第1195話:四人の固有能力持ち
「でも謎経験値君は大体すぐ逃げちゃうけどね。魔境まで行けるような冒険者だったら、遭遇即ガードしてりゃ運悪く自爆されても死ぬことはないと思う。注意してもらうよう、魔境ガイドのオニオンさんには言ってあるんだ」
「アンタは自爆するおかしな人形系魔物を大喜びで狩ってるんだろう?」
「だってあたしは人形系レアハンターだから。人形系を狩れないなんて、そんな人生つまんない」
「呆れたもんだねい。逃げてしまう魔物をどうやって倒してるんだい?」
「逃がさないためのパワーカードを特注してもらったの。ヴィル」
「はいだぬ!」
ヴィルが所持している『デスマッチ』のカードを見せる。
「戦闘が終了するまで誰も逃げられない? 場に干渉する効果かい? 何とまあ……」
「危ないでしょう、この効果は」
「うん、危ない。あたしもヴィルに持たせておいて、謎経験値君とウィッカーマン倒す時にしか装備させてない」
「つくづく面白いねい」
最近、面白いって言われると嬉しいな。
エンターテイナーとして合格だと理解してる。
ポロックさんが言う。
「『閃き』や『ゴールデンラッキー』の固有能力は、効果を実感できるものなのかい?」
「どうだろ? 運のパラメーターの効果は確かに高くて、あたしが状態異常食らったのなんかバアルに呪われた時くらいだな」
「『ゴールデンラッキー』の効果かどうかはわからないということだねい?」
「うん。『閃き』もな? 昔からカンはいい方だから、『閃き』の効果なのかレベルが上がったからなのかよくわかんない」
この二つはマジでよくわからん。
地味に役立ってるんだろ、きっと。
「でも『閃き』固有能力持ちのカンだぞーって言うと誰もが聞いてくれるから、ハッタリには重宝してる」
苦笑する二人。
「アンタの固有能力の素因は輝いて見えるんだよ。発現しやすい状態にあるんだと思う。『ゴールデンラッキー』のメリットかもしれないねい」
「そーなんだ?」
「運については解明されていないことが多いって聞きますよ」
じゃ、まだ固有能力増えるかもしれないのか。
特に欲しい能力があるわけじゃないけど、まだ自分が進化できるんだって考えると楽しみだな。
自分じゃ意識できないところで『ゴールデンラッキー』が働いてるっぽいのも嬉しい。
「アンタはこれ以上固有能力が欲しいわけじゃないんだろう?」
「うん、積極的に欲しいわけじゃないよ。でも増えたら増えたで、また何か新しいことができるかもしれないじゃん?」
「アンタくらいのレベルがあれば、どんな固有能力でも使いものになるだろうねい」
どんな固有能力でもありがたいのか。
マジで固有能力増えないかな?
あたしのことはともかくとして、脱落『アトラスの冒険者』の固有能力検証の続き行こうよ。
脱線し過ぎたわ。
「この人の『警戒』っていうのは?」
「魔物が近くにいる、とかの危険を察知できるというものだよ」
「冒険者なら悪くないな。こっちの『スワンプ』ってのは?」
「毒無効だね」
「とりあえず優先順位低し、と」
いろんな固有能力があるんだなあ。
「目移りしちゃうぬよ?」
「よしよし、ヴィルいい子……『マップ』が使えるのはわかってる。けど『マップ』って詳しくは知らないな」
かなり広い範囲で地形や集落の位置がわかるとは聞いた。
「能力の強さにもよるが、レベル五くらいになると地形が俯瞰で見えるようになると言うね。レベルが高くなるにつれ広い範囲が、そして土地が何に使用されているかわかる」
「あっ? じゃあ『マップ』ってレベルが低いと用を為さないんだ?」
レベル上げするなら最重要だ。
「『和魂』は?」
「『和魂』という、魔法を使えるようになる固有能力だよ」
固有能力とスキルの名が同じなのか。
ややこしい。
魔法『和魂』の効果は、残りマジックポイント全てを用いてパーティー全員の基本状態異常と戦闘不能状態を解除、ヒットポイント全快だそうな。
一発で劣勢を逆転できるすげー魔法ではあるな。
「習得するのにレベル三〇は必要だねい」
「うーん、却下」
大規模な事故の時にいいかもしれないけど、『リカバー』や『リフレッシュ』、あるいは『オールキュア』の方がよほど使い勝手がいい。
『リカバー』と『オールキュア』はスキルスクロール売ってるし。
「『死者狩り』、通常攻撃にアンデッド特攻か。いらない。『イージーマギ』、魔法防御と最大マジックポイントにブースト。これもいらない。『瞑想術』、心を鎮めることによって力を得る。スキル習得ありか。悪くないな……」
この際会ってみたいのは、戦闘抜きでも便利って固有能力の人だ。
脱落しちゃった人達は必ずしも戦闘が有利になる能力だけじゃないだろうと考えていたが、そーでもなかったな。
単に最初期のレベル上げに失敗して諦めちゃった人が多いみたい。
ちょっと期待外れだったが、有益と思われる能力持ちも数人いた。
『日和』天気がわかる。
『外交官』亜人等異種族にある程度の親和性がある。
『福助』自分含めた周りの運を上げる。
「『マップ』持ちを含めたこの四人に会っておきたいかな」
「優先順位が高いということだねい?」
「うん」
「ふうむ、ドーラ発展のためにユーラシアさんの欲しがる人材というのが、ようやく理解できたよ」
「レベルを上げれば優秀な、冒険者の素質がある者を復活させるわけじゃないんだねい」
「『マップ』、『日和』、『外交官』、『福助』ですか。いずれも冒険者として有利な特性じゃないけれども、確かに社会を変えられる可能性のある固有能力だ」
ポロックさんも大いに納得してくれたようだ。
実際はやる気とか性格の方が大事だと思うよ?
でも名簿じゃ細かいとこまでわからんし、明らかに良さげな能力持ち選んだだけ。
「四人ともレベル上げが有効なのかな?」
「もちろんだねい」
「特に『マップ』と『日和』は、ある程度レベルが上がらないと効果がないはずだよ」
「わかった、ありがとう!」
「ありがとうぬ!」
この四人は何とか探し出して会ってみよう。
冒険者として働く必要のない、レベルさえ上げれば役に立ってくれそうな固有能力だ。
さーて、そろそろお昼だな。
「ばっちゃん、食堂で御飯食べてこ。あたしうちの子達呼んでくるから、ヴィルはばっちゃんと食堂行っててね」




