなのはごまんとある長所の一つに過ぎないとゆーのに」

『長所にカウントするんだ?』

「当然じゃん。あたしには長所しかないんだから」


 アハハと笑い合う。


「マーク君、一級魔道士になるんだそーな」

『一級魔道士というのは偉いのかい?』

「あたしも帝国の魔道士の位階は知らんけど、儀式や祭典に呼ばれる機会がありそうってことだった」


 となると皇族とか貴族とかも出席してる場なんじゃないの?

 堅苦しいだろうなあ。

 でもおいしい料理が出るかもしれない。


「で、カッコいい杖が欲しいってことで注文もらったんだ」

『良かったじゃないか』

「いいんだけど、帝国本土に比べるとドーラの魔宝玉ってバカ安なんだよ。黄金皇珠の杖四万ゴールドで受けたんだけど、向こうでは黄金皇珠だけの価格が一〇万ゴールドなんだ。まさかの逆転価格」

『何だそれ?』

「まさにそれ」


 何もかもがおかしい。


『単に価格を上げたんじゃダメなのかい?』

「マーク君も買えなくなっちゃうんだよね。ドーラとしても杖職人としても四万ゴールドで儲かるんだから、注文がもらえないんじゃ意味がない」

『じゃあどうするんだ?』

「今回は特別に四万ゴールドで注文受けるじゃん? お値段は周りに秘密にしてもらって、代わりに向こうの魔道杖の相場を教えてもらおうと思うんだ。相場よりちょっと安いくらいで注文取れるといいかな」

『ハハッ。ぼろ儲けだな?』

「うーん、ドーラ政府や貿易商にも利益を分配しないといけないから」

『商人を甘やかし過ぎじゃないか?』

「ドーラ貿易の規模が大きいんだったら甘いよ? けど今はこっちに船が来てくれるだけでありがたいんだよね。貿易商は優遇しないと」


 商売は面白いけど難しい。

 もっとも一品物の杖の注文なんかたくさん入るわきゃないか。


『青の民ディオゲネス族長代理から連絡があったぞ。セレシア族長の服飾デザインが完成したから連絡求む。それと注文の旗ができ上がったそうだ』

「最初に言ってくれればいいのに」

『君がいきなり語りだしたんだぞ?』

「あたしが有罪だったかー」


 明日早めに取りに行くか。


「サイナスさん、おやすみなさい」

『ああ、おやすみ』

「ヴィル、ありがとう。マーク君と連絡取れるかな?」

『大丈夫ぬよ。行ってくるぬ!』


 明日は肉狩り、次いでカラーズか。

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