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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1238話:身近な微笑ましい揉め事にも触れてみたい

「サイナスさん、こんばんはー」

『ああ、こんばんは』


 夕食後、毎晩恒例のヴィル通信だ。


「移民の皆さんは無事開拓地に着いたかな?」

『ああ、健康状態は特に問題はない。今回辺境開拓民が何人かいるんだ』

「辺境開拓民? サブローのおっちゃんみたいな?」

『知り合いみたいだったぞ?』

「よかったじゃん。心強いね」


 辺境開拓民は武器所持が認められて税金が免除される、魔物がいるような地区を開発する人と聞いた。

 ドーラの従来型の冒険者と通ずるところがあるな。

 辺境開拓民ならば魔物との戦闘経験もあるだろう。

 移民居住区に戦える人は少ないだけにありがたい。


「今後辺境開拓民が皆移民でドーラに来ちゃうと、帝国は困るんじゃないかな?」


 開拓は進まなくなるだろうし、魔物の数を間引けなくなるだろうし。


『そうなれば辺境開拓民の渡航を制限するなり待遇を良くするなりするだろう。ドーラ側の考えることじゃないな』

「道理だねえ」

『サブロー氏と新着の辺境開拓民達の仲があまり良くなさそうなんだ』

「おかしなトラブルの種になると面白くないねえ」

『嬉しそうな声を出すなよ』

「ごめんなさーい」


 世界平和に関わるトラブルを抱えてると、身近な微笑ましい揉め事にも触れてみたくなるんだってばよ。


『明日はこっちへ来てくれるのか?』

「ぜひトラブルを見ながら指差して笑いたいからね。違うな、つぶらな両の瞳に焼きつけたい……どーもうまい表現にならないけれども」

「言い換えたところで本心は隠せてないからな?」

「お肉持っていくってばよ。クララとヴィルが同行かな。ディオ君が手伝ってくれるって言ってた」

『助かるな』


 ディオ君は律儀だから。


『今日はセレシア族長を連れて帝都に行ったんだな?』

「行ってきた。帝都の大店『ケーニッヒバウム』の店主との顔合わせは無事終了」

『顔合わせだけか?』

「いや、商売の話にもなったよ。セレシアさんがデザインを提供して、そのデザイン料を受け取る格好になるかな」

『セレシア族長は不満そうだったろう?』

「わかる?」


 自分の思う通りに売れるわけでなく、注文も受けられない。

 決して本意ではないだろう。


「でもまあ今は仕方ないよ。生産をセレシアさんに任せといたら目も当てられない事態になるってのが共通認識だからさ」


 ディオ君や『ケーニッヒバウム』側だけでなく、セレシアさんとこの売り子の女の子でさえそう思ってたみたいだぞ?

 将来的には人口の多い帝国で、カリスマデザイナーとしてブイブイ言わせるのがいいと思う。

 ペペさんと一緒だ。

 天才は才能を発揮できる領分でだけ動いてくれるのが望ましい。

 もっともドーラで足固めして店長候補を育てなきゃ動けないけどね。


『施政館にも行ったんだろう?』

「行った行った。面白いことが二つあった」

『何だい? ユーラシアが面白いことって言うくらいだと相当だな。ぜひ拝聴しようじゃないか』


 ハハッ、サイナスさんも大いに興味があるようだ。

 自分で期待値上げるスタイルはやめた方がいいかな?


「まず一つ目。ツェーザル中将っていう軍人に会ったんだ。ドーラ独立の時の交渉で、帝国側の全権持ってた人」

『ほう、軍人なのにか』

「メッチャでっかい人なの。黄の民の眼帯君くらい」

『ユーラシアが面白いって言うだけあるなあ』

「人物も魅力あるけど、中将はソロモコ遠征の司令官なんだよ」

『……どこで得た情報だ?』

「『全てを知る者』ことアリスから」

『ははあ、主席執政官や中将は君がソロモコ遠征を察知してることについては?』

「当然知らないでしょ。で、主席執政官と中将のいるところでラグランド蜂起について教えてあげたんだ。二人の顔の造作は全然似てないのに、表情がそっくりで笑いそうになった」

『そういうどうでもいい情報を挟んでくるなよ』


 あたしにとってエンターテインメントは重要なんだが。


『要するにソロモコ遠征とラグランド蜂起の時期が重なるから頭を抱えたということだな? ソロモコ遠征が中止になることはないのか?』

「ない。第二皇子が中将に『計画に変更はない』って言ってた」


 ラグランド蜂起なんか成功するわけないから、ソロモコでの軍事的成功を優先するという目論見だろう。

 ソロモコ遠征も成功しないけどな。


『中将の人物はどうだ?』

「なかなかだね。猛将とゆー評価がある一方で理性的な人と見た。利に転ぶ人物じゃないけど、損害が大きくなるのは無視できないと思う」

『説得はできるんだな?』

「うん。任せて」


 命令を受けた以上、中将自身が死を恐れて引くことはおそらくない。

 しかし艦隊が壊滅することによる甚大な影響を考えられないほど、矮小な人物でもないのだ。

 言いくるめることはできる。


「もう一つの面白いことだけど、第二皇子ったら昼食に毒盛られてんの」

『えっ?』

「主席執政官って立場の第二皇子にも敵がいるんだねえ。もっと人間関係や情勢が知りたいよ」

『毒を盛られるところまで面白いに数えるなよ』

「言葉だけじゃもう一つ面白さが伝わんなかったか」


 あるいは説明が足りなかったかな?

 黒幕がわかんないけど、主席執政官が毒盛られる状況が面白いのであって犯人はどうでもいい。


『大丈夫だったのか、主席執政官殿下は?』

「あたしがその場にいたから問題ないぞ? 毒入れられたって見りゃわかるし」

『見えないものまで見える眼力がえぐい』


 そんなんではないとゆーのに。


「給仕の女の人が実行犯なんだけどさ。娘さんを人質に取られて脅されてるんだって。泳がせて首謀者とっ捕まえるって言ってた」

『泳がせるのか。度量が広いな』

「手掛かり少ない状態で逮捕して締め上げちゃ、繋がる糸が切れちゃうからね。で、毒入ってたことを指摘した礼として、皇妃様呪殺未遂事件の黒幕教えてくれたんだ。セウェルス第三皇子だって」

『おかしいじゃないか。何故主席執政官殿下が知ってるんだ?』

「情報源は言わなかったけど、今第二皇子にくっついてる悪魔からだと思うよ。多分ね」

『……』


 サイナスさんも次期皇帝レースの有力者同士を盤外で争わせる意図に気付いたろ。

 ちっとも礼なんかじゃないのだ。


「今日そんなもん。サイナスさん、おやすみなさい」

『ああ、おやすみ』

「ヴィル、ありがとう。通常任務に戻ってね」

『はいだぬ!』


 明日は肉狩り。

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