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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1188話:信任投票

「サクラさん、こんにちはー」

「こんにちはぬ!」

「皆さん、こんにちは」


 不要アイテムを買い取り屋さんで処分したあと、依頼受付所へやって来た。

 何故かダンまでついて来たわ。

 面白いことでもあるんじゃないかって顔だな。

 おっぱいさんもいることだし、もう少し情報を放出しとくか。


「貯金していきまーす」


 ナップザックからおゼゼを取り出す。


「はい、五〇万ゴールドで間違いありませんか?」

「間違いないでーす。ギルドカード出しときまーす」


 ダンが不思議そうだ。


「結構な大金じゃねえか。あんたいつも金がねえ金がねえって言ってるが、貯金してるから手持ちがないってことなのか?」

「いや、口座にはほとんど入ってないよ。今日のは鳳凰双眸珠売ったんだ」

「超高級魔宝玉だろ? 相場壊れるから売らないって言ってなかったか?」

「言ってたね」


 売り込みに行ったわけじゃなかったなかったんだけど。


「成り行きだったんだ。帝都で一番デカい店の店主と知り合いになってさ。先方はあたしが魔宝玉ハンターだってことも調べさせて知ってるわけよ」

「ははあ、有力者との人脈が欲しいってことだな?」


 欲しいねえ。

 一人でできることなんか限界があるのだ。

 有力者との繋がりがあるほどやれることが多くなる。


「帝国では鳳凰双眸珠が国宝なんだよ。見たことないから見たいって話になって、さらに売ってくれないかってことになったの。最終的に四〇〇万ゴールドで買ってくれた」

「「四〇〇万ゴールド?」」

「うーん、魔宝玉ってドーラの重要な輸出品じゃん? 行政府や貿易商も儲けさせてやりたいからって一度は断ったんだよ。そしたら行政府と貿易商に一〇〇万ゴールドずつ、あたしに二〇〇万ゴールドって提案されてさ。だったらまーいいかって」

「あんた今預けたの五〇万ゴールドじゃねえか。残り一五〇万ゴールドは使う予定でもあるのか?」

「マルーのばっちゃんが売れない超高級魔宝玉を一杯抱えてるじゃん? 一五〇万ゴールド分引き取ろうかと思ってる」

「親切なんだか買い叩くんだかわからねえ!」

「買い叩くんだぬ!」


 アハハと笑い合う。

 あたしとしては親切のつもりなんだけどな?


「サクラさんにもらった『雪の精霊』ってクエスト、一応終わったんだよ」

「いかがでしたか?」

「何か思ってたのと全然違う結論になって面白かった」

「あんたが面白いって言うくらいか。どんなやつだ?」


 面白話は聞きたくなるよなあ。

 話したくもなる。


「初めから行きまーす。かなり力のある精霊が罠に引っかかってたんだよ。放っとくと雪降り続いて大凶作になっちゃう、精霊自身も悪霊化しちゃうみたいな状態だった」

「そこまでは『雪の精霊』という名前の通りだな。普通に精霊助けて終わりじゃなかったんだろ? 最終的には?」

「人口がドーラの一〇倍くらいあるゼムリヤってとこの領主、カル帝国一の大貴族と仲良くなったの。軽く上級冒険者くらいのレベルのある、結構な人だよ」


 ダンは固まっているが、おっぱいさんはニコニコしている。

 ある程度どんなクエストか把握していたらしい。

 こういう有力者と知り合えるクエストを振ってくれると、あたしもどんどんやりやすくなるなあ。

 またよろしくね。


「……ユーラシアの取り掛かってるクエストは、内容を考えるだけムダだな。結論だけ聞かせろ。その大貴族様はドーラにとって有利な状況を呼び込むピースになると、あんたは見てるのか?」


 ダンにしては言葉を選ぶじゃないか。

 内緒話モード発動。


「ゼムリヤの領主メルヒオール・リリエンクローン辺境侯爵は、現在の帝国の皇妃様の父ちゃんなんだ。孫にリリー皇女やこの前連れてきたウルピウス皇子がいて、二人の上にフロリアヌス皇子ってのがいる。フロリアヌス皇子が現在の皇位継承権二位で、次期皇帝争いの有力候補と見做されてる」

「ルキウス大使のライバルじゃねえか」

「まあそうなんだけど」


 ここからはあたしの思ったことだが。


「ただどうもメルヒオールさん自身は、フロリアヌス皇子を次期皇帝と見ていないんだよね。後押しする気もないみたい」


 むしろ辺境侯爵の跡継ぎに考えていたふしがある。

 おそらく現皇帝の寿命の尽きるのが早い。

 年若で経験の少ないフロリアヌス皇子が次代の皇帝では、帝国が不安定になると見ているんじゃないか?


「それはあんたのカンだな?」

「うん。メルヒオールさんは次期皇帝争いに関して積極的に動きゃしないな。味方にするのは難しくても、敵に回ることはなさそう」


 ゼムリヤが浮つくと北の王国に対して隙を作ることになるからじゃないかな。

 おっぱいさんが言う。


「帝国の次期皇帝争いはどんな具合ですか?」

「実質信任投票なんじゃないかと思う」

「「信任投票?」」

「現在ナンバーワンの実力者ドミティウス第二皇子を皇帝にするかしないかの」


 説明する。


「皇位継承権一位はセウェルス第三皇子なんだ。ただ自堕落で人気も貴族の支持もないからね。血統上から有力候補に挙げられるんだろうけど、それだけの人」


 頷くダンとおっぱいさん。


「皇位継承権二位はさっきのフロリアヌス皇子。現皇妃系でバックがしっかりしてるのは強みだね。ちゃんとした人らしいんだけど、やっぱ若いから実績が評価されてるわけじゃないんだ。皇位継承権と実力、どちらを重視するんでも二番手以下だから、難しいかな」

「じゃあ第二皇子対ルキウス大使の構図にはならねえのか?」

「可能性はあるけど、今のままじゃムリだなー。第二皇子にも実際に会った。なかなかやるやつなんだよね。話してて主導権取られそうになったくらい」

「ユーラシアさんがですか? ドミティウス皇子が次期皇帝ではやはりまずいのですか?」


 第二皇子が皇帝で、何とかコントロールしながら都合のいい世の中にする案か。


「プリンスを皇帝にできなきゃそーなるね。とゆーか現状のままなら普通に第二皇子が皇帝だから、何とか折り合っていくしかないよ。ただバアルによると、第二皇子は『魔魅』って固有能力持ちなんだ。高位魔族を引き寄せ、対等に付き合えるらしいの」

「……つまりバアルがいなくなっても他の悪魔に影響される?」

「と思う。基本的に悪魔は悪感情を得るため揉め事を起こしたがるから、皇帝には向いてない」


 内緒話モードを解除する。

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