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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1179話:泣き芸?

 フイィィーンシュパパパッ。


「こんにちはー」

「ようこそ、精霊使い殿」


 イシュトバーンさん家にやってきたら、すぐさまイシュトバーンさんが『遊歩』で飛んできた。

 また頭ぶつけんなよ?


「もうすっかり本調子みたいだね」

「面白い話か。面白い話だな?」

「絶好調じゃん。かなり面白い話があるよ」


 アハハと笑い合う。


「行政府行くんだ。イシュトバーンさんも行く?」

「もちろんだ」


 行政府へ出発。


          ◇


「おい、何キョロキョロしてるんだ?」

「新聞記者さん達来ないかなーと思って。何度も同じ話するの面倒なんだ」

「新聞屋にも話せるネタか」


 しめしめ、来たぞー。


「ユーラシアさん、イシュトバーンさん!」

「密会ですか逢引きですかスキャンダルですか?」

「「うええええーん!」」

「どーしたのよ?」


 いきなり泣き出す新聞記者ズ。

 何事?


「さては新しい芸風だな? 泣き芸は使いどころ難しいから注意ね。今のは意表を突いててかなり面白かったけど」

「「泣き芸じゃないですよ!」」

「じゃあ何なん?」

「最近の新聞記事がつまんねえからだと思うぜ」

「御指摘の通りなのです」

「購読者さん達からお叱りを受けていまして……」

「あたし全然関係ないじゃん」

「ユーラシアさんが一〇日以上顔を見せてくれなかったせいです」

「さりげなくあたしのせいにすんな。ちなみに普段の新聞ってどんな記事載せてるの?」

「こういうものです」

「どらどら?」


 どこそこ地区会長のインタビュー港のゴミがどうの誰ぞが魔法の葉青汁の刑を受けたのどこそこの猫が行方不明になったの?


「何だこれ? こんなんおゼゼ払って読む人がいるんだ?」

「「いますよ!」」

「読むなり眠くなったわ。安眠目的で売れるのかな?」

「「うわあああーん!」」


 泣き芸はもういいとゆーのに。

 何度も使うな、鬱陶しい。

 大体こんなもんを売りつけておゼゼをいただこうなんて、神をも恐れぬ所業だわ。

 自己批判しろ。


「固定記事がその日の総括と訃報欄と御協力願います欄だけか」


 御協力願います欄ってのは、市民からお金をもらって探し物とか依頼とかを載せる欄らしい。

 これはいいけど、もう少し踏み込むべきだな。


「強力なニュースなんてそうそうないんだから、固定のコンテンツで引っ張りなよ」

「「例えば?」」

「毎日イシュトバーンさんにいい女の絵を描いてもらって新聞に載せれば、売れるに決まってる」


 新聞記者ズが獲物を狙う目でイシュトバーンさんを見てるけど、実現はかなり難しいぞ?

 イシュトバーンさんはモデルのいい女にさえ会えれば薄謝でも描くだろう。

 でもいい女の確保にいくらかかるかわからんもん。


「現実的なところではそーだな。セールとかオープンとかの情報をタダで載せるぞって、お店や食堂に言っときなよ。知っててお得な新情報は購読者にとってもありがたいし、お店も宣伝になって嬉しいでしょ。ウィンウィンだぞ?」

「「そうですねっ!」」

「娯楽の欄があってもいいね。連載の読み物とかなぞなぞとかパズルとか? 作るの得意そうな人確保しとくといい」

「「なるほどっ!」」


 セール情報がタダなら、御協力願います欄よりもよっぽど有用な情報で紙面を埋められるわ。

 読み物・なぞなぞ・パズルってのは本にもなるな。

 新聞で慣らしておけば売れる土壌を作ることも可能だ。


「政治の記事がメッチャお粗末だよなー。積極的に関係者から話聞きだしたいところだけど、行政府も人足んないし……あっ、ちょうどいいのがいる! 紹介するからついといでよ」

「「ありがとうございます!」」


 イシュトバーンさんが言う。


「それで面白い話は?」

「ダイレクトだなー。これなーんだ?」


 ナップザックから長い棒のようなものを取り出す。


「これは?」

「ほお? 『ユニコーンの角』じゃねえか。かなりレアなアイテムだぜ」

「『ユニコーンの角』を持ってきてくれって依頼があってさ。魔境から見てずーっと北西の方向にユニコーンの住んでる草原があるんだよ」


 イシュトバーンさんが首をかしげる。


「ユニコーンか。清らかな美少女には心を許し、角をくれることもあると聞くな。本当かウソかは知らねえが」

「本当なんだよ。だからあたしが行くと群がってきて次々角くれちゃう。ほらほら」


 いくつかを取り出して見せる。


「どれだけ手に入れたんだよ?」

「一一本。あげちゃったのもあるから、手元にあるのは八本だよ。でも今生息地行ったって角のないユニコーンしかいないじゃん? また生えてくるの時間かかるから、もし欲しい人がいたらあたしかギルドに連絡してって、新聞に書いといてくれる?」

「わかりました。でも不思議なことがあるんですねえ」


 あるんだよ。

 まったくあたしがユニコーンに面白認定されてるとは摩訶不思議。


「塔の村で冒険者してた皇女リリーが、ガレリウス第一皇子のお葬式でプリンスルキウスと一緒に帝国に帰ってた。でも山ほど押し寄せる縁談に身動きが取れなくて、ドーラに戻ってこられなかったんだ。今日昼過ぎに連れて帰ってきたよ。当分結婚しないっぽい」

「そうですか。お似合いのお相手もいたでしょうに、もったいないですねえ」

「青っ白く弱っちく見えるって言ってたぞ? リリーは案外ワイルドな男が好みなのかも」


 ハハッ、話盛ったった。

 イシュトバーンさんが縁談クラッシュイベントの話しねえのかって顔してるけど、めんどくさいじゃん。

 紙面が埋まるだけネタがあればいいよ。


「帝国本土の帝都メルエルから強歩二日くらいのところ、ヴォルヴァヘイム近郊で、ヤマタノオロチっていう首八本あるデカいヒドラが一昨日現れたんだ。いや、現れたのはもう一日前だったかな? とにかくあたしのとこに話が来たのが一昨日で、その日の内に退治してきたよ」

「首が八本もある魔物ですか? 恐ろしげですねえ」

「神話級の魔物とゆー話だったよ。総合力から言ったらヤマタノオロチはイビルドラゴンより強いけど、ヒドラは弱点がハッキリしてるから、倒し方知ってりゃどうってことないんだ。でも帝都の新聞記者さんが、昨日は過去最高の発行部数だってすごく喜んでくれたからよかった」

「私達もそういう喜ばせ方してくださいよ」

「まあまあ。記事にはなるでしょ?」


 笑いながら行政府にとうちゃーく。

 受付のお姉さんに話しかける。

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