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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1277話:大杖の注文

「リフレッシュ! ちょっとこれ触ってくれる?」


 ザコ達の後二体目のデカダンスを倒したところで、マーク青年にギルドカードを触らせる。


「レベル三二か。こんなもんだろ」

「本当に何もお返しできないんですけど」

「わかってるとゆーのに」


 大体マーク君の依頼でレベル上げしてるわけじゃないだろーが。

 こんなんでおゼゼ取ったら押し売りになってしまうわ。

 申し訳ないと思うなら、将来偉くなってちょうだい。

 有力者との人脈はあたしの財産なのだ。


「最近ドルゴス魔道士長が手に入れた大杖は、ドーラの職人が製作したものと聞いたのですが」

「おっ、魔道士長さんに聞いた? 燿竜珠の杖を作ってって注文を受けたんだ」

「惚れ惚れするような出来栄えでした」

「マーク君も注文してくれればいいよ」


 笑って首を振るマーク青年。


「いやあ、とてもあれほどの逸品には手が出ませんよ」

「おゼゼ的な面でかな? 宮廷魔道士の給料がいくらだか知らないけど、結構もらってるでしょ? あの杖は二万ゴールドだから、さほど贅沢とゆーわけでもないと思うけど」


 驚くマーク青年。


「えっ? 二〇万ゴールドの間違いではなく?」

「ドーラは魔宝玉の価格が安いじゃん? こっちで手に入れられる材料の杖だったら、格安で作れる可能性は高いよ。魔道士長さんの杖は職人が趣味で作ってたやつをそのまま納品したから、特に安くなったっていう事情はある」

「考えられない値段だ……。いや、羨ましいです」

「でも値段については内緒にしといてね。帝国の杖職人とケンカしたいわけじゃないんだよ。将来はもっと高い値段にするつもりなんだ。まだ件の杖職人の名が帝国で知られてないから、サービスで安くするってことにしといて」


 そーゆー方便なら構わんだろ。


「わかりました。いや、ボクも一級魔道士に昇進することになりそうなんです。となると儀式や祭典に呼ばれる機会がありそうなので……」

「早く言いなよ。人間押し出しは大事だぞ? 今から杖職人のところへ行こう」


 特にマーク青年は見かけが頼りないんだから、杖くらい立派なやつ持っとけ。


          ◇


 フイィィーンシュパパパッ。


「おーい、ナバルのおっちゃんいる?」


 片眼鏡の杖職人が顔を出す。


「おお、超絶美少女精霊使いではないか。遊びに来てくれたのか?」

「注文になるかもしれない。お客さん候補連れてきたんだ」

「ほう、ありがたい。入ってくれ」

「これお土産だよ」

「お土産だぬ!」


 冷凍コブタ肉を渡し、工房の中に入れてもらう。

 ここ広いんだけど、今は世界樹をたくさん運び込んであるからゴチャゴチャしてるな。


「そちらがお客かな?」

「うん。宮廷魔道士のマーク君」

「初めまして」

「この前の魔道士長さんに納めた燿竜珠の杖あったじゃん? 惚れ惚れするような出来栄えだったから、話が聞きたいみたいだよ」

「おお、そうか! 見どころのある青年ではないか!」


 片眼鏡大喜び。


「この杖は? 量産品のようですが」

「『アクアクリエイト』っていう、飲み水を出せる魔法を組み込んだ杖なんだ。帝国への輸出用に作ってもらってるの」

「『アクアクリエイト』? 知らない魔法です」

「ドーラの天才魔道士が、生活に役立つ魔法っていうコンセプトで組み立てたんだよ」

「生活に役立つ魔法ですか。素晴らしい考え方ですね」


 水魔法杖を確かめるように弄り回すマーク青年。


「……すごく手に馴染みます。材質は何ですか」

「世界樹だ」

「せ、世界樹?」


 世界樹とだけ聞くと驚くのかもしれないけど。

 ただのリサイクル品なのだ。


「五ヶ月くらい前かな。さっきの『アクアクリエイト』を作った魔道士が、世界樹を根元から折っちゃったとゆー事件があったんだ。折れた世界樹をそのままにしとくのももったいないから、有効利用してるの」

「世界樹を折っちゃったって、魔力漏出で予想もつかない事態になるでしょう?」

「予想もできないラッキーなことがあったねえ。人形系レア魔物大発生でメチャクチャ儲かった!」

「ええ……?」


 ドン引きのマーク青年。

 片眼鏡が笑う。


「ハハッ、まあ超絶美少女精霊使いの楽しみを邪魔しないようにしようじゃないか。それにしても……」


 マーク青年を興味深げに見つめる片眼鏡。

 おお、職人らしい目だな。


「世界樹はトネリコの変種だという。トネリコは高級品質ではあるが、魔道士が常用するには難しい樹種だ。しかし手に馴染むとなると、君には合っているのだろう」

「マーク君は水魔法使いだそうだから、その辺関係あるかもね」

「で、どうする? 注文していくかね?」


 マーク青年がおずおずと切り出す。


「……ちなみに魔力集中部のジュエルに黄金皇珠を用いた、ボクの背の高さくらいの大杖だとおいくらになりますか?」


 片眼鏡のおっちゃんと視線が合う。


「黄金皇珠は二万ゴールドで売るけど」

「ならば杖全体の価格で四万ゴールドだな」

「四万ゴールド? ぜひお願いします……冗談じゃないんですよね?」


 ポカンとしている片眼鏡に説明する。


「帝国本土だと物価高いじゃん? 黄金皇珠の小売価格が、『ケーニッヒバウム』っていう大きな店で一〇万ゴールドだった」

「帝国の魔宝玉相場は知らなかったな」


 魔宝玉単品で一〇万ゴールドのものが、大杖に加工されて四万ゴールドなんておかし過ぎる。

 まあ大変! 驚きのドーラプライスですねってことだ。


「価格バランスが崩壊しててまことによろしくないな。マーク君、今回は四万ゴールドでいいけど、やっぱ他の人には値段秘密にしといてくれる?」

「わ、わかりました」

「超絶美少女精霊使いよ。今後どうするのだ?」

「帝国からオーダーメイドの注文が多くなるようだったら、向こうより少し安いくらいの金額に調整しよう。相場がわからんから、マーク君今日の分のサービスの代わりに協力してよ」

「了解です」


 本来ならドーラ政府や貿易商にも利益を分配すべきだしな。

 今回は販路拡大の必要経費として勘弁してもらお。


「じゃ、おっちゃんよろしく。これ黄金皇珠だよ」

「うむ、水の杖を納めるノルマもあるのでな。完成まで半月もらおうか」

「マーク君、納品は半月後でいいかな?」

「もちろんです。お願いします」

「さて、用は終わりだ。おっちゃんまたね」

「バイバイぬ!」


 転移の玉を起動し一旦帰宅する。

 次は塔の村のウシ子に会いに。

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