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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1243話:ドラゴンも生きのいいエサの方が好き

「サイナスさん、こんばんはー」

『ああ、こんばんは』


 毎晩恒例のヴィル通信だ。


『今日は御苦労だったね。開拓地の方、まとめてくれて助かったよ』

「お肉がおいしいと大体まとまるよね。皆さん大満足」

『そういう話じゃなかったんだが』


 どういう話だったろ?

 クララの神技解体のウケがよかったってことかな?


『オレもショップの方がほぼ片付いた午後、開拓地に顔出したんだ』

「サイナスさんも御苦労だねえ」


 揉め事をどうにかするなんてのはサイナスさん得意じゃないのに。

 あたしに任せときゃいいよ。

 あたし好みに味付けしたるわ。


『君についてえらい質問されたんだが。ディオゲネス族長代理が辟易してたぞ』

「人気者について質問されちゃうのはしょうがないな。ちゃんととびきりキュートな娘だって説明しといてくれた?」

『そんなことは聞かれなかったぞ?』

「見ればわかることだったね」


 内面の魅力を知りたいということだったか。


「サブローのおっちゃんに盾突いてたの五人いたじゃん? その内のボス格の人は、遠距離攻撃できる面白い固有能力持ちだったよ。レベルも中級冒険者くらいはあったから、ちょっと鍛えりゃ地引網でおっちゃんの代わりが務まると思う」

『五対一で相手したって? 無茶なことはするなよ』

「無茶ではないよ。あの五人のレベル足したってあたしには全然届かないし」

『ふむ? まあ一日で随分と低姿勢になったから助かる』

「あんまりクシュンとしちゃうとつまらんなあ。ドラゴンも生きのいいエサの方が好きだと思うし」

『君がそう言っていたと伝えておくよ』


 レベルや身のこなしからすると、結構魔物を倒した経験もある人員だと思う。

 あの五人が働いてくれると、開拓地周りの魔物狩りが捗るな。

 開拓地北の森を少しずつ魔物から解放して、居住域をさらに広げることができるかもしれない。


 となると対人形系レア魔物がネックか?

 サブローさん含む六人が人形系を倒せるスキルを持ってると思えん。

 でも踊る人形を倒せるか倒せないかで、レベルアップスピードや儲けが変わってきちゃうしな。

 バリバリ働いてくれるなら、『経穴砕き』のスキルスクロールをプレゼントしてやろう。


「うちに畑番の精霊いるじゃん?」

『話が飛んだな。いつものことだが』

「あたしのごまんとある長所の一つだよ」

『長所って何だっけ?』


 自分で長所って思ったら長所なのだ。

 幻惑話法を思い知れ。


『確か寄り代タイプの精霊だったな』

「そうそう、涅土の精霊カカシ。レベル上げたらどうなるかなと思って、開拓地のあと魔境行ったんだ」

『ええ? 寄り代タイプの精霊をレベリング?』

「魔境ガイドのお兄さんも何が何やらって顔してたよ。そーだ、そのお兄さん、おっぱいさんと婚約したって」

『えっ? オレも何が何やらわからないんだが』


 だから幻惑話法だというのに。

 あたしは楽しいけど、理解されないとイライラするから簡単に説明しておく。


「つまりレベルが上がればカカシも楽に働けるかなと思ったんだ。カカシもすごく頑張ってくれてるからね」

『なるほど? 結果はどうだった?』

「バッチリ。カカシは自分の影響を及ぼせる範囲を『手が届く』って言うんだけど、それが格段に広がったみたい」

『面白い知見だな。つまり依り代タイプの精霊であっても、レベルアップの恩恵はあるのか』


 井戸の底まで手が届くようになったそうな。

 晴れの日が続いても水遣りの必要がなくなった。

 全てカカシにお任せで、あたし達はさらに楽になる。

 家の庭を広げてもいいかもしれないな。

 凄草を増やした方がいいか?


『君のところの畑番がパワーアップしたのはわかった。おっぱいさんの方は?』

「気になる? もう婚約しちゃったからダメだぞ?」

『そういうのいいから』


 そーゆーのが好きなんだが。


「おっぱいさんは画集の『サクラ』って人ね。すごい美人で仕事もできる人なんだけど、相性の合う男の人がほとんどいないんだよ。魔境ガイドのオニオンさんは数少ないおっぱいさんと合う人で、あたしも二人の食事の場とかセッティングしてたの」

『世話焼くなあ。オニオン氏も美男子なのか?』

「いや、見かけは風采の上がらない小男だよ。でも知識は豊富だし、ホンワカした柔らかい雰囲気のいい人なんだ。あたしも好き」

『すごい美人とユーラシアに好かれる人か。大したもんだね』

「本当だ。オニオンさんすげえ」


 オニオンさんは大したやつなのだ。

 おっぱいさんとセットで幸せになってしまえばいいよ。


「で、午後は肉狩り」

『またか。朝開拓地に来る前にも肉狩りだったんだろう?』

「まあ。でも午後はいつものコブタマンとは違うお肉だよ。独立戦争の時あたし達がこもってた帝国の山の中に生息してる、コッカーっていう鳥の魔物。肉質は硬いけど大変美味です」

『君が不味い肉なんか取りに行くわけないから、そりゃおいしいんだろうけど』

「ちょっと変わった趣向だったんだ。うちのパーティーはあたしがメインアタッカーだから、クララやダンテはあんまり魔物を倒す機会がないじゃん?」

『ちょっと待て。ヒーラーのクララはともかく、ダンテは攻撃魔法使いだろう? 魔物を倒す機会がないとはどういうことだ?』


 うちのパーティーの戦闘スタイルについて、サイナスさんに話す機会はなかったな。


「ダンテには経験値倍増スキルやドロップ率が増えるスキルを覚えさせてるんだ。その手の支援スキルを使うのがダンテの役割で、最後にあたしの一掃スキルがガーンとかかる感じ」

『ええ? アレクが君の戦い方を大雑把だって言う理由がわかった』


 あたしが何らかの状態異常とかで戦えなくなるケースでは、もちろんダンテが最大火力として落とし前をつける取り決めだ。

 しかし運のパラメーターが高いあたしが戦えなくなるケースなど、これまで一度もないのだった。


「今日はあたしが遠慮して、うちの子達が大暴れって試みね。楽しかったみたいだよ。コッカーの肉は聖火教の集落と海の王国におすそ分けして、残りはイシュトバーンさん家にお邪魔して食べた」


 大変おいしゅうございました。


『自由だなあ。今日は以上か?』

「うん。サイナスさん、おやすみなさい」

『ああ、おやすみ』

「ヴィル、ありがとう。通常任務に戻ってね」

『了解だぬ!』


 明日はパッフェルへ。

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