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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1237話:盾の魔法『ファストシールド』

「問題はこれだ」


 買い取り屋で不必要なアイテムを処分してから、オリジナルスキル屋にやって来た。

 いつものように爆睡している見かけ幼女店主。


「ペペさんがいるってことは、新しいスキルでもできたのかな? ヴィル何か知ってる?」

「知らないぬ。いつも寝てるからぬ」

「そりゃそーだ。あたしとしたことが愚問だった」

「起こすぬか?」

「お待ちかねの起床タイムだね。その前にヴィルにパワーを注入してあげようね」

「ありがとうぬ!」


 ヴィルをぎゅっとしてやる。

 大きく息を吸って~。


「たのもう!」「たのもうぬ!」

「ふあっ?」


 飛び起きる幼女魔道士。

 あ、今日は化粧してないな。

 口紅がべろーんとならないから、その方がいいよ。


「おはよう、ペペさん。もう夕方になっちゃうけど」

「あっ、ユーラシアちゃん、おはよう」


 ペペさん見てると、寝る子は育つってウソだと実感できる。

 いや、子供じゃないから育たないのかな?

 誰か検証してくれんものか。


「見てもらいたいものがあるんだ。これ」

「紙?」


 ナップザックから取り出したスクロール用紙の試作品を見せる。

 ペタペタと触っていたペペさんの表情が真剣になる。

 魔力緩衝量が大きいことに気付いたな。


「……いい紙ね」

「スキルスクロールの用紙をドーラでも生産しようと思ってるんだ。これ試作品なんだけど、どう思う?」

「世界樹を漉き入れてるのね? よくできていると思う。魔力緩衝量も十分だから、余裕を持ってスキルスクロールにできるわ」

「世界樹のいろんな部分を漉き入れてるから、安定してこの品質で出せるはずなんだ」

「私も欲しいわ。一々紙を作らなくてもいいもの」

「よし、量産しよう」

「えっ、量産?」


 まあペペさんは外注してオーケーと思ってるんだろうけど。


「スキルスクロールの生産体制をドーラで確立したいんだ。外注よりも儲かるからね」

「ユーラシアちゃんは儲けに敏感ねえ」

「用紙は何とかなりそう。問題は中身と封じ方だな。中の記述はケイオスワードの綴り方だか魔法陣だかが正確ならいいんでしょ?」

「ええ」

「じゃあ印刷でも構わないわけだ」


 目を丸くするペペさん。


「……ユーラシアちゃんの言う通りね。『アクアクリエイト』以前はスキルスクロールの量産なんてあり得なかったから、印刷を考えたこともなかったけど」

「金属の原板は確かに高いけど、スクロール量産したって値段下げる気はないから、すぐ元取れるぞ? じゃあ楽しようよ」

「そうねっ!」

「もちろんペペさんがテスト用にスキルスクロールの用紙を欲しいということなら、安く融通するからね」

「ありがとう!」


 ハハッ、乗ってきたぞー。

 理想的にはスキルスクロールの生産に関しては完全に専門の業者に任せて、ペペさんは新しいスキルの作成に携わってもらうのがいい。


「封じるのはどうすりゃいいのかな?」

「記述済みのスクロール紙を十分な魔力に浸すでしょ? その紙をくるくるっと巻いて、魔力が逃げない内に封じの呪文を書いた紙を貼りつければいいの」

「なるほど?」


 つまり魔力の閉回路にしておくということか。

 ファントムバインドと似た理屈だが、外部魔力を一定以上に取り込もうとしないところが違うな。


「封じの呪文を書いた紙も印刷でいいんだよね? スクロール紙を魔力に浸すにはどうすればいいの?」

「手から流し込んでもいいけど、レベルの低い人だと結構キツいと思うの。であればマジックウォーターを噴霧するとかでも構わないわ」

「むう、こんなところにコストアップ要因が」


 高レベル者の手を煩わせるんじゃ大変。

 大量生産するんだと疲れちゃう。

 マジックウォーターをわざわざ使うのもおゼゼがかかってつまらん。

 どしたらよかんべ?


「魔境くらいの魔力濃度で均一に紙が染まればいいのよ。私は家の結界の外で紙をヒラヒラさせるだけですんじゃう」

「その程度の魔力量でいいんだ? ペペさんが魔境に住んでるのは、魔力面の利便性もあるのか。ためになるなあ」


 でもまさか魔境にスキルスクロール工場作るわけにもいかないし。


「……アレの出番か」

「アレって何なの?」

「大地から魔力を吸い取るマルーさんの技術。魔力十分の黒妖石の台にスクロール紙を置けば、魔力問題は解決するでしょ」

「ユーラシアちゃん賢いわ」

「賢いぬよ?」

「イケるな。ドーラ国内で『アクアクリエイト』のスクロールの量産が可能になれば、ペペさんに一本あたり二〇〇ゴールド払えると思うんだ」


 ケイオスワードの勉強をしたからスキルを作れるってもんじゃないらしい。

 才能とレベルと経験と環境があって、初めて実用的なスキルを作れるようになるんじゃないかな。

 希少な人材であるペペさんには厚く報いなければならない。

 

「倍の儲けになるの? 嬉しいわ!」

「あたしもボチボチ動いてみるよ。どこかで技術指導をお願いするかもしれないから、その時は協力よろしくね」

「わかったわ」


 よし、スキルスクロール生産に目処が立ったな。


「ところでペペさんがギルドにいるってことは、新しいスキルでも完成したの?」

「完成したのよ。最近はスキルに関係なくギルドにいることもあるのだけれど」

「どんなスキル?」

「盾の魔法『ファストシールド』よ。一ターンだけ相手の攻撃のダメージ通らなくするの」

「護身用のスキルだね?」

「ええ。使用するマジックポイントはごく少ないし、先制で発動するから、それなりに使えると思うのだけれど」


 冒険者には言うまでもなく有効だ。

 大技の来るタイミングで使用すれば、確実にやり過ごすことができる。

 普通の人でも理不尽な暴力や不意の事故から身を護る手段になり得る。

 いいんじゃないかな。


「うん。一本ちょうだい」

「一〇〇〇ゴールドです」

「安いな。三〇〇〇ゴールドにしよう」

「えっ?」

「『アクアクリエイト』は水で本当に困ってる人にこそ使って欲しいから、高いのはよろしくないけど、盾の魔法は贅沢品でしょ。欲しい人はいくらであっても買うって」


 もっと言うと、魔法一つ三〇〇〇ゴールドって高くないからね?

 三〇〇〇ゴールドを支払い、スクロールを受け取る。


「じゃーねー。『ファストシールド』も輸出用として紹介してくるよ」

「ありがとう。よろしくね」

「バイバイぬ!」


 徐々に売り物が増えていくな。

 転移の玉を起動し帰宅する。

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