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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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1242/2453

第1242話:レシピの解読が進む

 フイィィーンシュパパパッ。


「こんにちはー」

「こんにちはぬ!」

「精霊使いじゃないか。ようこそ」


 海の王国と聖火教の集落にコッカーをおすそ分けしてから、イシュトバーンさん家にやって来た。

 髪の毛で片目を隠した『ララバイ』使いの男に話しかける。


「ノアがあたし番固定なの?」

「ああ。どうもそのようだ」

「ふーん。恵まれてるねえ」


 何がどう恵まれてるのかってブツブツ言ってるわ。

 あたしのよーな美少女に関われる喜びを素直に受け取らない、感性の鈍いやつめ。

 イシュトバーンさんが飛んできた。


「こんにちはー」

「こんにちはぬ!」

「おう、よく来たな」

「これがコッカーのお肉だよ。旨みが強くて大変イケます。肉質が硬めだから、薄切りにするといいよ。現地では鉄板が調達できないから、平たい石で焼いて岩塩で食べてるんだ」

「ほう、そうか。まあ上がれよ」

「お邪魔しまーす」


 屋敷へ。

 イシュトバーンさんが言う。


「帝都の料理人はさすがだな。かなりレシピの解読が進んだぜ」

「実にありがたいね。食文化が発達しそうだわ。スイーツ万歳」

「ただわけのわからねえ記述もあるようなんだ。完全解読には時間がかかるな」


 単なる覚書みたいなのも一杯あったしな。

 どこまでがレシピに関連してるのかさえ不明なのだ。


「ひょっとして今日は新たなスイーツを食べさせてもらえるのかな?」

「おう。楽しみにしとけよ」

「やったあ!」


 楽しみだなあ。

 うちの子達も喜んでるわ。

 席に案内される。


「さて、いいぞ」

「あたしの面白話独演会の準備が整ったということかな?」

「おう。エンタメ寄りで頼むぜ」


 んー最近のエンタメ寄りの話だと……。


「男女の相性って微妙なもので。ピッタリ過ぎてもうまくいかないみたいなんだよ」

「オレとあんたみたいにか?」

「ムリヤリエンタメに寄せるなあ。そうでなくってさ」


 ダンとニルエのことを話す。


「ほお、ダナリウスとマルーの孫娘が?」

「あたしの狂いなき恋愛センサーによると、あの二人はジャストフィットなんだよね。もー髪の毛一本分の隙間もないくらいに。でもそれだと気を張り過ぎちゃうらしいの」

「難しいもんだな。適度な余裕が必要ってことか」

「みたいだねえ」


 あたしもダンニルエみたいなケースは初めてだった。

 相性いいのにうまくいかない予感がするのはこういうことかと、あとで理解したくらい。


「マルーのばっちゃんもダンのことを気に入ってたから残念だった」

「カリフは胸を撫で下ろしたろうぜ」

「アハハ、そーかも」


 ダンの善人父ちゃんカリフ・オーランさんは、マルーさんと親戚になったりしたら冷や汗止まんなくなっちゃうかもな。

 善人の危機は救われた。


「飯が来たぜ」

「いただきまーす!」


          ◇


「ごちそーさまっ! おいしかった! もー入んない!」

「入んないんだぬ!」


 よしよし、ヴィルもご機嫌だね。


「新作スイーツ良かったなあ。パリッと感が素敵」

「材料が入らなくて再現できないやつがあるんだとよ。カカオってやつ。ラグランドっていう帝国の海外植民地で作ってるんだそうだが」

「ラグランド?」


 おいこら、えっちな目で見るな。


「心当たりがありそうじゃねえか」

「全然別の話なんだけど、来月の半ばに反帝国の蜂起が起きるんだ。ラグランドで」

「わからねえ。最初から教えろ」

「アリスに聞いたんだよ。第一皇子の喪明けで……」


 来月三日に帝国艦隊が出撃、行く先はソロモコであること。

 同時にラグランド蜂起についても聞いたこと。


「パラキアスさんがラグランド蜂起のことを、主席執政官閣下の第二皇子に話してこいって言うんだ。昨日行ってきた」

「しかしラグランドについては、ドーラ関係ないだろ?」

「ないねえ。でもラグランドって食料足んないから、放っといても沈静化するみたいだよ」

「じゃあパラキアスは何をしたいんだ?」

「さあ? 第二皇子にも恩を売って信頼を買っておけということなのか、情報を知ったことによる勇み足を誘発させたいのか」


 パラキアスさんの真の狙いはよくわからないのだ。

 毒を盛られるという予定外のイベントもあって、閣下に恩を売るということに関しては成功したと思う。

 この前の帝都の新聞を使った世論操作からすると、閣下の積極的な外征を止めたい意図もあるようだが?


「ただ結果論としては、昨日施政館に行ったことはあたしにとっていいことだったんだ。ツェーザル中将って人に会うことができた」

「誰だ?」

「ソロモコ遠征の司令官だよ」

「やはりアリスの情報か?」

「うん」


 考え込むイシュトバーンさん。


「……ソロモコ遠征の最中に、ラグランドは蜂起することになるのか?」

「いや、ソロモコが決着する方が早いはず」

「ソロモコはあんたの持ち場だな? そのツェーザル中将の人となりはどうだ?」

「剛毅な軍人だね。下された命令を私情で曲げる人じゃないな。脅すだけでは折れやしないから、こっちも少し譲ろうかと思う」

「ふうむ? まああんたのやってることだから丸く収まるんだな?」

「もちろん。ソロモコについてはあたしの持ってる情報と、取れる選択肢が多いんだし」


 ソロモコの人達を無道な侵略から守るという正義も、魔王との敵対を避けるという大義名分もあたしにあるしな。


「バアルが言うには、第二皇子の性格だと、ソロモコがどうにかなってからラグランドに取り掛かるだろうって」

「堅実だな。具体的には何をする?」

「ソロモコ遠征が失敗するから、帝国は厭戦ムードになるじゃん? ゼムリヤのメルヒオール辺境侯爵によると、皇位継承権一位のセウェルス皇子を特使としてラグランドに派遣するんじゃないかって言ってたよ」

「ははあ、次期皇帝争いのライバルに責任を押しつける策だな?」

「嫌らしいやり方だねえ。セウェルス皇子はこの前の皇妃様暗殺未遂事件の黒幕だったんだ。これは第二皇子が教えてくれた」

「待て、因果関係がわからねえ!」


 考えるだけムダだぞ?

 こーゆーのはさらに拗れるもんだ。


「ドロドロしてるよねえ。あたしも頭使い過ぎるとぷしゅーってなっちゃうから、目の前のことだけに専念することにした」

「おう、全部終わってから教えてくれよ」


 イシュトバーンさんも諦めたようだ。


「じゃ、今日は帰るね」

「おう、またな」

「バイバイぬ!」


 転移の玉を起動して帰宅する。

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