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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1258話:地元民の話を聞く

「こんにちはー」


 早速一人ガータンの村人を発見したぞ。

 朝からお仕事御苦労様です。

 不審げにジロジロこちらを見る農夫の男。

 いやん。

 ガータンでは美少女は珍しいのかしらん?


「ああ? 何だお前達は。この辺のもんじゃねえな?」

「新しい領主が決まって赴任したの知ってる? こちらは新男爵の弟のパスカル君だよ。あたしはユーラシア、こっちは悪魔のヴィルだよ」

「おお、そうだったか。しかし悪魔?」

「よろしくお願いしますぬ!」

「ああ、よろしくな。悪魔って可愛いじゃねえか」

「可愛いぬよ?」


 ガータンの人達って、あんま悪魔に抵抗ないのかな?

 目尻下がってるじゃん。


「綺麗な畑だね。何か硬い石が多くて畑を耕しにくいって聞いたんだけど」

「そりゃ山側の話だな。今ある畑はいいんだが、新たに開墾しようと思うと難しいんだ。耕地がなかなか広がらねえ」

「そーかー」


 風に波打つ緑が美しい。


「麦だね。大麦かな? 穂が出始めてるやつもあるじゃん」

「ああ、大麦の収穫の早い品種だ。今年は出来がよさそうだ……っと」


 急に口をつぐみ、こちらの様子を窺う男。


「心配しなくたっていいよ。出来がいいからって税率上げたりしないから」

「そ、そうかい?」


 安心した様子になる男。

 こらパスカル君、間抜け面晒すんじゃないよ。

 領主の一族なんだから勉強しとけ。


「やっぱり税は心配だった?」

「新領主が来ると決まると、一番気になる点だな。何かしら変化はあるだろ。悪い方に変わっちゃかなわねえ」

「だよねえ。前のババドーン男爵はいい領主だったの?」

「ババドーン様は帝都の役人だったんだろう? ガータンにはほとんど顔を見せたことなかったな。ほぼ領宰のベンジャミン様が取り仕切っていた」

「ベンジャミン・ホープさんか。名前は知ってる」


 フィフィの執事が作ってくれた旧臣リストのトップにあった名前だ。

 ぐりぐり丸印がつけてあったほどの重要人物。

 あーんどやっぱり元男爵やフィフィは帝都住みであったことが判明。


「どんな人?」

「立派な人だぜ。ガータンが標準税率で何とかやっていけたのは、全てあの人のおかげだ。皆が感謝している」

「ベンジャミンさんより前は税率が高かったんだ?」

「高いことが多かったな。もっとも短期の領主が多かったが」


 ははあ、それなら感謝されるわな。


「もうちょっと詳しいこと教えてよ」

「ベンジャミン様についてか? 五〇歳過ぎくらいの眼鏡をかけた方だぜ。元は帝都メルエルの学者と聞いた。ババドーン様からガータン経営の全権を委任されていたんだ。農業は専門じゃないって話だが、ウルシ栽培を奨励したのはベンジャミン様だぜ」


 なるほど、やらかし元男爵はガータンをベンジャミンさんに丸投げしてたんだな?

 そしてベンジャミンさんは『ケーニッヒバウム』のフーゴーさんと繋がりがあって、ウルシのことを聞いたんだろう。

 となると専門は商業関係かな?


「ババドーン男爵が失脚してから、ベンジャミンさんはどうしてるのかな? まだ誰にも雇われてないんだよねえ?」

「さあ、誰かに仕えてるって話は聞かねえな。たまに見るから、館にいるんじゃねえか? 領主が変わったって、食料が必要なことも税を納めることも変わらねえ、うろたえず働けって激励されたぜ」

「もっともなことだねえ。ベンジャミンさんの館ってどこにあるの?」

「領主の館の隣だぜ? 割と大きい建物あるだろ?」


 隣だったのか。

 ヤバい。


「おっちゃん、親切にありがとう」

「おう、じゃあな」

「バイバイぬ!」


 男に別れを告げ、来た道を戻る。

 不審そうなパスカル君が聞いてくる。


「デートは終いなのか?」

「おいこら、何を言ってるんだ。ベンジャミンさん家に行くんだよ」

「今からか? いきなり過ぎないか?」

「遅いよりマシだから」


 わかってなさそうなパスカル君に説明する。


「今の農夫さんの話で、ベンジャミンさんがガータンで尊敬を集めてる人物だってことは理解したでしょ?」

「それはまあ。ガータン経営において、兄上の右腕になるべき人かなとは感じた」

「何で重要人物だって理解してるのにぼんやりしてるんだよ。是が非でもヘルムート君の家来になってもらわないといけないじゃん。すぐさま行動を起こすんだよ」

「兄上の仕事じゃないのか? 勝手なことをしてはまずいだろう」

「ヘルムート君が自由に動けるならその通りだけど、村の顔役との会合と屋敷管理する人手配するだけで手一杯なんじゃないの? となるとベンジャミンさんに声かけるのは誰の仕事?」


 首をかしげるパスカル君。


「……ひょっとしてオレの仕事?」

「ひょっとしなくてもだよ! 補佐役名乗ってたじゃねーか! 手伝ってやるからキリキリ働け!」


 まったくすっとぼけてるんじゃねーぞ。


「いいかい? ベンジャミンさんを口説き落とせればとりあえず勝ったも同然。丸投げしといたって、感謝されてた前領主時代と同じくらいのガータン経営を期待できるじゃん?」

「うむ、わかる」

「でもベンジャミンさんに仕える価値なしと判断されたら、ガータンの統治はすげー難しくなっちゃうぞ? だって農民の支持がある人なんだから。おまけにヘルムート君がババドーン男爵以下の領主だと思われちゃう」

「た、大変じゃないか!」

「大変なんだよ。それに帝都の元学者だったらプライド高いに決まってるでしょ?」

「かもしれないな」

「オレんとこ挨拶に来るのが遅いわって、へそ曲げられたらどーすんだ。取り返しつかないぞ? 早過ぎるのは出直すだけですむけど」

「う、うん」


 本当にわかってるか?

 ひっじょーに頼りないんだが。


「領主の館の隣ってのがまたよろしくないんだよな。外で人集めてガタガタやってるのわかってるのに、声かけられてないんだから。今頃イライラしてるんじゃないの?」

「い、急ごう」

「急ぐけど、焦んなくてもいいよ。こっちは雇う側だぞ? 余裕は見せないといけない。あたしお土産取ってくるから、ちょっと待ってて。ヴィル、ビーコン置いといてくれる?」

「わかったぬ!」


 転移の玉を起動して帰宅、コブタ肉を持って即行で戻ってきた。

 おいしいお肉はお土産に最適。

 どこへ持っていっても喜ばれるからな。


「準備は万端だ。勝利は我にあり! さあ行こうか」


 パスカル君とヴィルを連れ、ベンジャミンさんの館へゴー。

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