第1191話:塔の村の皆も頑張ってるなあ
「美少女精霊使いユーラシア参上!」
「参上ぬ!」
さっきもあったな、この登場シーン。
JYパークから帰宅後、魔境で遊んでから塔の村に夕御飯を食べにやって来た。
暇な時間に魔境というパターンが完全に定着している。
気分は晴れるしおゼゼは儲かるし、後の御飯が格別においしいときたもんだ。
魔境は実にいいところ。
エルが声をかけてくる。
「ユーラシアのパーティーじゃないか。こんばんは」
「今日は随分と大勢だねえ」
「最近は賑やかで楽しいんだ」
エル、レイカ、リリーのパーティーの他に、アレク達とフィフィ達もいる。
塔の村の食堂はギルドよりずっと大きいのがいいなあ。
レイカが言う。
「ユーラシアが塔の村に来るのは、大体用のある時だろう? 今日はどうしたんだ?」
「胃の中のスペースを埋めることが焦眉の重要な課題だな」
笑うな、大事なことだわ。
大皿で注文を追加し、会話に加わる。
とゆーか塔の村にいては知ることのできない話題を提供してやるのだ。
宣伝大事。
「……ってなわけで、レイノスでは新しいスイーツが食べられるようになったの」
「なるほど、寒天か」
「全然扱いの難しくない材料なんだ。海の王国から寒天を買えばこっちでも作れるから、食堂の大将に研究してもらいなよ」
寒天・砂糖・柑橘を入手できるなら作れるお手軽スイーツなのだ。
あれだけ安く簡単に作れるんだと、差別化するために各店がどんどん進化させるだろうな。
甘味は心の活力、すげー楽しみだ。
フィフィが聞いてくる。
「話を変えてごめんなさい。新男爵の件、決まったかしら?」
「そうだった。アーベントロート公爵家次男ヘルムート君で内定。明日正式に決定だって」
「明日ですか。非常に早いですね?」
「春の植えつけの時期がもうすぐじゃん? 領運営に関わる重要なことだから配慮してくれたってことみたいだよ」
主席執政官はあたし達が行くのを待ち構えてたけどな。
一刻も早く有力貴族と関係強化したかったか、それとも移民の扱いでミソをつけた事務処理の迅速アピールか。
「フィフィと執事さんに聞きたかったんだ。父ちゃん元男爵の旧臣で使えそうな人のリスト作れない? ヘルムート君も急な話で、公爵家から連れていくのはごく少数になるみたいでさ。残りはガータンで採用すると思うから」
「早急に作っておきましょう」
「執事さんがやってくれるなら安心だわ」
「私はっ!」
「フィフィはムリヤリ突っ込んでくるなあ。欲しがり過ぎだろ」
アハハと笑い合う。
ドーラ色に染まり過ぎじゃない?
大体フィフィはほとんど帝都にいたんじゃないの?
ガータンの人なんて知ってる?
「リリーは調子どうなん?」
「問題ないと言いたいところだが、一〇日以上サボっているとカンは鈍るの。もう二、三日はリハビリだ」
「わかる。あたしもサボってると身体が闘争を求めるんだよね」
「この前手が震えるって言ってたな」
「戦闘民族なのかしらん?」
あたしはバトルマニアじゃないはずなのにな?
あれか、働き者だからか。
働いた日の魚フライは美味い。
「皆、塔の探索は順調なんでしょ?」
フィフィが嬉しそうに言う
「私は毎日が楽しいわ。装備の充実は確実なパーティー強化になりますから、パワーカード七枚枠を埋めることを目標にしていますの」
「いいねえ。あんた達が街道で追いかけ回されたでっかいウシの魔物いるじゃん? マッドオーロックス。もうあれ一頭だったら、あんたのパーティーは勝てるよ」
「そうなの?」
「うん。執事さんなら一人でもマッドオーロックス一頭と互角くらい」
最初あたしがレベルを少し上げてやったこともあるが、フィフィのパーティーは実に進歩が早い。
真面目に塔に潜っていることに加えて、パーティーバランスがいいからだろう。
パーティーバランスがいいということは、フィフィが後衛として機能していることに他ならない。
順調順調。
「……あのウシ、おいしかったわ」
「フィフィは実に冒険者向きだなあ。でも冒険におゼゼ突っ込み過ぎて生活を疎かにすんなよ?」
ケスとアレクも話しかけてくる。
「もうすぐハヤテが魔法戦士として働けるようになると思う。二〇階以上にチャレンジできそうだぜ」
「ボクとしては慎重にいきたいけど」
「あんた達も本職が何なのかわかんなくなってきたなあ」
「姐さんの本職は何なんだ?」
「アイドルに決まってるだろ」
「「「「「「「「えっ?」」」」」」」」
「スーパーアイドルに決まってるだろ」
何故疑問なのかが疑問。
「で、エルとレイカは?」
「地下に苦戦してるな。勝手が違う」
「そーかー。具体的には何に苦戦してるの?」
「「オーガだな」」
「わかる」
やはり魔境オーガ帯程度の魔物が出るようだ。
オーガはクリティカル頻発持ちだし、ほとんどドロップしないし、ひっじょーにつまらん魔物なのだ。
「ユーラシアはどうしていたんだ?」
「オーガと戦う頃には、一ターンで倒せるくらいのスキルを持ってはいたんだ。だから戦って苦戦はしなかったんだけど、消費マジックポイントがすごく大きくなっちゃうんだよね」
頷くエルとレイカのパーティー。
魔境トレーニングエリアと違って回復魔法陣がないはず。
マジックポイントが切れると、基本的にまた明日チャレンジだろうからな。
探索が遅々として進まない。
「オーガは厄介だから逃げちゃってもいいと思うよ」
「逃げるのは冒険者として抵抗がないか?」
「あたしはないなあ。人形系レア魔物に背を向けるやつは、冒険者としての資格がないと思うけど」
すげえ首を縦にコクコクしてるフィフィ。
あんたは人形系レア好きだなあ。
「『逃げ足サンダル』に逃走用スキルの『煙玉』が付属してるじゃん? 割に合わない魔物と戦うようになって『煙玉』使うようになったよ。割のいい魔物もいるんでしょ?」
「ブロークンドールが比較的出る」
「フィフィ、ブロークンドールは墨珠と藍珠をドロップするよ。売値は合計で八〇〇ゴールドくらい」
「素敵ですわね! 狙って倒したいわ!」
「目がキラッキラしてるやん。エルとレイカはフィフィの貪欲で強欲で激欲な姿勢を見習えよ」
「そこまで欲にまみれていませんわ!」
「まみれてるぬ!」
大笑い。
ついにヴィルが単独でツッコむようになった。
進化が著しいなあ。
楽しい夜が更けてゆく。




