第1265話:ひとえにあたしのおかげです
フイィィーンシュパパパッ。
ギルドにやって来た。
「ポロックさんがいない。とゆーことは五時過ぎちゃってるか」
買い取り屋さんも帰っちゃってるか。
不用品の売却はまた今度だな。
「急ぎやしょうぜ。皆待ってるでやしょう?」
「まあ主役は遅れて登場するものだから」
「トゥデイはボス、主役じゃないね」
「そーいえばそうだった」
ソロでアイスドラゴンを倒したエルマを祝福してやらねば。
マジでエルマはすごい。
そのお姉さまのあたしもすごいってことだな。
食堂へ。
「こんばんはー」
「御主人!」
ヴィルが飛びついてくる。
よしよし、いい子だね。
「お姉さま」
「うん、エルマ、おめでとう」
「お姉さまがいなかったらわたし……」
「泣かない泣かない。今日は宴だぞー!」
エルマの御家族にオニオンさんとおっぱいさん、マウ爺、ダン、ピンクマンとサフラン、ソル君パーティー、キーンさんヤリスさんのお兄さんズ、何故かジーク君のパーティーもいるな。
エルマと親しいであろう面々が大体揃ってる。
ラルフ君には連絡つかなかったか。
ダンが言う。
「ユーラシア、乾杯の音頭取れよ」
任せろ。
右手にハーブティーを掲げる。
「本日我が妹分エルマがソロでアイスドラゴンを倒すことに成功、栄えあるドラゴンスレイヤーとなりました。これもひとえにあたしのおかげです」
皆笑ってるけど、エルマはコクコクしてるぞ?
「ドラゴンスレイヤーエルマの偉業を祝い、今後の活躍を祈ってかんぱーい!」
「「「「「「「「かんぱーい!」」」」」」」」
いやーいい雰囲気だ。
大将にワイバーンの卵を提供し、フワフワ卵焼きを注文する。
エルマパパことパウルさんが話しかけてくる。
「本当にありがとうございました。あのエルマが、これほど活発な子になるなんて」
「エルマにやる気があったからだよ」
ピンクマンが頷く。
あえて才能とは言わない。
エルマが『大器晩成』という強力な固有能力持ちなのは事実だが、それだけじゃ初期に脱落したのはまず間違いない。
「でもエルマは今後も冒険者メインじゃなくて、パワーカード職人にウェイトを置くんでしょ?」
「もちろんです。冒険者活動は素材の回収くらいになると思います」
うんうん、エルマは危ないことしなくていい。
御家族もホッとしとるわ。
「パワーカード装備者はドラゴンスレイヤーの近道ですかっ?」
「あんたはがっついてくるなあ。近道だと思うよ」
ジーク君パーティーのレノアだ。
相変わらず勢いがあるとゆーか、最短距離を歩もうとするなあ。
ジーク君が言う。
「歩みが鈍いヨゥ」
「あれ、レノアを抑える立場のジーク君が鈍いなんて言ってるのか。それでいいんだよぅ」
見たとこちゃんとレベル上がってるじゃないか。
全然心配いらん。
焦る必要ないわ。
「あんた達のパーティーはチトー君の『長者』で儲けて『吝嗇』レノアの火力で仕留めるパターンじゃないか。時間はかかるって」
「今はチトーの攻撃力頼みなんだヨゥ」
「まだまだということじゃ」
「マウさんの言う通りだよ。最終的にチトー君は盾役だぞ? ジーク君のスキルも充実させないと事故が多くなりそうじゃん。今はお金儲け優先だよ」
レノアの持つ固有能力『吝嗇』は、財産があるほどパラメーター補正が大きくなる。
ジーク君のパーティーは最終的にメッチャ高い火力を誇るだろうが、仕上がるまでの道のりは遠いだろ。
理由は違うけど、エルマの『大器晩成』と似た悩みがある。
チトー君が申し訳なさそうに言う。
「オレの実家の方で困ったことが起きまして……」
「あれ? 全然予想してなかった横撃だな。それはチトー君の芸なん?」
「芸じゃないヨゥ。サクラさんに依頼を出そうとしたら、精霊使いに相談してみろって言われたんだヨゥ」
じゃ依頼にはまだなってないってことか。
何だろ?
おっぱいさんが振ってくれたなら面白いことかもしれない。
「わかった。明後日時間あるけど、朝依頼受付所で待ち合わせだとどうかな?」
「ちょうどいいヨゥ」
「ちょうどいいですね。ありがとうございます」
ちょうどいいらしい。
何だかよくわからんが。
「ゆっくりしてる内に追い抜かれてしまったよ」
「いえいえ、わたしなんか……」
お兄さんズの言いようにエルマが恐縮している。
「お兄さん達は、ドラゴン倒す実力はとっくにあるんだよ。慎重になってるだけ」
「そうなのですね?」
「うん。実力者だし」
お兄さんズが苦笑している。
「俺も実力者だぜ?」
「ダンもレベルはエルマより高いじゃん」
ダンは持ちスキル的に一人でドラゴン倒すのは難しめだ。
でも人形系を倒せる剣を持ってるから、パーティーを育てることにそう苦労しないはず。
その気になればすぐドラゴンなんか倒せると思う。
面倒だからやんないだけだろ。
「帝国で甘くて大粒のイチゴの品種の株をもらったの。今カカシの管理下で栽培の研究中だよ。増やしたらあげるから、『オーランファーム』でも育ててよ」
「おう、すまねえな」
「いいんだよ。しょっちゅう奢ってくれる人にはサービスしないといけないからね」
ドーラにもキイチゴはあるが、栽培してるって話は聞かないな。
『パウリーネ』はどういうものだろ?
初夏には実がなるらしいから楽しみだ。
「ユーラシアさん。昨日はありがとうございました」
「いや、こっちこそ。魔王に会えたから仕事がやりやすくなったよ」
ソル君パーティーだ。
あ、ヴィルがアンセリに挟まれてなでなでされてる。
「魔王クエストは完了になったのかな?」
「そうですね。昨日完了で、今日も魔王島行ってましたけど」
「ソル君はアフターサービスが手厚いなあ。特に問題はなく?」
「はい。世界樹がもう根付いてるようで、魔王も驚いてましたよ。……ユーラシアさんのクエストの方はどうです?」
言葉を濁しているがソロモコの件だろう。
「特に問題はないよ。どうしたらドラマチックに幕引きできるか考えてるとこ」
「ユーラシアさんはいつも楽しそうですねえ」
「楽しいんだぬ!」
よしよし、ヴィルいい子。
見渡してみるとオニオンさんおっぱいさんはもとより、ピンクマンサフランも順調にラブラブのようだ。
いいことだ。
「あっ、フワフワ卵焼き来たっ! 今日のメインイベントだ!」
「イベントのメインじゃねえ!」
笑いに包まれ夜が更けてゆく。




