第1180話:『今日の行政府』みたいな
「ウルトラチャーミングビューティーユーラシアがやって来ましたよ」
「はい、伺っております。大使室へどうぞ」
「あ、その前に大使付きのアドルフ呼んでくれる?」
「ロドルフさんですか?」
「そーだ、本名はロドルフだった」
新聞記者ズが混乱しとるわ。
でもアドルフだろーがロドルフだろーが、世界の行く末に何の影響も及ぼさないから、どうでもいいのだ。
しばらく待ってるとアドルフが来た。
「こんにちはー」
「どうしたんだ? 俺を呼び出すなんて」
「こちら『ドーラ日報』と『レイノスタイムズ』の新聞記者さんだよ」
「これはどうも。ロドルフと申します」
「毎日決まった時間に記者会見やってさ、行政府の方から国民に知らせたいこととかニュースとか? 教えてあげて欲しいんだよね。必要なことじゃん?」
「……統治上都合がいいかもしれないな。しかしどうして俺が?」
「知事のオルムスさんにも大使のプリンスにも自然に会えるあんたが一番適任でしょ。ふつーに考えて」
「そ、そうか?」
ハハッ、嬉しそうだな。
ただアドルフが適任なのは確かなのだ。
市民に行政府の施政と在ドーラ大使の働きを知っててもらうのはプラスだから。
「『今日の行政府』みたいな固定欄作っとくと興味持つ読者もいると思うから、毎日ちょっとでいいからネタ出してあげてよ」
「わかった」
「「ありがとうございます!」」
毎日午後三時に行政府受付でか。
……しめしめ、そのくらいの時間なら新聞記者ズに邪魔されずにレイノス歩けるということだな?
一応覚えとこ。
「記者さん達、じゃーねー」
「「さようなら!」」
新聞記者達が去るとアドルフが話しかけてくる。
「今日はどうしたんだ? 新聞関係の用だけじゃないんだろう?」
「報告したいことと確認したいことと相談したいことがあるんだよね」
「ルキウス様にか?」
「プリンスとパラキアスさんに」
「わかった、では急ごう」
大使室へ。
◇
「こんにちはー」
「やあ、いらっしゃい」
プリンスがにこやかに挨拶してくれる。
「リリーの縁談クラッシュイベントは無事終了、今日塔の村に戻ってきたんだけど、おかしなことになったんだ」
「おかしなこと?」
「三日目が本来は剣術対決だったの。でもヤマタノオロチが出ちゃった。それ退治してたんだ」
「ヤマタノオロチ……」
「ツムシュテーク伯爵家の子は負けを認めたから、縁談クラッシュについては問題なし。これぞ無手勝流」
パラキアスさんがおかしいような呆れたような顔してる。
「魔物退治の功績で、あたしを男爵にしてくれるって」
「「「「「「えっ?」」」」」」
イシュトバーンさんが聞いてくる。
「あんた男爵の叙爵を受けたのか?」
「男爵なんて受けるわけないじゃん。美少女爵か聖女爵だったら考えるけど」
ウケなかった。
このジョークは二度と使わない。
パラキアスさんが言う。
「ドミティウス主席執政官に会ったのか?」
「今日施政館で初めて会ったよ」
「男爵位を提示されたことに関して、ユーラシアはどう思った?」
「どうもこうも。あたしとゆー美しい花を近くに飾っときたいって意味しかないでしょ」
皆が頷く。
政治上あるいは次期皇帝レースの点数稼ぎの一つの手段に過ぎないのだ。
貴族になれるぞーってエサに飛びつかせ、うまく経営できなくて泣きつくまでが第二皇子の計算に入ってたかもしれない。
そーはいくか。
「主席執政官個人についてはどうだ?」
「なかなかやるね。こっちが断りづらい条件を次々出してくるんだよ。あたしが飛空艇落としたことも知ってた。主導権握られそうで大変だったなー」
「どうやって断ったんだ?」
「代替案を出したんだ。フィフィかヘルムート君を、あたしの推薦だって言って新男爵にするといいよって」
プリンスが呻く。
「……なるほど。フィフィリア嬢かヘルムート殿を男爵にすることができるなら、ドミティウス兄上はエーレンベルク筆頭伯爵家かアーベントロート公爵家に食い込めると考えるから」
「ユーラシアを男爵にするより有利だと思い込む?」
「フィフィに打診したら断ったから、ヘルムート君一択だけどね」
「となると兄上はアーベントロート公爵家に恩を着せ、公爵を新男爵ともども味方にしたつもりが?」
「プリンスとパウリーネさんの婚約で大逆転っていう寸法だよ」
「うまいこと考えやがったな!」
「パーフェクトだ!」
ハッハッハッ、褒められると実に気分がいいなあ。
「で、確認したいんだけど、公爵本人はどんな人?」
「元騎士だが、温和で優しい方だよ。しかし商売ではやり手だと聞く」
「プリンスとパウリーネさんの婚約発表はいつになるのかな?」
「ガレリウス兄上がお亡くなりになって、一ヶ月の喪が明けてからになる。早くても来月の頭以降だ」
「タイミング的に婚約発表よりもヘルムート君の男爵叙爵が先になんないといけないんだけど、どうすりゃいいかな?」
パラキアスさんが言う。
「新男爵についてはどういう決めになっているんだ? フィフィリア嬢のところへはユーラシアが訪れたんだろう?」
「内々であたしが当たってみる、数日中に連絡すると、主席執政官の第二皇子殿下には言ってあるんだ」
「では帝都の公爵邸を早めに訪れ、話を通せばいいんじゃないか?」
「うーん、新聞記者連れてっちゃまずいよね?」
「えっ? ひょっとして施政館へは新聞記者を連れてったのか?」
「うん。まさか記者さん達いるところで飛空艇どうのこうの言い出すと思わなかったわ」
飛空艇関係は今でも機密っぽいのにな。
いや、だって主席執政官の思惑がよくわからんかったんだもん。
最悪に備えて、露骨にあたしを取り込もうとするのをさりげなく牽制するつもりだったんだよ。
にも拘らず露骨に来たけど。
やっぱ帝国最大の実力者ともなると強引なのかなあ?
もっともあたしはそーゆー駆け引きが嫌いじゃない。
スリルがあって楽しかったです。
「まだ打診の段階だ。公爵邸に記者を伴うのは失礼だろう。オーケーが出たらヘルムート氏と記者とともに施政館へ押しかけりゃいい」
「だよね。了解。プリンス、パウリーネさんへの手紙ある? 届けとくよ」
「あるよ。先方によろしく」
あ、もう用意してるんじゃん。
「じゃ、帰る。またね」
転移の玉を起動、一旦イシュトバーンさんを連れてホームへ。




