第1248話:フィフィパーティーは順調
フイィィーンシュパパパッ。
ヴィルとともに塔の村にやって来た、が?
「ざわついてるのか熱気があるのか。随分人が多い気がする」
「お店が混んでるだぬよ?」
本当だ。
何だろう?
「あっ、画集か!」
ようやく塔の村でも美人画集の大規模販売が始まったらしい。
毎度あり。
忙しそうな道具屋さんがあたしに気付いて話しかけてくる。
「あっ、ユーラシアじゃないか!」
「こんにちはー。画集売れてる?」
「売れてる売れてる。何日か前に初めて販売してあっという間に売り切れたんだ。今日は二回目の販売だよ」
「そーかー」
販売価格は七〇ゴールドか。
運搬料でレイノスの小売価格より一〇ゴールド増し。
ちょっと高くなっちゃったけど仕方ないな。
邪魔しちゃ悪いから。
「じゃねー。商売繁盛商売繁盛」
路地を抜けてパワーカード屋へ行く。
「こんにちはー。あれ? フィフィもいるのか。熱心だね」
「こんにちはぬ!」
「あら、貴方。いらっしゃい」
「フィフィもパワーカード買いに来たんだ?」
「ええ。私の防御用カードが欲しいの」
「あんたまだ防御用カード買ってなかったのかよ?」
攻撃偏重なんだろうな。
あるいは『経穴砕き』の数を揃えてたのかも。
コルム兄が言う。
「ユーラシアの考えとしては、何を装備するのがいいと思う?」
「そりゃ『武神の守護』か『光の幕』かな」
『武神の守護』は防御力補正が大きく、ヒットポイントの自動回復もある。
駆け出し前衛冒険者用にベストだと思われる防御用カードだけど、もちろん後衛にも有効だ。
『光の幕』は防御力以外に魔法防御も上がり、沈黙無効が大きい。
出現する魔物の種類によって選べばいい。
「『ボトムアッパー』はどうかしら?」
「おおう、攻撃的だな。悪くないよ」
『ボトムアッパー』は補正幅は小さいが、攻撃力・防御力・魔法力・魔法防御・敏捷性の全てのステータス値が上がる。
魔法の効果が大きくなり、フィフィの弱点の一つである敏捷性をカバーできると思えばいいんじゃないか?
「『セイフティローブ』はどうだろう?」
「コルム兄『セイフティローブ』作れるんだ?」
エルマの考案した防御力・魔法力・魔法防御を上げ、狙われ率を大きく下げるパワーカードだ。
アルアさんとこの工房と交流できるようになったのかな?
「悪くないね。どのパワーカード選んでもそう間違いないと思うよ」
「はあ……」
「ため息吐くほど悩んでるんだ?」
「いえ、リリー様もエルもレイカも画集に載っているのに、私は蚊帳の外なので寂しいのですわ」
「おいこら、全然関係のない話じゃないか。真面目に聞いてて損したわ!」
「損したぬ!」
よしよし、ヴィルをぎゅっとしてやる。
「貴方は表紙じゃないの。羨ましいですわ」
「羨ましいって言われても、フィフィがドーラに来る前に始まった企画だしな?」
「ユーラシアのアイデアだとアレクに聞いたよ。本当なのかい?」
「うん。どんな本なら売れるかって案を出した時にさ。イシュトバーンさんっていう、いい女しか描こうとしない絵師がいるから、その画集出したら売れるに決まってるって冗談で言ったら、皆が本気にするんだもん」
一発ネタだけどな。
当てりゃ大きいのだ、ということを生産者連中に思い知らせれば、また面白いアイデアでも出てくるんじゃないか?
「イシュトバーン……塔の村に来る途中で会ったお爺さんですのね」
「そうそう、あの人。女の人描くと何故かえっちになっちゃうという、特殊技能を持ってる」
「羨ましいですわ!」
「何でも羨ましがるなあ。確かにこの画集今帝国本土にもガンガン輸出してて、最終的には何十万部って売れちゃうけれども」
驚く執事。
「そんなにですか?」
「そんなになんだよ」
「そんなになんだぬ!」
「羨ましいですわ!」
しょうがないなあ。
まあフィフィも頑張ってることだし。
「よし、じゃあ『悪役令嬢のドーラ西域紀行珍道中(仮題)』の表紙を、イシュトバーンさんに描いてもらおう。どーかな?」
「えっ? 嬉しいわ! でも私なんか描いてもらえるかしら?」
「今のフィフィはいい女だから大丈夫だぞ? 頼んどいてあげる」
ハハッ、大喜びしてやがる。
「じゃ、原稿上がりそうになったら教えてね」
「わかったわ。ところで貴方もパワーカードを買いに来たの?」
「うん。『ホワイトベーシック』二枚と『闇払い』五枚ちょうだい」
「一万飛んで五〇〇ゴールドだよ」
おゼゼが出てくなあ。
執事が疑問に思ったようだ。
「『闇払い』? 闇耐性のカードですよね。何に使用されるんですか? ユーラシア様ほどのパーティーが闇耐性を必要とするほどの魔物に、ちょっと心当たりがないのですが」
「明日、魔王島に現れたブラックデモンズドラゴン五体を倒せっていうクエストに加えてもらえることになったんだ」
「ぶ、ブラックデモンズドラゴンが五体?」
「何なの? マテウス。知識を披露してもよくってよ」
「『黒い災厄』と呼ばれている、ドラゴンの中でも特に凶悪な種です。カル帝国では災害級の魔物に指定されています!」
「一体ずつならどうにでもなるんだけど、どうやら五体いっぺんに戦わなきゃいけないんだって。それで魔王が困ってるから、助けてやろうってことみたい」
執事が難しい顔をする。
「不可能ではないでしょうか?」
「あたしも難しいと思う。ただまだ現地を見てないからさ。二体三体に分断できれば勝てると思うんだ」
魔王とソル君の持ちスキルも知らないしな。
全ては明日の顔合わせ次第だ。
とにかく一ターン耐えられれば、あたしの『雑魚は往ね』で一掃できる。
フィフィが聞いてくる。
「塔のてっぺんの悪魔も魔王の配下なのでしょう? 一緒にお出かけするのかしら?」
「ウシ子? 魔王から召集がかかってはいるよ。でも得がないから行きたくないって」
「身勝手ですのね」
「悪魔って身勝手なもんだぞ? 逆に得することならやってくれるって思えばわかりやすいよ」
ウシ子連れてって魔王にごめんなさいしとく手もなくはない。
でもブラックデモンズドラゴン五体では、ウシ子がいたところで戦闘では全く役に立たないのだ。
塔の村で冒険者の手伝いしててくれた方がなんぼかマシだわ。
「じゃあまたね」
「バイバイぬ!」
さて、メキスさんに会ってくるか。
新しくわかったこともあるから相談したいのだ。




