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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1178話:山賊って何だ?

「お帰りー。新しいパワーカードの具合はどう?」


 食堂に戻ってきたフィフィパーティー三人に声をかける。

 『サイドワインダー』と『スナイプ』を執事が新たに装備するようだったから。


「マテウス、いかが?」

「ええ、問題ありません。明日から効率よく魔物を倒せると思います」

「うんうん、いいね」


 『スナイプ』なんか結構慣れがいると思うんだけどなあ。

 大したもんだ。


「ところで何の用だったかしら?」

「あんた達全員に関わることなんだ。お母さんと侍女二人も呼んできてくれる?」


          ◇


 フィフィら六人が揃ったところで話す。


「フィフィ、男爵やってみない?」

「「「「「「えっ?」」」」」」


 全然状況がわかっていない六人。


「ババドーン元男爵の旧領ガータンで男爵やらないかってことなんだけど」


 執事が言う。


「ユーラシア様。それは旦那様の謹慎後、お嬢様への世襲が認められたということでしょうか?」

「いや、違うんだ。一昨日ヴォルヴァヘイムってとこの近くでヤマタノオロチが出ちゃって」

「ヤマタノオロチ?」


 話が飛ぶけどすまんね。

 驚く執事に問うフィフィ。


「何なの? マテウス、知識を披露してもよくってよ」

「多頭ヒドラの中でも最上級とされる魔物です。災害級を超えた神話級と目されているもので、おそらく確実な出現記録はなかったはずです」

「執事さんはよく知ってるなあ。あたしがヤマタノオロチを退治したら、褒美に男爵位をくれるって話になったんだよ」

「大変な功績ですから、反対する者などいないでしょうけれども」

「でもあたしはいきなり男爵やれとか言われても困るじゃん? フィフィはドーラ来て変わったぞ、推薦するからどう? って話したら、ドミティウス主席執政官と何やらいう封爵大臣が認めてくれそうなんだ」


 あたしに振ってくるくらいだから、どうやら領主貴族は女性でもいいらしい。

 お母さんと侍女二人、下男は喜ぶが……。


「フィフィって有名人なんだね。主席執政官も封爵大臣もフィフィのこと知ってたぞ?」

「……多分いい意味で御存じというわけではなかったと思いますの」


 うん、自分のことよくわかってる。

 おそらくはやらかし元男爵の娘、高慢な令嬢、プリンスルキウスの元婚約者という知識だと思う。


「フィフィが変わったってことに関しては、二人とも半信半疑だったな。でも旧臣を呼び戻しやすいだろうという点は評価してたよ」

「私のことを考えてくださったことには感謝いたしますわ」

「ということはやめとく?」

「ええ。私自身の実力か実績で見返さなければ、笑い者なのは変えられないのです」


 お母さん達残念がってるけど、フィフィの考え方は正しい。


「ガータンは昔から難治の地と聞いたよ。上手に治められると名領主として尊敬されると思うけど」

「それこそ成功のビジョンがありませんわ。顔の広いお父様でも税率を上げないのが精一杯だったのです」


 執事もまた頷く。

 伝手があっても経営は難しいということか。


「フィフィは偉いな。現実がわかってる。目の前にエサぶら下げても食いつこうとしないのがつまらん」

「これも貴方の酔狂なのっ?」

「フィフィが男爵やるならそれでいいと思ってたのは本当。でももう冒険者で成り上がって、作家として名士になる未来が見えてるもんな」

「ごめんなさいね。せっかく骨折って下さったのに」


 すまながるフィフィ。


「いや、いいんだ。ちょっと賢ければこんな話には乗らないだろうとは思ってたから」

「ではユーラシア様がお受けになるのですか?」

「主席執政官にはフィフィかヘルムート君を推薦するって言ってあるの」

「ヘルムート……アーベントロート公爵家の御次男の? リリー様のお相手候補ではなかったですか?」

「そうそう。お相手候補の貴公子達をあたしが倒してリリーの縁談を白紙に戻すっていう愉快なイベントがあってさ。その時に知り合ってなかなかやる男だってわかったから、この話振ってみるつもりなんだ」

「私は貴公子達を倒すイベントの方に興味があるのですけれども」

「リリーに喋らせなよ。プリンセス目線の話が聞けるぞ……リリーの話はあたしも聞きたいな」


 それはともかく。


「地図見たらガータンってアーベントロート公爵領のすぐ隣じゃん。援助なり交易なりで問題なく治まるでしょ」

「公爵様の身内ならば、公爵領の大都市パッフェルとの交易を軸にすることが可能かと思います」


 あれ? やらかし男爵は公爵領と交易させてもらえなかったのかな?

 日頃の行いのせい?


「具体的にガータンって何が難しいの? 地図見ると帝国のほぼド真ん中じゃん。交易の中継地として賑わってよさそうなもんなのにな?」


 工夫しようはありそうだが。


「山賊が多く出没します。人口の多い地域を除き、帝国本土の山の中はあまり商人が利用したがらないのです」

「アーベントロート公爵家に嫌われていたのですわ」

「開墾しようにも硬い石が多く含まれていて、農具が痛むため耕作地がなかなか広げられないという現実が……」

「マジか」


 農業商業に期待できなくてお隣の大領に嫌われてるとかかなりキツいな。

 大体山賊って何だ。

 そんなもん放置して交易が成り立つわけない。


「フィフィの父ちゃんは何か工夫してた?」

「ウルシ産業はお父様の功績だと思いますわ」

「ウルシ?」


 畑にならないから石は放置してウルシを植樹し、樹液を利用して木製品加工に使うということらしい。


「へー、やるなあ。メッチャ賢い」

「でも山賊対策に護衛を多く雇うと儲けにならないとぼやいてらしたわ」

「賢いあたしは理解した。山賊が一番の問題だな? 執事さん、帝国では山賊が割のいいお仕事なの?」


 帝都では今まで山賊のことは聞いたことがない。

 地方の事情だと思うが。

 苦笑する執事。


「帝国には市民権というものがございまして」


 ドーラでも独立前のレイノス中町住人が持ってたやつだな。

 市民権を持っていると税金は取られるけど、ある程度の生活の保障みたいなもんがあるらしい。

 しかし不法移民や犯罪者、あるいはその子孫などは市民権を持たないので信用がない。

 ロクな仕事に就けないため、スラム行きか山賊かくらいしか選択肢がないとのこと。


「なるほど。帝国では市民権大事だな。勉強になったよ。今日は帰るね」


 転移の玉を起動し帰宅する。

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