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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1192話:かなりえぐいである

「サイナスさん、こんばんはー」

『ああ、こんばんは』


 塔の村から帰ってきて、毎晩恒例のヴィル通信だ。

 帝国の状況を報告っと。


「昨日の話の続きね?」

『ユーラシアが褒美でもらうはずの男爵を誰に譲るか、という話だな?』

「公爵の子ヘルムート君で決まり。明日発表だって」

『君の思い通りじゃないか』

「ではあるんだけど、楽観できる状況じゃないんだ。ヘルムート君の父ちゃんの公爵がかなり強かな人なんだよね」

『どういうことだい?』

「商人っぽいってゆーか勝ち馬にしか乗らないとゆーか」

『娘がルキウス皇子の婚約者になるというのに、味方になってくれないということか?』

「まあそう。もっと言うと、バアルが第二皇子とつるんでたことまで知ってたのに」


 フリードリヒさんは味方になってくれないとは言っていない。

 ルキウス様に協力しようとは明言してくれたのだが、あんまり熱を感じなかったのだ。

 どの程度の協力を期待できるかわからない。


『利がないと動かない人か』

「利と理、両方が必要と見たね」

「公爵フリードリヒは人物であるぞ。吾が高位魔族と知っても、厭うことも怖がることもなかったである」

「食えない人だなーとは思ったけど、大悪魔がそこまで評価するほどなのか。要注意だな」

「しかし吾が主には及ばぬであるぞ?」

「ますます信頼できる評価だな」


 おいこら笑うな。

 メッチャ冷静な判断だわ。


『しかし、有利に運ばないってことなのか?』

「プリンスルキウスを次期皇帝にしたいってことに関して? いや、元々うまくいくこと自体がメッチャ困難だもん。プリンスがドーラに来た頃の目論見からすると、今の状況は余裕で合格点以上」


 あたしが『皇宮』のクエストをもらって、自由に帝都に行けるようになったことが大きい。

 おっぱいさんのファインプレイ。

 皇妃様呪殺未遂事件や貴公子こてんぱんイベント、ヤマタノオロチ退治などのイベントを通して知り合いが増え、またあたしの存在感が増してきたからだ。

 急速にあたしのできることも多くなってきた。


『公爵は簡単に敵にならないこともわかっているから?』

「それもあるけど、主席執政官第二皇子の性格がね」

『主席執政官の性格?』


 サイナスさんも意表を突かれたみたいだな。

 第二皇子は潔癖気味なんじゃないだろうか? と説明する。

 敵と味方を峻別するきらいがあるような。


「……ふむ。ドミティウスは確かにそうした傾向があるである」

「バアルも思う?」

『恩を売ったはずの公爵が娘をルキウス皇子に嫁がせることを知ると、主席執政官は裏切られたようで許せない?』

「許せないまでは思わないだろうけど、面白くないんじゃないかな? 多分含むところがある。で、公爵は第二皇子の気持ちの変化に気付かないほど鈍感じゃないから」

『君のように節操なく敵を味方にしようとしないから』

「おいこら」

『結局味方だな?』

「接戦に持ち込めればね。でなきゃフリードリヒさんは、自分から動こうとしないんじゃないかな。相当タヌキだから」

「接戦にまで持ち込むのが難しいである」

「むーん?」


 何だかんだで第二皇子は現在大過なく大帝国を切り盛りしてる実力者だしな。


「バアルが第二皇子は『魔魅』の固有能力持ちって教えてくれたんだ」

『『魔魅』? どんなやつだ?』

「高位魔族を引き寄せるである」


 うん、そこまでは聞いた。


「実際に『魔魅』の人って、悪魔からどう見えるの?」

「いい匂いがするである」

「そーなの?」


 匂いなのか。

 結構意外で衝撃的だわ。

 予想できない事実だな。


「とりあえず話を聞いてやろうという気になるである」

「ふーん。それが『高位魔族の関係はイーブン』ってことなんだ?」

「うむ」

「『魔魅』の人が高レベルだったらどうなるかな?」


 首をかしげるバアル。


「……『魔魅』はかなりのレア固有能力であるからして、高レベルの『魔魅』持ちには会ったことがないである。しかし高位魔族に対する発言力が増すのではないか?」


 『魔魅』とは『精霊使い』や『威厳』のような支配系の能力だが、強い支配力を発揮するというものではないらしい。

 高位魔族って例外なく高レベルだもんな。

 無差別に言うこと聞かせられるんじゃえらいことだわ。

 しかし例えばあたしみたいな高レベル者が『魔魅』持ちだったりすると、かなり悪魔に対して影響力を行使できる?


『『魔魅』の能力持ちの周りには、複数の悪魔がいるものなのかい?』

「いや、悪魔同士は仲良くないから。例えば第二皇子の側にバアルがいた時は、他の悪魔は寄ってこないんでしょ?」

「もちろんである」


 やっぱり。

 少なくともレベルの高くない『魔魅』持ちは、無差別に悪魔を寄せるような力は持たない。


『ということは、第二皇子は今はどうなってるんだ?』

「帝都メルエルには何人もの悪魔がいるである。おそらくはその内の誰かが既にドミティウス付きになっていると思われるである」

「なるほど?」


 ツーマンセルだと影響受けやすいよなあ。

 となるとどんな悪魔と組んでるかが、考え方や行動に関わってくるのか。


「さすがにバアルも今第二皇子の側にどの悪魔がいるかはわかんないよねえ?」

「わからないである」

『ヴィルで調べさせることはできるだろう?』

「うーん、でもヴィルがうちの子であることは結構知られてるじゃん? あたしが第二皇子を嗅ぎ回ってるのを知られちゃよろしくないでしょ」

『ユーラシアは細かいこと気にしないのかと思ったが』

「時と場合は選ぶわ。帝国最大の実力者の機嫌を損ねていいわけないだろ」


 どーすべ?


「……でもどんな子が第二皇子んとこにいるかは情報として欲しいな。聖火教ルートか、あるいは宮廷魔道士長さんに聞けば教えてもらえそう」

『情報ソースがえぐい』

「言うほどえぐくないでしょ」

「高位魔族を『うちの子』と言いつつ、悪魔を嫌う聖火教から情報を得ようとするのは、かなりえぐいである」

「あれっ? 納得できる理屈だな。気付かなかったよ」

「吾が主はえぐい人である」


 悪魔に真顔でえぐいえぐい言われるのはどうなんだ?


「じゃ、サイナスさん、おやすみなさい」

『ああ、おやすみ』

「ヴィル、ありがとう。通常任務に戻ってね」

『わかったぬ!』


 明日はギルド。

 ダンとニルエのラブイベントだよ。

 楽しみだなあ。

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