第1185話:あたしの存在価値を高めておく
「こんにちはー。ドーラの美少女精霊使いユーラシアがやって来ましたよ。アーベントロート公爵家のヘルムート君と新聞記者さん達を伴っていますと、主席執政官か封爵大臣に伝えてもらえる?」
「はい。話は伺っております。こちらへどうぞ」
執政官室に案内される。
話が早いなー。
待ち構えてたみたいじゃん。
一つ男爵の席が埋まるってのは大したことみたいだ。
もちろん税収どうこうだけじゃなくて、ヒロインたるあたしが推薦した人っていうアナウンス効果に期待しているんだろう。
なら普通に新聞記者トリオを伴っていることにも許可が出ると思ったけど、当たってたな。
「こんにちはー」
茶髪ロングの主席執政官と封爵大臣両方いるやん。
「やあ、おはよう。どうだった?」
「主席執政官閣下はせっかちだなー。ちょっとは落ち着きなよ」
アハハと笑い合う。
ヘルムート君は驚いた顔してるけど。
「ガータンの新男爵はヘルムート君が引き受けてくれるって。フリードリヒ公爵も了承済み」
「そうか、ベストだな。ヘルムート君、よろしく頼む」
「はっ、身に余る処遇でございます。命に代えましても、またアーベントロートの家名を辱めぬためにも懸命に務めさせていただきます」
「うむ、細かいところはデニス封爵大臣と打ち合わせてくれ」
「ヘルムート君が男爵位を受けたってことは新聞発表しちゃっていいのかな? 正式に叙爵してからの方がいい?」
「発表しちゃって構わないよ」
「やたっ! ムダ足にならなくてよかったねえ」
「「「ありがとうございます!」」」
よし、これでプリンスルキウスとパウリーネさんの婚約発表はいつでもいい。
ナチュラルに行けば、第一皇子の喪明けって話だったな。
主席執政官の第二皇子は、公爵と新男爵がプリンス側になることに唖然とするといいよ。
叙爵の打ち合わせは時間かかりそうだな。
ならば、と。
「昨日も今日もいきなり会えたけど、主席執政官って暇なの?」
「各政府機関がしっかりしてるからね。突発時以外はそう忙しいことはない。ヤマタノオロチで夜も眠れないことになるかと思ったら、ユーラシア君が速やかに対処してくれたから、大変感謝しているよ」
「ふーん。ドーラは統治機関が弱いのかなあ?」
あえて知らんぷりして話題のきっかけを投げてみた。
今のドーラやプリンスルキウスについて知りたいんじゃないか?
食いついてくるか?
「現在のドーラの統治はどうなってるんだい?」
「どうもこうも、基本的に独立前のままだよ。実力者一〇人の合議制ってことになってるけど、実際に政治に関わってるのは知事のオルムスさん、補佐で参謀のパラキアスさん、船団長のオリオンさんの三人だけじゃないかな」
「ユーラシア君は実力者一〇人の中に含まれてないのかい?」
「え? いや、あたしは一般人の冒険者だから」
意外そうでもない。
この辺は調べがついてるってことだな?
船団長オリオン・カーツがあたしの父ちゃんだってことは伏せておく。
「そんな大雑把な体制で、よくあの広大なドーラが治まってるね?」
「実際に行政府が治めてるのは首都の港町レイノスだけだよ。これは帝国の植民地だった頃と一緒なんだ。でもドーラは人口が少なくて魔物が多いから、一人じゃ生きてゆけないんだよね。自然と集団で助け合う方向に行くの」
「ふむ」
「各村々の自治性は高いけど、レイノスと揉めることはできないんだ。何故ならレイノスにはドーラの人口の半分が集まってるし、唯一の港があるから。経済的に発展させようと思うと、レイノスと関わりができちゃうのは必然なんだよね。国としては今んとこレイノスを押さえてりゃオーケー」
「なるほど」
「でも今後は移民をどんどん受け入れてる平野の発言権が、人口増加とともに大きくなりそう。となると今のままの統治体制ってわけにいかないから、政治家が何とかするんじゃないの?」
結構熱心に聞いてますね。
独立後のドーラについての細かい報告はないからか。
以前バアルは、主席執政官のドーラに対する思いは『愛憎ないまぜ』と言っていた。
外からは窺い知れない拘りがあるのかもしれない。
「大使ルキウスの働きぶりはどうだい?」
来た。
おそらく主席執政官の真に聞きたい話題だ。
「頑張ってるよ。ドーラの行政府、元総督府だった建物だけど、大使室と知事室が隣だからドーラの首脳とはツーカーなんだ。結構融通が利くの。実際に行政府からプリンスにつけてる人員は一人だけだけど」
「そうなのか?」
「うん。ドーラはド田舎だから、大使の仕事って移民と貿易関係しかないんだよね。移民の来る間隔は月一でしょ? で、貿易のこと一生懸命やってくれてる。移民として来たクリーク少将とマックス中佐を捕まえて秘書官みたいなことさせてるから、忙しそうでもないよ」
「ユーラシア君は一般人なのに、どうして政治の事情にまで詳しいんだ?」
予想された質問だね。
情報を知り得る立場にあるということを強調して、あたしの存在価値を高めておくべし。
「『アトラスの冒険者』のクエストは、レベルが上がるとややこしいやつ配られるみたいなんだよね。そーすると自然に有力者と知り合う機会が増えちゃうの。『カル帝国皇宮』ってクエストもらったと思ったら、一ヵ月半で主席執政官と会えちゃうみたいに」
「君はドーラ行政府にも出入りしてるんだろう?」
「行政府は可愛いあたしが行くと歓迎してくれるんだよ。昼頃に行くと御飯食べさせてもらえるから、『レストランドーラ行政府』って呼んでる」
新聞記者トリオはネタ増えたからか嬉しそうだけど、主席執政官は変な顔してる。
皆本当だぞ?
あ、打ち合わせ終わったみたいだね。
「主席執政官と封爵大臣にこれあげる。ドーラ土産だよ。『ウォームプレート』っていうの。持ってると自分の魔力で暖かくなる、カイロみたいなもんだよ」
「あっ、ありがたい! 欲しかったんですよ」
封爵大臣は知ってたようだ。
喜んでもらえてよかった。
「職人の数が少なくてあんまり作れないんだけど、寒い帝国の方が需要がありそうだから、どんどん輸出するね」
「君は輸出品にまで関わっているのかい?」
「最近ドーラからの輸出品に加わったものには大体」
ハハッ、ここまでは調べが追いついてなかったか。
施政館を後にする。




