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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1278話:ウシ子という悪魔を理解する

 フイィィーンシュパパパッ。


「じゃーん! ここが塔の村だよ。皇女リリーが冒険者活動してるんだ」

「リリー様が? へえ」


 マーク青年を連れて塔の村に来た。

 ハハッ、キョロキョロしとるわ。

 辺境開拓民集落出身とはいえ、冒険者で活気づく光景は珍しいのかもしれない。


「リリー様はおられませんね」

「気になるのはそっちだったか。リリーは昼頃起きて塔に入るパターンだから、まだ塔の中だろうな。リリーに興味があるの?」

「リリー様は憧れですよ。やはり」


 帝国でのリリー人気はガチだな。

 ……エルのパーティーが早めに帰ってきていれば会えるかもと思ったが、まだ戻っていないようだ。


 異世界から追手がかかっていることに関して注意しておくべきか、少し迷ってはいる。

 今の段階で切羽詰まってはいない。

 そして追手の赤眼天使と再び会えているわけではないから、エルの心配事を増やすべきではない気がする。

 一方で向こうの世界について、エルの知る情報も仕入れておきたいという気持ちもあるのだ。

 まあ急ぎじゃないからいいか。


「マーク君は『永久鉱山』って知ってる?」

「魔力条件が特殊で内部リソースが補充されるという、仮想的な存在ですよね? 一説によると魔力大循環における放出場であると考えられている」

「さすが宮廷魔道士だなあ。あのデカい塔は『永久鉱山』なんだよ」

「えっ? 『永久鉱山』が実在しているとは知りませんでしたが」

「実在しているんだよ。しかも魔力条件が特殊ってのは、ノーマル人がドーラに来る以前に、既に亜人に知られていてさ。ここは元々ドワーフの集落だったんだって」

「面白いですね。言われてみれば……」


 塔自体がドワーフの石工技術の産物であることに気付いたんだろう。

 こんなバカデカい塔を作っちゃうドワーフってすごい。


「あたしも詳しくは知らないんだけど、昔ドワーフとエルフの間でゴタゴタがあって、ドワーフが引く形でこの地を去ったんだそーな。ノーマル人の村として成立したのはほんの半年前なんだ」

「半年でこの賑わいですか」

「うん。素材の需要はなくならないだろうから、塔の村を中心とする経済圏を作りたいんだよね。今のあたしの夢かな」

「塔から素材その他を回収してくるのが冒険者の役割、ということですね?」

「そゆこと。魔物も多くて『永久鉱山』だから倒しても倒しても魔物は湧くんだけどさ。低い階層は弱い魔物、高い階層になるほど強い魔物が出るって決まってるから、経験の浅い冒険者でも働きやすいの」

「よくできてますねえ」


 仕組みを知ってさえいればよくできてるなあ、と思う。

 デス爺が『永久鉱山』の塔に狙いを定めて開発しようとした理由もよくわかるわ。


 さて、塔の村についてはともかく。


「塔の最上階にウシ子がいるんだ。会いに行こうか」

「ザガムムは魔王バビロンの配下なんですよね? 何故ドーラの端っこに? 『永久鉱山』に関する何らかの思惑を持つ、魔王の指示だったりしますか?」

「いや、全然違うんだよ。悪魔って基本的に自分勝手じゃん?」

「はい」


 ウシ子は魔王配下ではあるけれども、自己都合を優先してあまり魔王の言うことを聞かない子であることを説明。


「ははあ、我が儘なんですね?」

「まあ。でもあたしの言うことは聞いてくれるからいいんだ」

「魔王の言うことさえ聞かない悪魔に、どうやって言うこと聞かせるんです?」

「ウソ吐いたら世界中にウシ子は約束も守れない最低の悪魔だって言いふらすぞーって、脅してあるの」

「な、なるほど」


 脅すのは最終手段だよ。

 あたしと付き合ってるといいことあると思ってもらうのが一番いいのだ。

 魔王にもウシ子を塔の村で預かることを承知させてあるし、まず今の状態は安定していると言っていい。


「じゃ、行こうか」


 三一階へ。


          ◇


「ウシ子、こんにちはー」

「あら、あなた。いらっしゃい」

「これお土産」


 黄珠を一つ渡す。


「ありがとうなのん!」

「こちらは帝都メルエルの宮廷魔道士マーク君だよ。悪魔の研究家で、ウシ子に会いたいみたいだから連れてきた」

「そうなのん? よろしくねん」

「こちらこそ」


 ふむ、マーク青年は少し緊張しているようだが、ウシ子をよく観察したいみたい。

 適当に話をしててくれって?

 了解。


「魔王の方は話まとまったぞ。ウシ子は塔の村で冒険者のサポートしてるから、召集に応じないの勘弁してって言ってあるからね」

「ありがとうなのん! ところで魔王様の御用は何だったのん?」

「魔王島にブラックデモンズドラゴン五体出たから、皆で倒すぞってやつだった」

「ぶ、ブラックデモンズドラゴン五体?」

「ビックリの展開だよねえ。ウシ子参加しててもしなくても一緒だったわ。結局魔王とうちのパーティーとソル君のパーティーで倒したから」


 装備とレベルの半端な子じゃ、たとえ高位魔族だとしても死んじゃう可能性はあった。

 ウシ子くらいのレベルがあるなら、ガードに徹すれば大丈夫だったろうけど。

 冒険者活動で結構装備も揃えてるみたいだしな。


「冒険者活動の方はどう?」

「順調なのん。今、踊る人形をメインターゲットにしてるのん。一番確実に稼げるのん」

「とゆーことは、『経穴砕き』のスクロールは買ったのか。やるね」

「えへへ。ありがとうなのん」


 マーク青年が僅かに頷いている。

 悪魔は褒められたり認められたりするの好きだぞ?

 ただあたしのレベルあってのことかもしれない。


「今はアドバイスを聞きながら、パワーカードを揃えることを優先してるのん」

「いいじゃんいいじゃん。今持ってるカードは?」

「『スラッシュ』『スナイプ』『ホワイトベーシック』『武神の守護』の四枚なのん」


 うむ、基本的な構成だ。

 『ホワイトベーシック』に付属の白魔法『ヒール』『キュア』はスクロールから覚えた方がパワーカードの装備枠を空けられるかもしれないが、ウシ子は悪魔だから闇魔法使いでもある。

 『ホワイトベーシック』の魔法力増強はプラスだ。


「今んとこ問題なさそうだけど、狙う魔物が変わったら誰かに相談するんだよ? 状態異常みたいな嫌らしい攻撃してくるやつもいるからね」

「わかったのん」

「じゃあ、あたし達は帰るね」

「さようならなのん」


 マーク青年はウシ子という悪魔を理解できたろうか?

 脱出魔法陣から外へ。

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