第1190話:JYパークでの用事
「美少女精霊使いユーラシア参上!」
「参上ぬ!」
「やあ、いらっしゃい」
カラーズ緩衝地帯改めJYパークにやって来た。
サイナスさんが午後まで店番してるけど、今日はあんまり売れ行きがよくないのかな?
ちなみにヴィル以外のうちの子達は灰の民の村にいる。
「お土産のお肉、サイナスさん家に置いてあるからね」
「ああ、ありがとう。今日はどうしたんだい?」
「札取りゲームと画集のストックが心許なくなってきたから、仕入れに来たの」
「何だ、売り上げに貢献してくれるのか」
「二〇個ちょうだい」
「毎度あり」
札取りゲームはよし、と。
あとは画集だな。
「アレク達は塔の村?」
「ついさっき行ったところだよ」
「あ、午前中はいたのか。早く来ればよかったなー」
「サンプルのスクロール用紙は預かってるよ」
「やるなアレク」
「ユーラシアがそろそろ痺れを切らすだろうからって言ってたぞ?」
スキルスクロールの異世界への外注がいつまで可能かはわからん。
早めにドーラ内製に切り替えたいからな。
でも品質は大事だ。
急がせちゃいけないくらいのことはわかる。
「あたしの考えって読みやすいのかしらん? ヴィルやバアルも、あたしの考えてることを見抜いたような言動があるんだよね」
「冗談を言いそうな時がわかるんだぬ」
「そーだったかー」
ぎゅっとしてやる。
ヴィルはいい子。
「スクロール用紙の試作品はどんな感じかな。見せてくれる?」
ふむふむ、高級そうに見えるいい紙じゃん。
「デスさんの意見を基に合格点の出た試作品だ。紙だけで一枚二〇ゴールド、スクロール仕立てなら五〇ゴールド。印刷も問題なく可能だとのこと」
「安くできるじゃん。ペペさんの意見も聞いてくるよ」
デス爺の見立てで合格点が出てるなら、クオリティのバラツキさえなければ問題ないとゆーことだ。
金属版は高価だろうけど印刷自体にそう費用がかかると思えん。
例として水魔法『アクアクリエイト』ならば、スクロール一本当たりペペさんの儲け一〇〇ゴールド、注文受けてるギルドの儲けを五〇ゴールドみたとしても、かなりの利益になるな。
いや、スキルを封じるのにもコストがかかるんだったか?
「サイナスさん、じゃーねー」
緑の民のショップへ。
「おっ? 精霊使い様じゃねーか」
「精霊使い様のお出ましだよ」
「お出ましだぬよ?」
アハハと笑い合う。
「魔法の紙を作ってるんだって? あんたも絡んでるんだろう?」
「まあ。スキルスクロールっていう、封を切って開くとスキルを覚えられるアイテムがあるんだ。飲み水を出す魔法ってのが帝国に大ウケでさ。その生産を緑の民に任せたいの」
「儲け話を持ってきてくれるなあ」
「技術があるからだぞ?」
可能にする技術があるから頼むのだ。
それ以上でもそれ以下でもない。
「ショップの売れ行きはどう?」
「画集かい? 一時期の爆発的な売れ行きではなくなったな」
「カラーズとレイノスではかなり普及したかな。帝国ではまだまだなんだ。話題にはなってるんだけど、ものが足りなくて新聞記者も実物を持ってなかったくらい。どんどん輸出する予定だよ」
「景気のいい話だぜ」
うむ。
しかし続く企画がそろそろ欲しいところだ。
画集の売り上げにはとても及ばないにしても、フィフィの珍道中紀行に期待するところは大きい。
画集は一発ネタだけど、フィフィは一作目が売れれば次もその次もあるからだ。
「今日はどうしたんだい?」
「販促用に持ってる画集の手持ちが少なくなってきたからさ。買っていこうかと思って」
「ん? あんたは工房で頼めば安く買えるんだろ?」
「まあ。でもわざわざ村の中まで行くの面倒だからいいや」
「ハハッ、毎度!」
よし、一応用は終わり。
青のショップにも寄っていくか。
「こんにちはー」
「こんにちはぬ!」
「精霊使いさん、いらっしゃい」
「ディオ君いる?」
「天幕の奥におりますよ。どうぞ」
中に案内される。
「ユーラシアさん、お待ちしてました」
「むっ? ディオ君に女難の相が見えるよ。年上の女に悩まされているね?」
「やめてくださいよ」
「やめないぬ!」
アハハ、暴走お姉ちゃんセレシアさんは年上の女。
「ヴィルちゃんも一緒なんですね?」
「うん。差別の激しいレイノスではまだちょっとなーって気はしてるけど、それ以外ではなるべく皆に可愛がってもらおうと思うんだ」
もうJYパークでは全然大丈夫な感じ。
帝都でも帽子被せて肩車してれば平気だしな。
「あっちこっちにヴィルで連絡取れるのは嬉しいんだけど、レイノスの服屋はムリなんだよね。あそこに悪魔は目立ち過ぎるし。ディオ君の困ったお姉ちゃんに連絡取る時は出向かなきゃいけない」
「わざわざすいません。それで?」
「サイナスさんに聞いたかな? セレシアさんのファッションを輸出できるかもってことなんだ。帝都で一番の店『ケーニッヒバウム』に伝手ができた」
「伺いました。御紹介ありがとうございます」
「正直まだ帝都進出は早いと思う。もっとドーラで実績作ってからと思ってたけど、絶好のチャンスが来たからには乗っていかないと商人とは言えないじゃん?」
頷くディオ君。
「まだセレシアさんには連絡してないんだ。ディオ君に伝える前にセレシアさんが暴走すると面白くなっちゃいそうだから」
苦笑するディオ君。
ここからが相談だ。
「どうしたらいいかな? 店が休みの日にセレシアさん以下のスタッフを、宣伝がてらニューファッションの服着せて帝都に連れていこうと思うんだけど」
「自分も同行させていただけないでしょうか?」
「やっぱディオ君もそう考えるか」
生産担当のディオ君がいれば、セレシアさんの脳が少々沸騰しても抑えられるだろ。
あたしじゃ青の民の服飾工房の事情はわかんないしな。
『ケーニッヒバウム』ほど集客力のある店で、宣伝が足りていれば売れないわけはない。
現在見えている問題は、生産量をどうするかと輸送費をどれだけ見るかだけだ。
「セレシアさんの店っていつが休みなんだろ?」
「毎月二五日以降で、輸送隊の商品受け渡しのない日のどこかですね。今月いつかはわかりませんが」
「数日後になるか。明後日レイノス行くから確認してこ。日程決まったら連絡しに来るね」
「よろしくお願いします」
「じゃあヴィル。帰ろうか」
「はいだぬ!」




