第1199話:行政府で情報交換
「ウルトラチャーミングビューティーユーラシア参上!」
「御主人!」
「よーし、ヴィルいい子!」
茶番と言うなかれ。
ヴィルはウルトラチャーミングいい子なのだ。
「やりきったかな? いらっしゃい」
行政府大使室にやって来た。
ヴィルとのハグまで観賞していたプリンスルキウスが挨拶してくれる。
「今、帝都のアーベントロート公爵邸行ってきたんだ。これパウリーネさんからの手紙ね」
「ありがとう!」
ハハッ、小躍りするプリンス可愛い。
当たり前のように大使室にいるパラキアスさんが言う。
「帝都の状況を聞かせてくれ」
「フリードリヒ公爵の次男ヘルムート君が、今日正式に男爵になった。それで公爵家一行がパッフェルへ帰領する。さっき出発」
「ん? 随分と慌ただしいな」
ごもっとも。
早く新領地を確認したいヘルムート君はともかく、フリードリヒ公爵が急ぐ理由はないから。
「パウリーネさんが浮かれてるんだよ。帝都にいちゃプリンスとの付き合いがすぐバレるっていうフリードリヒさんの判断だと思う」
「ハハッ、なるほど」
決まり悪げなプリンスも可愛いニヤニヤ。
もっとも帝国の社交シーズンは農閑期の冬だそーな。
春本番まで間のない今の時期に領に戻るのはごく普通とのこと。
特別怪しまれることはない。
「次。『ケーニッヒバウム』店主のフーゴーさんが、あたしが魔宝玉ハンターだってことを聞きつけたらしくて、鳳凰双眸珠売ってくれってねだられた」
「どうした?」
「ドーラ政府と貿易商も儲けさせてやんないといけないからダメって言ったら、四〇〇万ゴールド払う、行政府と貿易商に一〇〇万ゴールドずつ、あたしに二〇〇万ゴールドどうだって提案されてさ。それならいいかって商談は成立でーす」
どんと机の上に置く。
「これ行政府の取り分一〇〇万ゴールドね」
「毎度あり!」
オルムスさんがホクホク顔だ。
「『ケーニッヒバウム』は何でも売ります商法してるじゃん? ドーラの産物も入れたくて、ベンノさんとの繋がりを強くしたいみたいなんだよ。ベンノさんの取り分の一〇〇万ゴールドはフーゴーさんから渡してもらうことにしたんで、こっちで考えなくていいからね」
「行き届いてるなあ」
「いや、行き届いてるのは帝国の統治システムだよ」
トップが特に何もしなくても自然と動いてくじゃん。
主席執政官の第二皇子さほど忙しそうじゃないもん。
あんなんだと楽でいい。
オルムスさん一人倒れたら政治回んなくなりそうなドーラとえらい違い。
「国民一人当たりどんだけ税金取れば帝国みたいにできるの?」
オルムスさんとプリンスが言う。
「少なく見積もって年間二万だな」
「うむ。作況の具合や戦時か否かにもよるが、年二万~三万ゴールドの間だろう」
「マジで? 働けない老人とかケガ人まで含めて? ムリに決まってるじゃん」
皆が苦笑するけど、笑いごとじゃないわ。
よくそんなに庶民からおゼゼ毟って暴動にならないな?
不思議でかなわん。
いや、二万ゴールドが大金っていうドーラ人の感覚だからかもしれないけど。
「といっても、実際にそれだけの金が動くわけじゃない。国民の大多数を占める農民は作物で物納だしな」
「帝国は人頭税って言ってたけど、お前ん家は何人だからこれだけトウモロコシ納めろーってくるんだ?」
「うむ」
「ひえー」
ヒエじゃなくてトウモロコシだけれどもアワアワしちゃう。
帝国は戸籍も税金取りたてのシステムもしっかりしてるんだろうなあ。
ドーラがそこまでできるようになるのは何年かかるだろう?
いや、必ずしも帝国の真似なんかしなくていいのか。
行政府の活動資金さえ増えりゃいいんだから。
パラキアスさんが言う。
「ガレリウス皇子の死去、ヤマタノオロチの出現と凶事が続いたろう? 今は内政に力を注ぐべきというムードを帝国内に作りたい。大使にもそうした内容の上申書を提出してもらう」
「ふむふむ。でも難しくない?」
平和を望んでいるにも拘らず、何故帝国政府は無用な海外遠征を行うのだ、という世論に持っていきたいらしい。
パラキアスさんが工作するんだろうが、第一皇子の喪が明けてすぐ出撃なら、最短で一〇日くらいだ。
そしてドーラと帝国の距離は遠い。
効果発揮する前に艦隊出航しちゃいそう。
「この前の帝都の新聞記者、連れてこられないか?」
「あ、新聞使う作戦か。わかった。捕まえたら早めに連れてくるよ」
「頼むぞ」
新聞から一般大衆を巻き込みたいのか。
識字率があんまり高くないから、どれほど効果あるかはわからん。
でもソロモコ遠征前にプリンスルキウスの意見として記事になったら、結構反響はあるかもな。
「ところで今月の移民はいつ来るのかな?」
「明後日レイノス港に到着だよ」
「明後日ね、ありがとう」
「ユーラシア君は港まで来るのかい?」
「多分行かないけど、移民受け入れ先のカラーズには伝えとかないといけないから」
アドルフが言う。
「新聞で報道されたから、伝わってるとは思うぞ」
「あっ、アドルフやるな!」
「ロドルフだ」
スポークスマンアドルフが新聞に伝えといてくれたようだ。
新聞もこういうふうに機能してくれるとありがたい。
「じゃ、今日は帰るね」
「何か落としたぞ?」
「おっとっと。それ脱落しちゃった『アトラスの冒険者』の名簿なんだ。有能な人いたらチェックしとこうかと思って」
名簿をしげしげと眺めていたパラキアスさんが言う。
「ユーラシアは視点が斬新だな。この丸がつけてある四名は?」
「優先順位が高そうだから早めに会っときたい人。ドーラの発展のために使えそうな固有能力持ちだと思わない? 知ってる人いたら教えてよ。特にレイノスの人は探すの大変そうでさ」
チェックした四人の内、レイノス人が三人いる。
レイノスは人口が多いから、聞き回っても辿り着くの遅くなりそうなんだよなー。
「『外交官』のケン・マツダーラ。レイノス住みになってるが、塔の村にいると思う」
「あっ、あのピンクのモジャ髪?」
「知っていたか」
「うん。フルネームは知らなかったけど、パラキアスさんの手下だって言ってたから」
複雑な表情のパラキアスさん。
推定レベル五以上なのに『アトラスの冒険者』辞めちゃった、謎の経歴の持ち主はあいつだったのか。
「じゃねー」
「バイバイぬ!」
転移の玉を起動して帰宅する。




