第1239話:シナリオの変更を要求する
――――――――――二〇九日目。
朝から肉狩りをこなし、コブタ二〇トンとともに、クララの高速『フライ』でびゅーんと開拓地へ飛ぶ。
「おっはよー」
「おはようぬ!」
「あっ、ユーラシアさん!」
「何これ、決闘? ワクワクするなあ」
フワリと華麗に降り立つ。
サブローのおっちゃんと、中級冒険者なりたてくらいのレベルの移民五人が向かい合い、険悪な雰囲気なのだ。
ディオ君が困惑しているわ。
おそらく昨晩サイナスさんの言っていた元辺境開拓民だろう。
早速揉めとるやないけ。
実に微笑ましいとゆーか朝からイベントありがとうとゆーか。
「何だあ、おめえは」
「通りすがりの美少女だよ。どうしたの?」
「見りゃわかるだろ」
ニヤニヤする五人。
サブローさんに因縁つけているのはわかる。
「ははあ。賢いあたしはわかっちゃった。要するにサブローさんの生き別れた娘と結ばれたいけど、サブローさんが許さないということだね?」
「「「「「違う!」」」」」
「おいらに娘はいねえ!」
両サイドからツッコミだ。
じゃあ何なの?
「違ったか。もっと面白い事態だった? 答えを教えてよ」
「サブローが幅を利かせてるのが気に入らねえんだよ」
「ええ? そんな子供のケンカみたいな話なのかよ。シナリオの変更を要求する! ラブい要素を入れろ!」
「移民の皆さんがまとまらないのは困るんですよ」
「ディオ君のゆー通りだ。バカなことやってる時間がムダだから、要求をまず聞こうか」
五人の親玉であろう男が言う。
「サブローの下につけってのは認められねえな」
「サブローのおっちゃんの下についてくれる?」
「……オレの言ったこと聞いてたか?」
「聞いてたけど聞き入れるとは言ってない」
はいはい、わかりやすい挑発ですよ。
「サブローのおっちゃんは、あたしが頼んで移民のリーダーやってもらってるんだ。今までうまくいってるから、新参のあんた達の横入りする余地はないの。わからんかな?」
「わかるわけねえだろ! 実力のある者が上に立つもんだ!」
「うーん、あんたらよりおっちゃんの方がレベル上だぞ?」
「そんなわけねえだろ!」
あんたらのレベルならサブローさんの実力もわかるだろうに、数を頼みに聞き入れないってことか。
しょうがないなあ。
「じゃあおっちゃんを推薦したあたしに勝てたら、あんたらの要求を呑もうじゃないか。レベル差があるからあたしは素手で、あんたらは得物あり五人がかりでいいよ。どう?」
「じ、嬢ちゃん……」
「ハッ、吠え面かくなよ!」
レッツファイッ!
ん? いきなり飛びかかってくるかと思ったら、親玉はえらい距離取るじゃないか。
飛び道具か?
あるいは何かの固有能力持ちだから、長射程のスキルでも持ってるのかな。
子分四人は時間稼ぎみたいだが……。
「えいやっ! どーん!」
一人の子分の後ろに回って持ち上げ、もう一人の子分にぶつける。
二人片付いた。
「ど、どういうことだ?」
「すげえ!」
ハハッ、見物人にも喜んでもらえているようだ。
さらに手刀で二人を倒し、残りは親玉のみ。
かなり慌ててるな?
見物人達に声をかける。
「流れ弾気をつけてね。あんまり寄らないで」
倒れてる子分一人を盾にして親玉にダッシュ!
何か撃ってくるな。
なるほど、飛び道具的な長射程スキルか。
ネタが割れればどうってことない。
とゆーか不規則に動く相手に当てる練習はしてないみたい。
「ば、バカな! 当たらねえ!」
「練度の低い技があたしに当たるわけないだろ。こっちは当てるぞ。どーん!」
子分を投げつけてジエンド。
「あー面白かった。朝からまあまあのエンターテインメントでした。リフレッシュ!」
五人を回復させる。
「力の差は理解した? 今後はサブローのおっちゃんを尊重するように」
「「「「「は、はい……」」」」」
サブローさんが苦笑しながら言う。
「チャーリーは『スナイパー』の固有能力持ちなんだ。一般的な攻撃魔法よりさらに遠距離から攻撃のできるスキルを習得していくんだぜ」
「かなり便利な能力だな。でも遠距離攻撃持ってるってことは最初に教えといてくれない?」
「教える間もなくおっ始めたじゃねえか」
「そーだったかー」
アハハと笑っていると、親玉チャーリーが聞いてくる。
「あんたは何なんだ?」
「あたしは美少女精霊使いユーラシアだよ。冒険者っていう、帝国で言えば辺境開拓民とちょっと似たお仕事してる」
子分の一人があたしのことを知っていたらしい。
「ユーラシア? まさかヤマタノオロチを退治した?」
「あれ、よく知ってるね」
「何? どういうことだ?」
子分が説明する。
「タムポートを出航する直前の新聞に、ドーラの冒険者がヴォルヴァヘイム近郊に現れたヤマタノオロチをやっつけたっていう、デカい記事があったんだ。メチャクチャ売れてたから、満更与太話でもないんだろうと思っていたが」
「本当なんだよ。褒美として騎士爵と勲章もらったの」
「お嬢ちゃん貴族になったのかよ?」
「出世しちゃったよ」
正確には貴族扱いであって、本物の貴族じゃないらしいけど。
「まーあたしが美少女騎士様になったことはどうでもいいんだ。あんた達、今後はサブローさんの言うことをよく聞いてね。次つまんないトラブル起こしたらドラゴンのエサにするぞ?」
「ユーラシアさんがこう言う時は多分本気です。気をつけてくださいね」
ディオ君の発言に首をカクカクと縦に振る五人。
よしよし、教育が行き届いた。
ドラゴンはエサから遠ざかった。
「そ、そっちの白い子と飛んでる子は?」
「うちの子達だよ。精霊のクララと悪魔のヴィル。クララは包丁名人だから、お肉を捌くお手本を見せに連れてきたんだ。ヴィルは連絡係だよ。こっちに来ることがあったら可愛がってやってね」
「精霊に悪魔……。い、いや、獲物の解体くらいはオレ達でもできるんだぜ?」
「辺境開拓民ならできるかもしれんけど、一度見てみなよクララ先生の技を。先生、お願いします」
シュバババッ!
炸裂する神技に目を丸くする面々。
これ知らん人はビックリするよなあ。
あたしも何べんでも見たくなるし。
「と、このように一体約一〇秒で肉になります」
「「「「「いやいやいやいや!」」」」」
「アハハ。じゃ、おっちゃんディオ君、あとよろしくね」
「バイバイぬ!」
転移の玉を起動して帰宅する。




