第1194話:固有能力談義から脱線
フイィィーンシュパパパッ。
再びギルドにやって来た。
「やあ、こんにちは。チャーミングなユーラシアさん」
「ポロックさん、こんにちはー」
「こんにちはぬ!」
「邪魔するよ」
ちょっと驚くポロックさん。
「マルーさんではないですか。どうしたんです?」
「ばっちゃんにも意見聞きたくてさ」
「先ほどの脱落した『アトラスの冒険者』の件かい?」
「うん」
「脱落した『アトラスの冒険者』?」
二人に少し詳しく説明する。
ポロックさんはギルドの総合受付だし、マルーさんはドーラ一の鑑定士だ。
影響力の大きいこの二人が賛同してくれると、便宜を図ってくれるかもしれないしな。
「先日、二年くらい前に落伍した『アトラスの冒険者』に白魔法使いがいることを知ってさ。埋もれさせとくとどう考えても損じゃん?」
「『白魔法』は有用な固有能力だからね。冒険者として引っ張りだこだ」
「冒険者じゃなくても、村に一人高レベル白魔法使いがいたら大助かりだよ。大ケガしようが毒に当たろうが、大体大丈夫なんだから。その落伍者の住んでる村の族長さんに何とかできないかって相談されてさ。『アトラスの冒険者』のルーキーとパーティーを組ませたの。そろそろギルドまで来ると思う」
マルーさんがしたり顔で頷く。
「ははあ。冒険者に拘らず、再利用しようってことかい?」
「『アトラスの冒険者』に選ばれるのって、性格的にもいい人だって言うからさ。ドーラの発展に役立ちそうな人だったら知っときたいじゃん? 必要ならあたしがレベル上げしてもいいし」
「素晴らしい考え方だね」
「で、今と前任の係員の勤めてた期間の、ギルドまで来られなかった『アトラスの冒険者』の名簿がこれ。チュートリアルルームでもらってきた。固有能力でわかんないやつが多いんだ。教えて欲しいの」
ドーラを発展させたいから協力しろという意図は伝わったろう。
関心ありげに名簿を覗き込む二人。
「……属性魔法持ちはレベルが上がれば確実に役に立つねい」
「うーん、だけど名簿に載ってる属性魔法持ちの人、全員レイノス住みなんだよね」
冒険者としては役に立つ。
西域居住なら対魔物の戦闘に有用だが、レイノスだと微妙だ。
大体成人しててかつ一度冒険者を諦めた人だもんな。
現在もう仕事持ってるだろうし、あんまりあたしに協力してくれそうな気がしない。
『白魔法』持ちだったら最優先で説得するけどね。
「こちらの人は? 自由開拓民集落住みで『発気術』持ちだ。『ハヤブサ斬り』を覚えればかなり使えるだろう?」
「攻撃力のパラメーターが低いでしょ? どーかなー?」
「ふん。かなり考えてるんだねい」
「時間があれば全員と会いたいよ? でも優先順位ってものがあるから」
頷く二人。
「『雷の申し子』とか『火の申し子』の人がいるじゃん。これはどういう固有能力なの?」
「申し子系は特定の属性の物理攻撃、魔法攻撃の威力が増すんだ。またその属性攻撃を食らった時に耐性があるのさ」
「へー。冒険者向きだねえ」
「レアってほどじゃないが、属性魔法持ちよりかなり少ないねい。アタシの子供の頃に、『風魔法』と『風の申し子』を両方発現していて、勇者と呼ばれていた人がいたよ。魔法力も高くて、今後こんなに恵まれたステータスの者は見ないかと思っていたけど……」
あたしを見るマルーさん。
多分あたしが可愛いから。
「長生きはするもんだねい」
「するもんだぬ!」
笑い。
ヴィルの合いの手は間がいいね。
よしよししてやる。
「そーいやあたし以外の『ゴールデンラッキー』『閃き』の固有能力持ってる人、会ったことないな。これもレアなの?」
「『精霊使い』『ゴールデンラッキー』『閃き』はレア中のレア、『限突一五〇』もレアだねい」
「へー」
「『限突一五〇』もレアですか?」
マルーさんがふんと鼻を鳴らす。
「限突系が珍しいわけではないんだよ。一一〇、一二〇くらいだといるが、一五〇というのは初めて見るねい。そして……」
もう一度あたしを見るマルーさん。
多分二度見するほどあたしが可愛いから。
「ここまで限突系を存分に使ってる子も、今後現れないだろうよ」
「ハハッ、でしょうねえ。ユーラシアさんは、今レベルいくつなんです?」
「あ、わかんない。一二五は越えてるはず」
「見てみましょうか」
ギルドカードだとレベル一〇〇以上がカンストって出ちゃうんだよな。
もう多分今まで出遭った魔物なら『雑魚は往ね』で一掃できるから、全然レベル気にしてなかったわ。
ポロックさんが受付のフルステータスパネルを起動させる。
ぺたっと。
「……一二八かい。呆れたもんだねい」
「人形系レア魔物と積極的に戦うことでレベルを上げるのかい?」
「いや、最近は積極的にレベル上げしてるわけじゃないんだけど」
魔境に行くと人形系を狩るのがルーティーンではある。
おゼゼが出て行くもんだから、魔宝玉のストックは持っておきたいし。
少し前は魔王に会った時舐められないように、ヴィルのレベルを上げておくって目的があったから、意識的にウィッカーマンを狩っていた。
「ここんとこ魔境に変な人形系レア魔物が出るんだよね。クレイジーパペットくらいの大きさで銀色でぴょんぴょん跳ねるの」
「「ほう?」」
「一体倒しただけで黄珠、墨珠、藍珠、杳珠の四つを落とし、運がいいと透輝珠までドロップするんだ。効率がいいからよく狩るんだよ。そいつがウィッカーマン並みの経験値を持ってるから、レベル上がっちゃうの。あたしは謎経験値君って呼んでる」
「なるほど。ユーラシアさんの推奨魔物ですか?」
「いや、謎経験値君は一〇回に九回は先制で逃げちゃうから、ほとんど戦闘にならない。おまけにメチャクチャ危ないの。一〇回に一回くらいの確率で自爆する。油断してると、レベル五〇あっても一発でやられるくらいの威力だよ。しかも衝波属性の爆発みたいなんだ。同時に出現したクレイジーパペットもボロボロになっちゃったから」
「レベル五〇あっても一発でやられるほどの威力で衝波属性……。大変な脅威ですね」
「耐性考えようが防御力上げようがムダかい?」
「ムダムダ。自爆が来るなら、察知してガードするしかない」
マルーさんポロックさん、それはうちのダンテのふーってポーズに似てますが?




